意外と知らない?原子核の世界の「核異性体」
物質を構成する最小単位である原子は、中心に原子核を持ち、その周りを電子が飛び回っています。原子核はさらに小さな粒子である陽子と中性子から成り立っており、この陽子の数が元素の種類を決める要素となっています。例えば、水素原子の原子核は1つの陽子のみから成るのに対し、ヘリウム原子の原子核は2つの陽子と中性子を含んでいます。
興味深いことに、同じ種類の原子核であっても、異なるエネルギー状態をとることが可能です。これは、原子核内の陽子や中性子が特定のエネルギーレベルに位置することで、原子核全体としてのエネルギー状態が変化するためです。この異なるエネルギー状態をエネルギー準位と呼び、最もエネルギーの低い状態を基底状態、それ以外の状態を励起状態と呼びます。
私たちが普段目にする物質中の原子は、ほとんどの場合、最も安定した基底状態にあります。しかし、外部からエネルギーが加えられると、原子核は励起状態へと遷移することがあります。例えば、放射線や光を照射すると、原子核はエネルギーを吸収し、より高いエネルギー準位へと遷移します。その後、励起された原子核は余分なエネルギーを放出して基底状態へと戻りますが、このとき放出されるエネルギーは、光(ガンマ線)や熱として観測されます。