エネルギー

その他

無煙炭:石炭の最終形態とその利用法

石炭と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、黒くて硬い塊でしょう。しかし、無煙炭は、一般的な石炭のイメージとは少し異なるかもしれません。 石炭は、古代の植物の遺骸が地中に埋もれ、長い年月をかけて熱と圧力を受けることで、ゆっくりと変化していきます。この過程を石炭化と呼びますが、無煙炭は、この石炭化が最も進んだ状態、いわば最終形態に達した石炭なのです。 無煙炭は、炭素含有量が90%以上と極めて高く、他の石炭と比べて硬く、金属のような光沢を帯びているのが特徴です。そのため、見慣れた石炭とは異なる印象を受けるかもしれません。無煙炭は、石炭の中でも最も質が高く、燃焼時に煙や煤塵が少ないため、その名が示す通り「煙の出ない石炭」として知られています。 かつては、その燃焼効率の良さから、蒸気機関車の燃料や、製鉄などの工業用に広く利用されていました。今日では、環境への配慮から石炭の使用量は減っていますが、無煙炭は、その特性を生かして、活性炭や電極の原料など、様々な分野で利用されています。
その他

マイクログリッド:地域エネルギーシステムの革新

- マイクログリッドとはマイクログリッドとは、限られた地域の中で、電力を作って使うための小さなシステムのことです。従来の発電所のように遠くから電気を送ってくるのではなく、太陽光や風力といった自然エネルギーを活用して、その地域で必要な電気をその場で作り出すことを目指しています。マイクログリッドの特徴は、電気を貯めておくことができるという点です。太陽光や風力は天候に左右されやすく、安定した電力供給が難しいという課題がありました。しかし、蓄電池などを組み合わせることで、電気を必要な時に必要なだけ使うことができるようになります。マイクログリッドは、地域内の電力の安定供給だけでなく、災害時における電力供給の途絶を防ぐという点でも期待されています。大規模な災害が発生した場合、従来の発電所や送電線が被害を受け、広範囲にわたって停電が発生する可能性があります。しかし、マイクログリッドを導入することで、地域内で電力を自給自足できるため、災害時にも電力の供給を維持することができます。このように、マイクログリッドは、環境に優しく、災害にも強い、これからの社会にとって重要な技術と言えるでしょう。
その他

国際エネルギー協力の要: 協調的緊急時対応措置

- 協調的緊急時対応措置とは協調的緊急時対応措置(CERM)は、国際的なエネルギー協力の枠組みの中で、石油の供給不安が生じた際に、その影響を最小限に抑え、世界経済への打撃を緩和するために設けられた重要な制度です。これは、国際エネルギー機関(IEA)に加盟する国々が合意した、いわば、石油版の「助け合い」と言えるでしょう。1970年代に発生した石油危機を教訓に、1984年に設立されたこの枠組みは、加盟各国が保有する石油備蓄を、緊急時に共同で放出することを定めています。 世界的な石油供給に大きな支障が生じるような、極めて深刻な事態だけでなく、供給不足の懸念など、比較的軽微な状況においても、この枠組みは柔軟に対応できるよう設計されています。協調的な対応が必要となる事態が発生した場合、IEA加盟国は協議を行い、状況の深刻さ、予想される影響などを考慮した上で、備蓄からの放出量を決定します。この協調的な行動は、石油市場の安定化に寄与するだけでなく、価格高騰の抑制にもつながり、世界経済への悪影響を最小限に食い止める効果も期待できます。CERMは、国際社会がエネルギー安全保障という共通の課題に協力して取り組むことの重要性を示す象徴的な枠組みと言えるでしょう。
その他

