エネルギー

その他

未来のエネルギ―、固体酸化物燃料電池とは?

近年、環境問題への関心の高まりから、再生可能エネルギーの利用が注目を集めています。その中でも、燃料電池は、高い発電効率とクリーンなエネルギー源として期待されており、次世代のエネルギーシステムにおいて重要な役割を担うとされています。 燃料電池の中でも、固体酸化物燃料電池(SOFC)は、電解質に固体酸化物を使用している点が大きな特徴です。従来の燃料電池では液体の電解質が使われていましたが、SOFCでは固体であるがゆえに、装置の構造が簡素化され、取り扱いが容易になるというメリットがあります。また、動作温度が高いため、発電効率が向上し、排熱を有効に利用できるという利点も備えています。 このような利点から、SOFCは、家庭用や業務用の発電システムとして、あるいは自動車などの移動体用電源としての活用も期待されています。 しかし、SOFCの実用化には、コストの低減や耐久性の向上など、まだ解決すべき課題も残されています。現在、世界中で活発な研究開発が進められており、近い将来、私たちの生活においても、SOFCが身近なエネルギー源となることが期待されます。
原子力発電の基礎知識

原子力の源:核分裂エネルギー

原子力発電は、物質の根源的なレベルにおける反応である核分裂を利用して、膨大なエネルギーを生み出します。原子の中心には、陽子と中性子からなる原子核が存在します。通常、原子核は安定していますが、ウランやプルトニウムのような特定の重い原子核は、外部から中性子を取り込むと不安定な状態になります。 この不安定な状態は長くは続かず、原子核は二つ以上の軽い原子核に分裂します。これが核分裂と呼ばれる現象です。この分裂の過程で、元々原子核の中に閉じ込められていた莫大なエネルギーが、熱と光として放出されます。これは、例えるなら、ぎゅっと押し込められていたバネが、一気に解放されてエネルギーを放出するようなものです。 原子力発電所では、この核分裂の際に生じる熱エネルギーを使って水を沸騰させ、蒸気を発生させます。そして、その蒸気の力でタービンを回し、発電機を駆動させて電気を作り出します。このように、原子力発電は、原子核の分裂というミクロの世界の現象を、私たちが日常で使う電気というマクロの世界のエネルギーに変換する技術なのです。
原子力発電の基礎知識

エネルギーの源泉:核分裂の力

原子核の分離核分裂とは 物質を構成する最小単位である原子の中心部には、原子核が存在します。この原子核は、陽子と中性子という小さな粒子で構成されています。通常、原子核は非常に安定していますが、ウランやプルトニウムのように、質量の大きい原子核の場合は、外部からの影響によって二つ以上の軽い原子核に分裂することがあります。この現象を「核分裂」と呼びます。 核分裂を引き起こすには、原子核に中性子などの粒子を衝突させる方法があります。外部から侵入してきた中性子が原子核に吸収されると、原子核は不安定な状態になり、最終的に分裂してしまいます。また、自然発生的に核分裂が起こる場合もあります。これは、不安定な状態の原子核が、自発的に分裂する現象です。いずれの場合も、分裂の結果として元の原子核よりも軽い原子核、すなわち「核分裂片」が生成されます。 核分裂の際に特筆すべき点は、膨大なエネルギーが放出されることです。これは、分裂前の原子核と分裂後の原子核の質量を比較すると、わずかに質量が減少していることに起因します。この質量の減少は、アインシュタインの有名な式「E=mc²」に従って、エネルギーに変換されます。このエネルギーは、熱や光として放出され、原子力発電など様々な分野で利用されています。
放射線について

