原子力発電と甲状腺癌

原子力発電と甲状腺癌

電力を見直したい

先生、原子力発電の事故でよく聞く『甲状腺がん』って、どんな病気なんですか?

電力の研究家

良い質問ですね。原子力発電所の事故で特に注目される病気の一つです。甲状腺がんは、のど仏の下あたりにある甲状腺という部分にできるがんです。この病気は、放射線によって引き起こされる可能性があると言われています。

電力を見直したい

放射線でどうして甲状腺がんになるんですか?

電力の研究家

原子力発電所の事故で放出される放射性物質の一つにヨウ素があります。ヨウ素は、私達の体にとって必要なものですが、放射性ヨウ素は甲状腺に集まりやすく、その放射線が周りの細胞を傷つけてしまうため、がんが発生しやすくなると考えられています。

甲状腺癌とは。

「原子力発電」と関わりが深い病気の一つに「甲状腺がん」があります。このがんは、顕微鏡で細胞を見ると「乳頭がん」「濾胞がん」「未分化がん」「髄様がん」の4つの種類に分けられます。 放射性物質を使った検査で画像に影が出たり、首にしこりを感じたり、レントゲン検査で石灰が溜まっているように見えたりすると、この病気が疑われます。 放射線を当てて治療する方法では、「未分化がん」には体の外から、「濾胞がん」には「ヨウ素131」という薬を飲んで体内から、それぞれ放射線を当てる治療が行われます。 がんが周囲のリンパ節に転移することもあれば、血液の流れに乗って肺や骨にまで広がってしまうこともあり、その場合は「ヨウ素131」を飲んで治療します。

甲状腺癌の種類

甲状腺癌の種類

甲状腺は、のど仏の下にある蝶のような形をした臓器で、体の代謝を調整するホルモンを分泌しています。甲状腺癌は、この甲状腺に発生する癌のことで、顕微鏡で細胞の形を観察することで、大きく4つの種類に分類されます。

最も患者数の多い乳頭腺癌は、比較的進行が穏やかで、周囲の組織への浸潤も少なく、リンパ節への転移は見られるものの、他の臓器への転移は稀です。
濾胞腺癌は、乳頭腺癌と比べると進行が早く、血管への浸潤を介して、骨や肺といった遠 distant 臓器に転移することがあります。
髄様癌は、甲状腺ホルモンを作る細胞とは異なる細胞から発生する癌で、遺伝が関与している場合があります。また、他の内臓の腫瘍を合併することがあります。
未分化癌は、発生頻度は低いものの、非常に進行が早く、周囲の組織への浸潤や遠隔転移が認められる場合が多く、治療が困難な癌です。

甲状腺癌の種類 特徴
乳頭腺癌
  • 患者数が多い
  • 進行が比較的穏やか
  • 周囲組織への浸潤が少ない
  • リンパ節への転移はあるが、他の臓器への転移は稀
濾胞腺癌
  • 乳頭腺癌より進行が早い
  • 血管への浸潤を介して、骨や肺に転移することがある
髄様癌
  • 甲状腺ホルモンを作る細胞とは異なる細胞から発生する
  • 遺伝が関与している場合がある
  • 他の内臓の腫瘍を合併することがある
未分化癌
  • 発生頻度は低い
  • 進行が非常に早く、周囲組織への浸潤や遠隔転移が多い
  • 治療が困難

甲状腺癌の診断

甲状腺癌の診断

– 甲状腺癌の診断甲状腺癌と診断するためには、いくつかの検査を組み合わせて総合的に判断します。まず初めに、放射性物質シンチグラムと呼ばれる検査が行われます。これは、放射能を持つヨウ素を患者さんに飲んでいただき、甲状腺に集まる様子を特殊なカメラで撮影する検査です。甲状腺は、体の様々な機能を調節するホルモンを作るためにヨウ素を必要とするため、この検査によって、甲状腺の腫瘍があるかどうか、またその腫瘍が正常な甲状腺組織と同じようにヨウ素を取り込んでいるかどうかを調べることができます。次に、医師による首の触診が行われます。これは、甲状腺のある首のあたりを医師が指で丁寧に触り、腫瘍の有無や大きさ、硬さ、そして周囲の組織との関係などを確認する検査です。触診によって、腫瘍の硬さや動き方から、その腫瘍が良性であるか悪性であるかがある程度推測できます。さらに、軟X線検査を行うこともあります。この検査では、甲状腺にカルシウムが沈着して硬くなった部分(石灰化)がないかを調べます。石灰化は、甲状腺の腫瘍が良性である場合にも見られますが、悪性の腫瘍である場合に多く見られるため、悪性腫瘍の可能性を評価する上で重要な情報となります。これらの検査結果と、患者さんの自覚症状や診察 findings を総合的に判断することで、甲状腺癌の診断を確定します。