資源の未来を考える:究極量の重要性

私たちが暮らす地球には、様々な資源が存在しますが、その量は無限ではありません。特に、現代社会にとって欠かせない石油や天然ガスといったエネルギー資源は、限りある資源です。この資源の有限性を示す重要な概念が「究極量」です。 究極量とは、地球上に存在する資源の総量を指します。資源がどれくらい存在するのか、その全体量を知ることで、私たちは資源の枯渇性について真剣に考えることができます。 例えば、ある資源の究極量があと100年分と分かれば、その資源に頼り続けることは難しく、代替となる資源の開発や省エネルギー化など、早急な対策が必要となります。このように、究極量は、私たちが資源の有限性を認識し、持続可能な社会を実現するために欠かせない指標と言えるでしょう。 資源の枯渇は、私たちの生活や経済活動に大きな影響を与えます。究極量を理解し、資源を大切に使い、未来に向けて持続可能な社会を築くために、私たち一人ひとりの行動が求められています。
その他

世界の指標、WTI原油:価格の鍵握る軽質原油

- アメリカの油田から世界へ「WTI原油」という言葉を耳にしたことはありますか?これは、アメリカ合衆国の中西部に位置するテキサス州の西部で採掘される原油を指します。「West Texas Intermediate」の頭文字をとって、WTI原油と呼んでいます。テキサス州とニューメキシコ州の州境に広がるパーミアン盆地は、近年、シェールオイルの増産によって、世界中から注目を集めています。この地域で産出されるWTI原油は、硫黄分の含有量が少なく、精製しやすい軽質原油であることが大きな特徴です。WTI原油から精製されるガソリンや灯油は、世界中で需要の高い石油製品です。そのため、WTI原油は世界のエネルギー市場において、主要な指標の一つとして、活発に取引されています。 アメリカの油田から採掘された原油は、海を渡り、世界中の国々へ届けられ、私たちの生活を支えています。
放射線について

エネルギーの単位:ジュール

私たちの周りには、電気、熱、光など、様々な形態のエネルギーが存在します。物が動いたり、温まったり、光ったりするのは、エネルギーが関与しているからです。エネルギーとは、物体を動かしたり、温めたり、光らせたりする能力のことを指します。 エネルギーは、形を変えることができます。例えば、電気は熱や光に、運動は熱や音に変わることがあります。このようなエネルギーの形の変化は、「仕事」を通して行われます。「仕事」とは、物体に力を加えて、その力を加えた方向に物体を移動させることです。 例えば、電気エネルギーはモーターを動かす仕事を通して、運動エネルギーに変換されます。電気がモーターに力を加え、モーターが回転することで、電気が仕事をしたことになります。この時、モーターを動かすために使われた電気エネルギーの量と、モーターが回転することで生まれた運動エネルギーの量は、ちょうど等しくなります。つまり、エネルギーは、形を変えても、その総量は変化しないのです。これは、「エネルギー保存の法則」と呼ばれる、自然界の基本的な法則の一つです。
放射線について

原子力の基礎:γ線の秘密に迫る

私たちの身の回りには、目には見えないけれど、様々な波長の電磁波が存在しています。電波や光も電磁波の一種ですが、原子核から放出される非常に波長の短い電磁波は、「ガンマ線」と呼ばれています。 原子核は、物質を構成する原子の中心にあり、陽子と中性子でできています。この陽子や中性子のエネルギー状態は、常に一定ではなく変化することがあります。そして、エネルギーの高い状態から低い状態に変化する際に、そのエネルギー差が電磁波として放出されます。これがガンマ線が発生する仕組みです。 ガンマ線の波長は、10のマイナス12乗メートルから10のマイナス14乗メートルと非常に短く、これは原子の大きさよりもさらに小さいスケールです。そして、ガンマ線は波長が短い分、エネルギーは0.1メガ電子ボルトから100メガ電子ボルト程度と非常に高くなります。これは、病院でレントゲン撮影に使われるエックス線と比べて、数百倍から数万倍も大きなエネルギーです。そのため、ガンマ線は物質を透過する力が強く、医療分野ではがんの治療や診断、工業分野では材料の検査など、様々な分野で利用されています。
その他

