エネルギー準位

原子力発電の基礎知識

原子力発電の基礎: 軌道電子

私たちの身の回りにある、空気や水、そして私たち自身も全て物質でできています。この物質をどんどん細かくしていくと、物質を構成する最小単位である原子にたどり着きます。原子はあまりにも小さいため、私たちの目では見ることができません。原子の中心には、原子核と呼ばれる小さな芯が存在します。原子核はプラスの電気を帯びており、その周りをマイナスの電気を帯びたさらに小さな粒子が、まるで太陽の周りを惑星が回るように回転しています。 原子力発電は、この原子核に秘められた莫大なエネルギーを利用する発電方法です。ウランなどの特定の種類の原子核は、核分裂と呼ばれる反応を起こす性質を持っています。核分裂とは、原子核が二つ以上の原子核に分裂する現象です。このとき、膨大なエネルギーが熱として放出されます。原子力発電所では、この熱を利用して水を沸騰させ、蒸気を発生させます。そして、その蒸気の力でタービンと呼ばれる羽根車を回し、電気を作り出しているのです。
放射線について

オージェ電子の世界: 原子の励起と電子の放出

物質を構成する最も基本的な単位である原子は、中心に位置する原子核と、その周囲を回る電子によって構成されています。電子は特定のエネルギーを持つ軌道上を運動していますが、外部からエネルギーを受け取ると、より高いエネルギー状態へと遷移し、不安定な状態になります。この不安定な状態を励起状態と呼びます。励起状態にある原子は、エネルギーを放出して元の安定した状態に戻ろうとします。この時、一般的には光が放出されますが、実は光ではなく電子が放出される現象も存在します。これが今回紹介する「オージェ電子」と深く関わる現象です。 原子にX線や電子線を照射すると、内側の軌道にある電子がエネルギーを受けて原子外に飛び出すことがあります。すると、空になった軌道に外側の軌道の電子が遷移し、その際に余分なエネルギーを放出します。このエネルギーが光として放出される場合もありますが、別の電子に受け渡され、その電子が原子外に飛び出す現象が起こることがあります。この際に飛び出す電子を「オージェ電子」と呼びます。オージェ電子は、物質の表面分析などに用いられており、物質の組成や化学結合状態などを調べることができます。