検査名 概要 目的
放射性物質シンチグラム 放射性ヨウ素を服用し、甲状腺に集まる様子をカメラで撮影 腫瘍の有無、ヨウ素の取り込み具合を確認
首の触診 医師が首を触り、腫瘍の有無、大きさ、硬さなどを確認 腫瘍の良性・悪性の推測
軟X線検査 甲状腺の石灰化の有無を確認 悪性腫瘍の可能性評価

放射線治療の役割

放射線治療の役割

– 放射線治療の役割放射線治療は、甲状腺癌の治療において、手術と並ぶ重要な役割を担っています。 特に、細胞の分化が進んでおらず悪性度の高い未分化癌の場合、体の外から腫瘍に向けて放射線を照射する外部照射による治療が有効とされています。これは、高エネルギーの放射線を用いることで、癌細胞のDNAに損傷を与え、増殖能力を奪うことで、腫瘍を縮小させることを目的としています。一方、分化型甲状腺癌である濾胞腺癌には、放射性ヨウ素を用いた治療が行われます。ヨウ素は、甲状腺ホルモンの合成に不可欠な物質であり、甲状腺は体内のヨウ素を積極的に取り込む性質があるため、放射性ヨウ素を内服することで、甲状腺癌細胞に選択的に放射線を照射することができます。 放射性ヨウ素は、手術で取りきれなかった微小な癌細胞や、リンパ節など他の部位に転移した癌細胞にも効果が期待できるため、再発や転移の予防にも繋がります。このように、放射線治療は、癌の種類や進行度に応じて使い分けられるだけでなく、他の治療法と組み合わせて行うことで、より効果的な治療成績が期待できます。治療方針については、担当医とよく相談することが大切です。

治療法 対象となる癌の種類 作用機序 効果
外部照射 未分化癌 高エネルギー放射線による癌細胞のDNA損傷 腫瘍の縮小
放射性ヨウ素内服 濾胞腺癌 甲状腺に取り込まれたヨウ素による放射線照射 微小癌細胞、転移癌細胞への効果、再発・転移予防

転移とヨウ素治療

転移とヨウ素治療

甲状腺がんは、周囲の組織への浸潤や、リンパ節、血液を介して体の他の部位に転移することがあります。リンパ節への転移は比較的多く見られ、特に頸部のリンパ節に転移することが多いです。一般的に、局所リンパ節への転移は手術によって切除されます。一方、血行性転移では、肺や骨、脳など、体の様々な場所に癌細胞が到達することがあります。このような遠隔転移に対しては、手術が困難な場合が多く、薬物療法が選択されます。
甲状腺がんの治療において、ヨウ素131を用いた内服治療は、特に分化した甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん)の術後治療や遠隔転移に対して有効な治療法として知られています。ヨウ素131は、甲状腺ホルモンを作るために必要なヨウ素と同様に、甲状腺がん細胞に取り込まれます。そして、ヨウ素131から放出される放射線によって、転移した甲状腺がん細胞を効果的に破壊することができます。ヨウ素131内用療法は、副作用として一時的に甲状腺機能低下症を引き起こす可能性がありますが、多くの場合、甲状腺ホルモン剤の内服によって管理することができます。

転移の種類 特徴 治療法
局所リンパ節転移 頸部のリンパ節に転移しやすい 手術による切除
血行性転移 肺、骨、脳など体の様々な場所に転移する 薬物療法(手術が困難な場合が多い)