サハリンプロジェクト:エネルギー供給の新たな可能性

- サハリンプロジェクトとはサハリンプロジェクトとは、ロシアの東端に位置するサハリン島沖合の豊富な石油・天然ガス資源を開発し、生産することを目的とした国際的な共同事業です。 複数のプロジェクトによって構成されていますが、中でもサハリン島の北東部を対象とした「サハリン1」と「サハリン2」の開発が大きく進展しました。特に「サハリン2」は、日本にとって重要なエネルギー供給源となっています。このプロジェクトでは、サハリン島北東部の海域で採掘された天然ガスを液化し、日本を含む東アジア諸国へ輸出しています。 日本はエネルギー資源の多くを輸入に頼っているため、サハリンプロジェクトはエネルギー安全保障の観点からも重要な役割を担っています。しかし、サハリンプロジェクトは環境への影響も懸念されています。開発地域周辺は、豊かな生態系を持つことで知られており、絶滅危惧種に指定されている鯨や渡り鳥なども生息しています。 したがって、環境保護の観点から、開発による影響を最小限に抑えるための取り組みが求められています。このように、サハリンプロジェクトはエネルギー供給と環境保護の両面から重要な意味を持つプロジェクトと言えるでしょう。
その他

電力供給の要!火力発電の仕組みと役割

- 火力発電とは 火力発電は、私たちが日常生活で使う電気を生み出す主要な方法の一つです。 石油や石炭、天然ガスなどの燃料を燃やし、その熱エネルギーを使って電気を作る仕組みです。 火力発電所では、まず燃料を燃焼させて高温のガスを発生させます。この高温ガスはボイラーと呼ばれる装置の中で水を沸騰させ、高圧の水蒸気を作り出します。この高圧の水蒸気がタービンと呼ばれる巨大な羽根車に勢いよく吹き付けられることで、タービンは高速回転します。そして、タービンの回転エネルギーを利用して、発電機が電気エネルギーを発生させるのです。 火力発電は、必要な時に必要なだけ電気を作り出すことができるという点で利点があります。また、他の発電方法と比べて発電コストが低いというメリットもあります。一方で、発電時に二酸化炭素などの温室効果ガスを排出するため、地球温暖化の原因の一つとされています。近年では、二酸化炭素の排出量を抑える技術開発や、排出された二酸化炭素を回収・貯留する技術開発なども進められています。
原子力発電の基礎知識

エネルギーの単位:電子ボルト

- 電子ボルトとは電子ボルトは、原子や分子といった非常に小さな世界におけるエネルギーの大きさを表す単位です。記号は「eV」と表記されます。 私たちが日常生活でよく使うエネルギーの単位にジュール(J)がありますが、これは例えば100グラムの物を1メートル持ち上げるのに必要なエネルギーといった、比較的身近なスケールの大きさを表すのに適しています。一方、原子や電子の世界では、ジュールという単位ではあまりにも大きすぎて使いづらいのです。そこで登場するのが電子ボルトです。電子ボルトは、1つの電子が1ボルトの電圧で加速されたときに得るエネルギーと定義されています。電子は非常に小さな粒子なので、1ボルトの電圧で加速されても得られるエネルギーはごくわずかです。このごくわずかなエネルギーを1電子ボルト(1eV)と定めているため、電子ボルトは原子や分子といったミクロな世界のエネルギーを表すのに最適な単位と言えるのです。例えば、水素原子の電子を最もエネルギーの低い状態から引き離すのに必要なエネルギーは約13.6電子ボルトです。このように、電子ボルトを用いることで、原子や分子が持つエネルギーを分かりやすく表現することができます。
その他

褐炭:豊富な資源、活用の道は?