プルトニウムLX線の解説

- プルトニウムとはプルトニウムは、元素記号Puで表され、原子番号94番の元素です。ウラン鉱石の中にごくわずかに存在しますが、天然に存在する量は非常に少ないです。原子力発電において重要な役割を果たし、ウラン238という物質に中性子を当てることで人工的に作り出すことができます。プルトニウムは、銀白色の金属光沢を持つ物質ですが、空気中に放置すると容易に酸化され、表面が曇ってきます。また、プルトニウムは放射性元素の一種であり、アルファ線と呼ばれる放射線を放出します。アルファ線は、紙一枚で遮ることができるものの、体内に入ると健康に影響を与える可能性があるため、プルトニウムの取り扱いには細心の注意が必要です。プルトニウムは、主に原子力発電の燃料として利用されます。ウラン235と同様に、核分裂反応を起こし、莫大なエネルギーを発生させることができます。このエネルギーを利用して、発電を行うことが可能です。さらに、プルトニウムは核兵器の原料としても使用されることから、国際的な規制の対象となっています。プルトニウムは、適切に管理・利用すれば、エネルギー問題の解決に貢献できる可能性を持つ一方で、その放射性と軍事利用の可能性から、常に慎重な対応が求められる物質と言えるでしょう。
その他

都市ガスの未来:IGF計画とは?

日本の都市ガスは、かつてはその地域で採取できる資源に合わせて製造されていました。そのため、地域ごとにガスのカロリーが異なり、ガス器具の互換性がありませんでした。例えば、プロパンガス用に作られたガスコンロを都市ガス用に使うことはできませんでした。 しかし、エネルギー効率の向上や安全性の観点から、全国的に高カロリーガスに統一しようという動きが高まりました。これは、高カロリーガスの方が燃焼効率が良く、エネルギーの無駄が少ないためです。また、ガス器具の製造や供給の効率化、さらには安全性向上にもつながります。 この動きを具体的に推進しているのが、IGF計画(Integrated Gas Family計画)です。この計画では、都市ガスのカロリーを1立方メートルあたり約15メガジュールという高い値に統一することを目指しています。カロリーの統一によって、ガス器具の相互利用が可能になるだけでなく、将来的には海外から輸入した天然ガスも利用しやすくなるというメリットもあります。 IGF計画は、日本のエネルギー政策にとって重要な意味を持つ計画と言えるでしょう。
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紙作りとエネルギー:黒液の活用

- 黒液紙作りから生まれるエネルギー源 紙の原料であるパルプを作る過程で、大量に生じるのが「黒液」と呼ばれる液体です。一見すると、工場から排出されるただの黒い廃液のように見えますが、実は、その正体は貴重なエネルギー源なのです。 紙の原料となるパルプは、木材から作られます。木材を細かく砕いたチップを、薬液で煮詰め、繊維を取り出すのですが、この工程で、木材に含まれるリグニンや樹脂などの成分が溶け出し、黒液となります。 黒液は、その名の通り、どろりとした黒い液体で、見た目は決してきれいとは言えません。しかし、この黒液には、木材がもともと持っていたエネルギーが、豊富に含まれているのです。そこで近年、黒液を燃料として有効活用しようという取り組みが、世界中で進められています。 具体的には、黒液を燃焼させて蒸気や電気を作り出すことで、製紙工場内で必要なエネルギーとして利用したり、あるいは、電力会社に売電したりといったことが行われています。 このように、黒液は、紙作りとエネルギー問題の両方に貢献できる、まさに一石二鳥の資源と言えるでしょう。
その他

電力平準化の切り札!氷蓄熱式空調システム

厳しい暑さに見舞われる日本の夏。連日続く猛暑の中では、エアコンなしの生活は考えられません。しかし、エアコンを長時間稼働させることで電気代が膨らむのも悩ましい問題です。特に、日中の電力需要がピークを迎える時間帯は電気料金も高くなるため、少しでも電気代を抑えたいと考える方も多いのではないでしょうか。 そこで近年注目を集めているのが、「氷蓄熱式空調システム」です。これは、夜間の電力需要が比較的少ない時間帯に電力を使い、水を凍らせて氷を作っておくというシステムです。そして、日中の電力需要が高まる時間帯に、この氷を利用して冷房を行うことで、日中の電力使用量を大幅に削減することができます。日中の電気料金が高い時間帯にエアコンを使う代わりに、割安な夜間電力で作った氷で冷房ができるため、電気代の節約に大きく貢献するシステムとして期待されています。
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電力システムの要!負荷曲線を解説

