もう使われていない放射線量単位「ラド」
電力を見直したい
先生、「ラド」って単語が出てきたんですけど、これって何ですか?
電力の研究家
いい質問だね。「ラド」は昔、放射線が物質に当たった時に、どれだけエネルギーを吸収したかを表す単位だったんだ。昔はよく使われていたんだけど、今は「グレイ」っていう単位を使うようになったんだ。
電力を見直したい
ふうん。「グレイ」は知っていますけど、「ラド」は初めて聞きました。どうして使われなくなったんですか?
電力の研究家
世界中で単位を統一しようという動きがあってね。それで、放射線の吸収線量を表す単位も「グレイ」に統一されたんだよ。だから、「ラド」は古い教科書で見かけるかもしれないけど、今は「グレイ」を使うようにしようね。
ラドとは。
「ラド」は、放射線がどれだけ物体に吸収されたかを示す「吸収線量」という量を表す単位として、昔使われていました。「ラド」は“rad”と書き、CGS単位系と呼ばれる単位の仕組みに基づいていました。放射線が物質に当たると、物質はそのエネルギーを吸収します。この吸収されたエネルギーの量を、物質の重さを基準にして表したものが吸収線量です。単位の仕組みには、MKS単位系(SI単位)とCGS単位系があり、それぞれ異なる呼び方をする単位があります。「ラド」はCGS単位系で使われていた単位で、1グラムの物質が100エルグのエネルギーを吸収したときを1ラドと定義していました。つまり、1ラドは100エルグ/グラムと同じ量です。現在では、吸収線量の単位は世界共通で「グレイ」が使われています。「グレイ」はSI単位系に属する単位で、“Gy”と書きます。1グレイは1ジュール/キログラムで、100ラドと同じ量です。そのため、現在では「ラド」は使われていません。(詳しくは「グレイ」の項目をご覧ください。)
放射線の影響を数値化する「吸収線量」
放射線は、私たちの目には見えませんし、音や匂いもなく、触れることもできません。しかし、物質にぶつかると、その物質にエネルギーを与えます。 目に見えない放射線が物質に与える影響を測るために、「吸収線量」という概念が使われます。
物質が放射線を浴びると、そのエネルギーを吸収します。吸収線量は、物質1キログラムあたりに吸収されたエネルギーの量を表し、単位はグレイ(Gy)が使われます。
かつては「ラド」という単位が使われていましたが、現在ではグレイが国際的に標準とされています。1グレイは1キログラムの物質が1ジュールのエネルギーを吸収したことを示します。
吸収線量は、放射線が人体に与える影響を評価する上でも重要な指標となります。同じ線量を浴びたとしても、放射線の種類やエネルギー、体のどの部分にあたったかによって、生物学的な影響は異なります。その違いを考慮して、人体への影響を評価する際には、吸収線量に放射線の種類や組織への影響度合いを考慮した線量係数をかけた「等価線量」や、さらに複数臓器への影響を考慮した「実効線量」といった概念が用いられます。
概念 | 説明 | 単位 |
---|---|---|
吸収線量 | 物質1キログラムあたりに吸収された放射線のエネルギー量 | グレイ(Gy) |
ラド | 吸収線量の旧単位(現在ではグレイが標準) | ラド |
等価線量 | 放射線の種類や組織への影響度合いを考慮した線量 | シーベルト(Sv) |
実効線量 | 複数臓器への影響を考慮した線量 | シーベルト(Sv) |
ラド:旧CGS単位系における吸収線量の単位
ラドは、過去に広く使われていたCGS単位系と呼ばれる単位系において、物質が放射線から吸収するエネルギー量を表す単位として用いられていました。
具体的には、1グラムの物質が100エルグのエネルギーを吸収したとき、その吸収線量は1ラドと定義されていました。エルグはエネルギーの単位であり、1エルグは非常に小さなエネルギー量です。 日常生活で感じる熱エネルギーと比較すると、1エルグは極めて微量であるため、ラドは放射線による微小なエネルギー吸収を表すのに適した単位と言えるでしょう。
しかし、現在では国際的にSI単位系への統一が進められており、吸収線量の単位としてはラドの代わりにグレイ(Gy)が用いられています。1グレイは1キログラムの物質が1ジュールのエネルギーを吸収したときに相当し、1ラドは0.01グレイに換算されます。
単位 | 単位系 | 定義 | 備考 |
---|---|---|---|