石炭と一言で言っても、実際には様々な種類が存在します。石炭は、大昔の植物が地中に埋もれ、長い年月を経て変化することで生まれます。この変化の度合いを「炭化度」と呼び、炭化度が低いものから順に、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭といった種類に分けられます。日本では、泥炭と亜炭は石炭には含まれず、褐炭が最も炭化度の低い石炭として扱われています。 褐炭は、他の種類の石炭と比べて水分や酸素を多く含んでいることが特徴です。そのため、黒褐色をしており、光沢があまり見られません。また、炭化度が低いため、発熱量が少なく、燃焼時に煙や灰が多く発生するという側面もあります。しかし、埋蔵量が多く、比較的浅い場所に存在するため、露天掘りによる採掘が可能な点が利点として挙げられます。 日本においては、褐炭は主に北海道や東北地方で産出されます。これらの地域では、褐炭は火力発電所の燃料として利用されてきました。近年では、地球温暖化対策の観点から、褐炭の利用は減少傾向にあります。しかし、褐炭は、他の石炭と比べて、化学原料や土壌改良剤など、燃料以外の用途への利用も期待されています。
その他

西気東輸プロジェクト:中国のエネルギー戦略

- プロジェクトの概要「西気東輸」プロジェクトは、中国のエネルギー事情を抜本的に改革する可能性を秘めた、壮大な国家プロジェクトです。 その名の通り、天然ガス資源が豊富な西部の地域から、エネルギー需要が高く供給が不足している東部の沿岸地域へ、天然ガスを輸送することを目的としています。このプロジェクトの要となるのが、全長約4,200kmにも及ぶ長距離天然ガスパイプラインです。 これは、まさに中国大陸を横断する大動脈と言えるでしょう。 起点となるのは、新疆ウイグル自治区に位置するタリム盆地です。 この地域は広大なタクラマカン砂漠が広がり、厳しい自然環境下にありますが、豊富な天然ガス資源を有することで知られています。 パイプラインは、このタリム盆地から出発し、幾多の山脈や河川を横断しながら東へと延びていきます。 そして、最終的に経済活動の中心地である上海市へと到達します。「西気東輸」プロジェクトは、単にエネルギーを輸送するだけのプロジェクトではありません。 これは、中国全体の経済発展、地域間の格差解消、そして環境問題の改善にも大きく貢献することが期待されています。
放射線について

エネルギーの単位 MeV とは

- MeVとは MeVはメガ電子ボルトと読み、エネルギーの大きさを表す単位です。 身近な例で例えると、電気ポットでお湯を沸かす際に消費される電気エネルギーは、数百Wh(ワット時)という単位で表されます。 MeVはそれと比較すると非常に小さなエネルギーを表す単位で、主に原子核や素粒子といった極微の世界で使われています。 MeVは、100万電子ボルト、つまり10⁶eVと同じ大きさです。 電子ボルト(eV)は、電気を帯びた粒子が電圧の中を移動する際に得るエネルギーを表す単位です。 たとえば、1ボルトの電圧がかかった空間を電子1個が移動すると、その電子は1eVのエネルギーを得ます。 しかし、1eVは非常に小さなエネルギーであるため、原子力分野では100万倍大きいMeVがよく使われます。 たとえば、ウラン原子が核分裂する際に放出されるエネルギーは約200MeV、太陽の中で水素原子4つが核融合してヘリウム原子1つになる際に放出されるエネルギーは約26MeVに相当します。
その他

エネルギー源としてのLNG:その特性と将来性

- 液化天然ガス(LNG)とは液化天然ガス(LNG)は、その名の通り、天然ガスを液体にしたものです。 天然ガスをマイナス162度という非常に低い温度まで冷却することで、液体にすることができます。 液体になると、気体の状態と比べて体積が大幅に減少します。 なんと、約600分の1まで小さくなるのです。この体積の縮小は、LNGの大きなメリットに繋がります。 液体になったことで、輸送や貯蔵が格段にしやすくなるのです。 気体の状態の天然ガスを長距離輸送する場合、巨大なパイプラインを敷設する必要があり、コストや時間がかかってしまいます。しかし、LNGとして運ぶ場合は、専用の船舶やタンクを使用することで、より効率的に輸送することができます。また、貯蔵に関しても、LNGは液体であるため、気体の天然ガスよりも小さなスペースに大量に貯蔵することができます。 このため、エネルギーの安定供給という観点からも、LNGは非常に重要な役割を担っています。 近年、世界的にエネルギー需要が高まる中、LNGはクリーンなエネルギー源として、ますます注目されています。
その他