私たちの生活に欠かせない電気は、発電所で作られ、送電線を通って家庭や工場に届けられています。電気は貯めておくことが難しいという性質があるため、常に需要と供給のバランスを保つことが重要となります。電力会社は、このバランスを維持するために日々努力を重ねています。 需要量は、季節、時間帯、気温などによって大きく変動します。例えば、夏の暑い日にはエアコンの使用が増えるため、電力需要はピークを迎えます。一方、需要が少ない夜間や冬季には、電力需要は低下します。このような変動に対応するために、電力会社は常に需要を予測し、それに合わせて発電所の運転を調整しています。 具体的には、需要が多い時間帯には、稼働率の高い発電所をフル稼働させるとともに、必要に応じて稼働率の低い発電所も稼働させることで、電力の安定供給を図ります。一方、需要が少ない時間帯には、一部の発電所の出力を抑えたり、停止したりすることで、供給過剰にならないように調整しています。このように、電力会社は需要と供給のバランスを常に意識しながら、電力の安定供給という重要な役割を担っています。
その他

風力発電:課題と展望

- 風力発電の仕組み 風力発電は、風の力を利用して電気エネルギーを生み出す、環境に優しい再生可能エネルギー技術です。 風の力で風車のブレードが回転すると、その回転力は風車の中心部にある誘導発電機に伝わります。 誘導発電機は、回転する力を受け取ると、電磁誘導の原理によって電気を発生させる装置です。 このように、風力発電は、風のエネルギーを回転エネルギーに変換し、さらに電気エネルギーに変換する仕組みで電気を作り出します。 風力発電は、風の強さに左右されるという側面があります。風が弱いと発電量が減り、風が強すぎると風車を停止させて設備を保護する必要があります。 しかし、近年では、より効率的に風をとらえることができるブレードの開発や、風の強さに応じて発電量を調整する技術の進歩により、安定した電力供給が可能になってきています。
放射線について

原子力の基礎: 壊変エネルギーとは?

私たちの世界を構成する物質。その最小単位である原子の中心には、原子核が存在します。原子核はプラスの電気を帯びた陽子と電気的に中性な中性子から成り立っています。この陽子の数と中性子の組み合わせは原子によって異なり、それぞれ異なる性質を持つ多様な原子が存在する理由となっています。 原子核の種類は、陽子の数を表す原子番号と陽子と中性子の合計数を表す質量数で区別されます。しかし、原子核の中には不安定な状態のものも存在します。このような原子核は、より安定な状態に移ろうとして、余分なエネルギーを放出します。これが放射性壊変と呼ばれる現象です。 放射性壊変には、アルファ線、ベータ線、ガンマ線などを放出する様々な種類があります。これらの放射線は物質を透過する能力や電離作用など、それぞれ異なる性質を持っています。この性質を利用して、医療分野における画像診断や治療、工業分野における非破壊検査、農業分野における品種改良など、様々な分野で放射線が活用されています。 このように、エネルギーを放出する原子核は、私たちの身の回りで様々な影響を与えています。原子核の性質や放射性壊変のメカニズムを理解することは、原子力を安全かつ有効に利用していく上で非常に重要です。
その他

高温ガス炉:未来のエネルギーを担う革新技術

- 高温ガス炉とは高温ガス炉は、次世代を担う発電方法として期待を集めている原子力発電の一種です。従来の原子力発電所とは異なり、熱を伝えるために水を用いるのではなく、ヘリウムガスを使用するのが大きな特徴です。高温ガス炉は、安全性が高いという点で注目されています。炉心で燃料を覆う被覆粒子と呼ばれる小さなセラミック製のカプセルは、非常に高い温度にも耐えられるように設計されています。万が一、炉心で異常な温度上昇が起こったとしても、このカプセルが燃料の溶融を防ぎ、放射性物質の外部への放出を抑制します。さらに、高温ガス炉は発電効率が高いという利点も持ち合わせています。ヘリウムガスを冷却材として使用することで、従来の原子力発電所よりも高い温度で運転することが可能になります。この高い運転温度によって、より多くの電力を生み出すことができるのです。このように、高温ガス炉は安全性と発電効率の両面で優れた特徴を持つため、将来のエネルギー問題の解決に大きく貢献することが期待されています。特に、地球温暖化対策として二酸化炭素排出量の削減が求められる現代において、高温ガス炉は有力な選択肢となり得ると考えられています。
放射線について