ラド(rad) | CGS単位系 | 1グラムの物質が100エルグのエネルギーを吸収したとき | 過去に広く使われていた 微小なエネルギー吸収を表すのに適した単位 |
グレイ(Gy) | SI単位系 | 1キログラムの物質が1ジュールのエネルギーを吸収したとき | 現在国際的に使用されている 1ラド = 0.01グレイ |
グレイ:国際標準単位系における吸収線量の単位
– グレイ物質が吸収した放射線のエネルギー量を示す単位現在、世界共通で使われている単位系は国際標準単位系(SI単位系)です。このSI単位系において、放射線を浴びた物質が吸収したエネルギーの量を示す単位としてグレイが用いられています。放射線は目に見えませんが、物質に当たると、そのエネルギーを物質に与えます。このエネルギーの受け渡しを吸収といい、グレイは物質がどれだけの放射線のエネルギーを吸収したかを表す尺度となります。1グレイは、1キログラムの物質に1ジュールのエネルギーが吸収された場合と定義されています。ジュールはエネルギーの単位であり、例えば1キログラムの物体を1メートル持ち上げるのに必要なエネルギーがおよそ9.8ジュールです。グレイは、医療現場における放射線治療や、原子力発電所などにおける放射線管理など、様々な分野で用いられています。被曝による人体への影響を評価する際にも重要な指標となります。
単位 | 説明 | 定義 | 用途 |
---|---|---|---|
グレイ (Gy) |
放射線を浴びた物質が吸収したエネルギー量 | 1キログラムの物質に1ジュール(J)のエネルギーが吸収された場合 |
|
ラドとグレイの関係
放射線を扱う上で、その影響度合いを測ることは非常に重要です。放射線が物質に吸収されるエネルギー量を示す単位として、ラドとグレイという二つの単位が使われています。どちらも吸収線量を表す単位ですが、ラドは古い単位系で、グレイは国際単位系(SI)で使われています。
ラドとグレイの間には簡単な換算式が存在します。1グレイは100ラドに相当します。これは、100ラドの吸収線量を受けた場合、それは1グレイの吸収線量を受けたのと同等のエネルギーを吸収したことを意味します。
現在では、国際的な標準化に基づき、グレイの使用が推奨されています。しかし、ラドは歴史的に長く使用されてきたため、古い文献や資料ではラドが使われている場合があります。そのため、放射線に関する情報に触れる際には、単位がラドとグレイのどちらで表記されているかを意識することが重要です。そして、必要に応じて換算式を用いることで、異なる単位系間でも適切に情報を読み解くことができます。
単位 | 単位系 | 説明 | ラドとの関係 |
---|---|---|---|
ラド(rad) | 古い単位系 | 放射線が物質に吸収されるエネルギー量を示す | 1 グレイ = 100 ラド |
グレイ(Gy) | 国際単位系(SI) | 放射線が物質に吸収されるエネルギー量を示す | 100 ラド = 1 グレイ |
ラドの使用状況
– ラドの使用状況ラドは、かつて放射線が物質に与えるエネルギー量を表す単位として広く使われていました。しかし、現在では公式には使用されていません。これは、国際的な標準化の流れの中で、より分かりやすい単位系である国際単位系(SI)への移行が進んだためです。ラドに代わって、現在では吸収線量を表す単位としてグレイ(Gy)が用いられています。ラドとグレイの間には、1グレイ = 100ラドという関係があります。つまり、1ラドは0.01グレイに相当します。グレイはラドよりも大きな単位であるため、より小さな線量を表す場合に便利です。ラドは公式には使用されなくなりましたが、古い文献や資料、特に原子力発電所の過去の記録などでは、まだラドが使われている場合があります。そのため、これらの資料を参照する際には、単位がラドで表記されていることに注意が必要です。ラドで書かれた数値を現代の単位系で理解するためには、グレイへの変換が必要です。ラドの使用状況は、科学技術の進歩とともに変化してきた単位系の一例と言えるでしょう。今後も、より正確で分かりやすい単位系が使われていくと考えられます。
単位 | 説明 | 備考 |
---|---|---|
ラド(rad) | かつて放射線が物質に与えるエネルギー量を表す単位 | 現在、公式には使用されていない |
グレイ(Gy) | 吸収線量を表す単位 | 1グレイ = 100ラド |