エネルギー安全保障の要:JOGMECの役割

日本はエネルギー資源の多くを海外からの輸入に頼っており、資源の安定供給は経済成長と国民生活の安定にとって欠かせない要素です。このような状況下で、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、資源の安定供給を確保するという重要な役割を担っています。 2004年の設立以来、JOGMECは石油や天然ガス、金属鉱物資源などの確保に向けた幅広い活動を行っています。具体的には、世界各地の資源開発プロジェクトへの出資や融資を通して、日本企業が参画しやすくなるよう支援しています。また、資源の探査や開発に関する技術的な知見を提供することで、プロジェクトの成功確率を高め、安定供給に貢献しています。 さらに、JOGMECは資源に関する情報収集や分析にも力を入れています。国際的なエネルギー情勢や資源市場の動向を的確に把握し、その情報を日本政府や企業に提供することで、資源の安定確保に向けた戦略立案を支援しています。このように、JOGMECは資源の安定供給という重要な使命を担い、日本経済の持続的な成長と国民生活の安定に大きく貢献しています。
その他

石油の可採埋蔵量:どれくらい使えるのか?

現代社会において、石油は私たちの生活に欠かせないエネルギー源です。 車を走らせ、飛行機を飛ばし、電気を作るなど、様々な場面で利用されています。しかし、この貴重な資源は、地下深くの地層に埋蔵されており、その量は限りがあります。 地下に眠る石油資源の総量を「原始量」と呼びますが、全てを掘り出すことは不可能です。石油は、地下深くの岩石の隙間などに存在しており、自然に湧き出すことは稀です。そのため、井戸を掘削し、ポンプを使って人工的に地表まで汲み上げる必要があります。 石油の埋蔵量は、 geological survey(地質調査)や探掘によって推定されますが、正確な量は掘り尽くすまで分かりません。また、技術的な制約や採掘コストの問題もあり、経済的に採掘可能な石油の量は、原始量よりもはるかに少ないです。 私たちは、石油資源の有限性を認識し、省エネルギーや代替エネルギーの開発など、持続可能な社会を実現するための取り組みを進めていく必要があります。
放射線について

β壊変エネルギー:原子力の基礎

物質を構成する基本単位である原子は、中心にある原子核と、その周りを回る電子から成り立っています。原子核はさらに陽子と中性子で構成されており、この組み合わせによって様々な元素が存在します。 しかし、原子核の中には、その構成員の組み合わせが不安定で、より安定した状態へと変化しようとするものがあります。このような原子核は放射性同位体と呼ばれ、安定な状態になるために放射線を放出します。この現象を放射性壊変と呼びます。 放射性壊変にはいくつかの種類があり、その一つがβ壊変です。β壊変では、原子核の中にある中性子が陽子へと変化します。この時、原子核からはβ線と呼ばれる電子と、反ニュートリノと呼ばれる粒子が放出されます。β線は電子とほぼ同じ性質を持つため、電場や磁場によって容易に曲げることができます。 β壊変は、原子力発電や医療分野など、様々な場面で利用されています。原子力発電では、ウランなどの核分裂反応によって生じる放射性物質がβ壊変を起こす際に放出されるエネルギーを利用して発電を行います。また、医療分野では、β線を照射することでがん細胞を破壊する治療法や、β線を放出する放射性同位体を利用して体内の臓器や組織の働きを調べる検査などに利用されています。
その他