物質の奥深くを探る: 硬X線の力

- 硬X線とは硬X線は、波長が0.001ナノメートルから0.1ナノメートルという非常に短いX線を指します。これは、10キロ電子ボルト以上の高いエネルギーを持つことを意味します。 X線と聞いて、病院でのレントゲン撮影を思い浮かべる方も多いでしょう。レントゲン撮影に用いられるX線は、物質を透過する性質を持つため、骨の状態を調べるのに役立ちます。硬X線もまた、物質を透過する能力に長けており、レントゲン撮影に用いられるX線よりもさらに物質の奥深くまで到達することができます。 この高い透過能力を利用して、硬X線は様々な分野で応用されています。例えば、医療分野では、人体内部のより詳細な画像診断に用いられています。また、物質の構造を原子レベルで調べることのできる強力なツールとして、物質科学や生命科学の研究にも利用されています。 さらに、硬X線は、空港の荷物検査など、私たちの身の回りのセキュリティ対策にも役立っています。硬X線を用いることで、金属などの隠された物体を容易に発見することができます。このように、硬X線は医療、科学、セキュリティなど、幅広い分野で活躍している重要な技術なのです。
その他

エネルギー転換の鍵:ガス種統一計画とは?

日本の都市部では、家庭や企業に都市ガスがエネルギー源として広く利用されています。かつて、この都市ガスは地域ごとに熱量や成分が異なっていました。例えば、ある地域では石炭から作られたガスが、別の地域では石油から作られたガスが供給されていたのです。しかし、このような状況は、ガス機器の製造や供給の面で非効率を生み出す原因となっていました。 そこで、より効率的で環境に優しいエネルギーシステムを構築するために、ガス種統一計画が推進されることになりました。この計画は、1990年代から開始されたもので、全国の都市ガスを天然ガス主体に転換していくという壮大な計画です。天然ガスは、従来の都市ガスに比べて二酸化炭素排出量が少なく、環境への負荷が低いというメリットがあります。また、熱量や成分が統一されることで、ガス機器の製造や供給が効率化され、コスト削減にもつながると期待されています。
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ヒートポンプ:熱を移動させる技術

- ヒートポンプとは?ヒートポンプは、空気や水といった身の周りの環境から熱を集め、別の場所に移動させる装置です。 身近な例でいえば、エアコンが挙げられます。夏の暑い日には、エアコンは室内の熱を吸い込み、外の空気中に放出することで部屋を涼しくします。冬の寒い日には、逆に外の空気から熱を集め、室内に送り込むことで暖房として機能します。ヒートポンプの最大の特徴は、この熱の移動を一年を通して行える点にあります。夏は冷房として、冬は暖房として、一台の装置で効率的に室内環境を快適に保つことができます。従来の暖房システムのように、燃料を燃やして熱を作り出すわけではないため、エネルギー消費を抑え、環境負荷を低減できる点も大きなメリットです。地球温暖化対策としても注目されており、近年では家庭やオフィスビルなど、様々な場所で導入が進んでいます。
原子力発電の基礎知識

エネルギーの物差し:エンタルピー

- エンタルピーとは? 物質がどれだけエネルギーを持っているかを示す指標はいくつかありますが、その中でもエンタルピーは、物質が持つエネルギーの総合的な量を表す指標として特に重要です。 物質の中には、目には見えないものの、熱や化学結合といった形でエネルギーが蓄えられています。これを内部エネルギーと呼びます。エンタルピーは、この内部エネルギーに加えて、物質が周囲の圧力に逆らって体積を占めるために必要なエネルギー(圧力と体積の積)も含めたものとして定義されます。 例えば、風船に空気を入れると膨らみますが、これは空気が内部エネルギーを持っているだけでなく、周囲の空気を押しのけて体積を広げるためのエネルギーも必要としていることを示しています。エンタルピーは、このように物質の状態が変化する際にやり取りされるエネルギーを、内部エネルギーと体積変化に伴うエネルギーの両方を考慮して、包括的に理解するための重要な概念なのです。
その他