未来の発電方式:石炭ガス化複合発電(IGCC)とは

石炭ガス化複合発電(IGCC)は、将来のエネルギー問題の解決策として期待されている、画期的な発電技術です。従来の石炭火力発電とは異なり、石炭をそのまま燃やすのではなく、高温高圧の環境下で石炭を化学反応させてガスに変えることで、よりクリーンで効率的な発電を可能にします。 この技術の最大の特徴は、石炭から生成した可燃性ガスを使ってガスタービンを回し、電気を作ることです。さらに、ガスタービンから出る高温の排ガスを再利用して蒸気を作り、蒸気タービンも回転させることで、より多くの電気を生み出します。このように、IGCCは従来の発電方法と比べて、エネルギーを無駄なく使うことができるため、高い発電効率を誇ります。 また、IGCCは環境面でも優れた技術です。ガス化の過程で発生する硫黄や窒素酸化物などの有害物質は、事前に取り除くことができるため、大気汚染の削減に貢献します。さらに、二酸化炭素の排出量も従来の石炭火力発電に比べて少なく、地球温暖化対策としても有効な手段として注目されています。
原子力施設

未来のエネルギー: 核融合炉

- 核融合炉とは核融合炉は、太陽の内部で起きている核融合反応を人工的に再現し、エネルギーを取り出すことを目指した装置です。核融合反応とは、軽い原子核同士が衝突して融合し、より重い原子核になる際に膨大なエネルギーを放出する現象です。太陽はこの核融合エネルギーによって輝いています。核融合炉では、燃料として重水素と三重水素という水素の仲間である物質が使われます。これらの物質は地球上に豊富に存在し、特に重水素は海水から取り出すことが可能です。そのため、核融合炉は、資源の制約が少なく、事実上無尽蔵のエネルギー源として期待されています。核融合反応を起こすためには、一億度という超高温でプラズマ状態にした燃料を、強力な磁場によって閉じ込める必要があるため、技術的に非常に困難です。しかし、世界各国で研究開発が進められており、実用化に向けて着実に前進しています。核融合炉が実現すれば、エネルギー問題の解決に大きく貢献することが期待されています。
原子力発電の基礎知識

未来のエネルギー: 核融合反応

- 核融合反応とは核融合反応とは、複数の軽い原子核が融合し、より重い原子核へと変化する反応のことを指します。この反応の際に、莫大なエネルギーが放出されることが知られています。私たちの最も身近な存在である太陽も、この核融合反応によって膨大なエネルギーを生み出し、輝きを放っているのです。太陽の中心部では、水素原子核同士が融合し、ヘリウム原子核が生成される核融合反応が絶えず起こっています。水素原子核は陽子と呼ばれる粒子を1つだけ持ちますが、ヘリウム原子核は陽子を2つ持つため、より重い原子核と言えます。この核融合反応の過程で、一部の質量がエネルギーへと変換されます。アインシュタインが提唱した有名な式「E=mc² 」は、この質量とエネルギーの等価性を表しており、ほんのわずかな質量が莫大なエネルギーに変換されることを示しています。太陽の中心部で解放された熱エネルギーは、やがて太陽の表面に到達し、光や熱として宇宙空間へと放射されます。地球もまた、この太陽からの光と熱を受けており、私たち生物はこの恩恵を受けて生きています。 植物の光合成、私たちが日々感じている暖かさ、そして地球の気候はすべて、太陽の核融合反応によって供給されるエネルギーに支えられていると言えるでしょう。
その他

分散型電源:エネルギーの地産地消

私たちの生活に欠かせない電力は、これまで都市部から離れた場所に設置された大規模な発電所で作られ、送電線を通じて届けられてきました。しかし近年、エネルギーの地産地消や環境への負荷軽減といった観点から、電力の作り方にも変化が生まれています。 その代表例が「分散型電源」です。従来のように遠く離れた場所から電気を送るのではなく、太陽光発電や風力発電など比較的小規模な発電設備を、私たちの住む街や建物に近い場所に設置し、そこで作った電気を使う仕組みです。 分散型電源には、送電によるエネルギーロスが少ない、災害時でも地域で電力を供給できる可能性があるなど、多くのメリットがあります。また、地域で必要な電力を地域で賄うことで、エネルギー自給率の向上や地域経済の活性化にも繋がります。 環境問題への意識が高まる中、分散型電源は、これからの持続可能な社会を作る上で、ますます重要な役割を担っていくと考えられています。
原子力発電の基礎知識

エネルギー源としての核融合

- 核融合とは原子の中には、陽子や中性子といった小さな粒子が存在しています。そして、この陽子や中性子が複数集まって原子核を構成しています。 核融合とは、この原子核同士がくっついて、より大きな原子核に変わる反応のことを指します。私たちの暮らす地球から遠く離れた太陽。この太陽が莫大なエネルギーを出し続けられるのも、実はこの核融合のおかげなのです。太陽の中心部では、膨大な圧力と熱によって水素の原子核同士が激しく衝突し、くっつき合ってヘリウムの原子核へと変化しています。この時、くっついた原子核の重さよりも、反応後の原子核の重さのほうがほんの少しだけ軽くなります。 実はこのわずかな質量の差が莫大なエネルギーに変換されることで、太陽は明るく輝き、熱を放ち続けているのです。核融合は、太陽のような恒星だけでなく、未来のエネルギー源としても期待されています。地上で核融合を実現するため、水素よりもさらに軽い原子である重水素や三重水素を用いた研究開発が進められています。核融合反応は、ウランを使う原子力発電とは異なり、高レベル放射性廃棄物がほとんど発生しないという大きな利点があります。また、資源である重水素は海水からほぼ無尽蔵に得ることができ、安全性も高いことから、核融合は人類のエネルギー問題を解決する切り札として期待されています。
原子力発電の基礎知識

エネルギー源の核分裂反応

- 核分裂反応とは核分裂反応とは、ウランやプルトニウムなど、特定の種類の重い原子核が分裂し、より軽い原子核に分かれる現象です。この現象は、原子核に中性子と呼ばれる粒子が衝突することで引き起こされます。原子核は、物質を構成する原子の中心に位置し、陽子と中性子で構成されています。ウランやプルトニウムのような重い原子核は、不安定な状態にあります。そこに中性子が衝突すると、原子核は不安定な状態になり、振動し始めます。そして最終的に、二つ以上の軽い原子核に分裂します。このとき、分裂した原子核は、莫大なエネルギーを放出します。これは、アインシュタインの有名な式「E=mc²」で表されるように、物質がエネルギーに変換されるためです。核分裂反応で放出されるエネルギーは、火力発電などで使われる燃料の燃焼反応と比べて桁違いに大きく、このことから原子力発電など様々な分野で応用されています。さらに、核分裂反応では分裂した際に新たな中性子が放出されます。この中性子が他の原子核に衝突することで連鎖的に核分裂反応が起きることを連鎖反応と呼びます。原子力発電ではこの連鎖反応を制御しながらエネルギーを取り出しています。
原子力施設

ITER:未来のエネルギー源への挑戦

- ITERとはITER(国際熱核融合実験炉)は、核融合エネルギーが実際に利用できるエネルギー源であることを証明するために建設中の実験炉です。核融合エネルギーとは、太陽が光り輝き、熱を生み出す原理と同じ仕組みを利用したエネルギーの発生方法です。燃料には、海水から取り出すことができる重水素やリチウムなどを使い、これらの資源は地球上に豊富に存在するため、ほぼ無尽蔵といえます。さらに、発電時に二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しないという大きな利点も持ち合わせています。ITERは、このような未来のエネルギー源として期待される核融合エネルギーの実現に向けて、世界各国が協力して進めている国際プロジェクトです。日本も参加しており、巨大な実験炉の建設や実験の計画、運営に携わっています。ITERでは、核融合反応を起こすために必要な超高温・高密度のプラズマを生成し、それを長時間維持することを目標としています。ITER計画は、核融合エネルギーの実用化に向けた重要な一歩となることが期待されています。成功すれば、人類は安全でクリーンなエネルギーを手に入れることができるだけでなく、地球温暖化問題の解決にも大きく貢献することができるでしょう。