原子力製鉄:未来への挑戦

- 原子力製鉄とは鉄は私たちの生活に欠かせない素材であり、建物、車、橋など、様々なものに使用されています。この鉄を作るプロセスを製鉄と呼びますが、従来の製鉄方法では、大量の二酸化炭素が発生するという問題がありました。そこで近年注目されているのが、原子力の力を使った新しい製鉄方法、「原子力製鉄」です。原子力製鉄とは、原子炉から生まれる莫大な熱エネルギーを、鉄鋼製造プロセスに直接活用する技術です。従来の製鉄方法では、鉄鉱石を溶かすために、石炭などの化石燃料を燃やして熱エネルギーを得ていました。この燃焼の過程で、大量の二酸化炭素が排出されてしまうことが問題視されています。一方、原子力発電は、ウランなどの核燃料を用いて熱エネルギーを生み出すため、二酸化炭素を排出しません。原子力製鉄では、この原子炉で発生する莫大な熱を、製鉄プロセスに必要な熱源として利用しようというのです。原子力製鉄が実現すれば、製鉄に伴う二酸化炭素排出量の大幅な削減が可能となります。これは、地球温暖化対策として非常に有効です。また、原子力エネルギーを有効活用する手段としても期待されています。原子力製鉄は、まだ実用化には至っていませんが、日本をはじめ世界各国で研究開発が進められています。将来的には、地球環境に優しく、持続可能な社会の実現に貢献する技術として期待されています。
放射線について

エネルギー源であるATPと放射線の影響

私たちの体は、約37兆個もの小さな部屋、すなわち細胞が集まってできています。それぞれの細胞の中では、私たちが生きていくために必要な様々な活動が行われています。細胞が活発に働くためにはエネルギーが必要ですが、そのエネルギー源となるのがATP(アデノシン三リン酸)です。 ATPは、細胞内でエネルギーを貯蔵したり、必要な時に取り出したりすることができるため、「細胞のエネルギー通貨」とも呼ばれています。 細胞は、食べ物から摂取した栄養素を分解することでエネルギーを得ています。そして、そのエネルギーを使ってATPを合成します。合成されたATPは、細胞内の様々な活動に使われます。例えば、筋肉を動かしたり、新しい細胞を作り出したり、体温を維持したりする際に、ATPが利用されます。 つまり、ATPは、私たちが生きていくために欠かせない、細胞内のエネルギーの流れを支える重要な物質なのです。
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エネルギー源としての液化天然ガス

- 液化天然ガスとは液化天然ガス(LNG)は、文字通り、天然ガスを液体にしたものです。天然ガスは、私たちの暮らしに欠かせないエネルギー源であり、都市ガスとして家庭のコンロや給湯器に、また発電の燃料として電気を作るために利用されています。しかし、天然ガスは気体の状態では体積が非常に大きいため、そのままでは遠くへ運ぶことが困難でした。この課題を解決するのが、液化という技術です。天然ガスをマイナス162度という極低温まで冷却すると、液体に変化します。驚くべきことに、液化すると体積は約600分の1まで縮小します。これは、例えば畳600枚分の広さに広がっていたものが、たった1枚分に収まってしまうほどの変化です。このようにして体積を小さくすることで、LNGは専用の船で、海を越えて遠く離れた国へも輸送することが可能になりました。LNGは、エネルギー資源を効率的に運ぶための重要な技術なのです。
その他

エネルギー安全保障とOPEC

- 石油輸出国機構とは石油輸出国機構(OPEC)は、世界の主要な産油国が集まり、石油の価格や生産量について話し合う国際機関です。1960年9月、石油の価格安定と産油国の利益を守ることを目指し、サウジアラビアとベネズエラを中心に、イラク、イラン、クウェートを加えた5カ国で設立されました。その後、加盟国は増減を繰り返しながら、現在では13カ国が加盟しています。OPECは、世界の石油埋蔵量の約7割、産出量の約4割を占めており、国際的な石油市場に大きな影響力を持っています。 OPECの活動は多岐に渡りますが、中でも重要なのが原油価格の調整です。OPECは、加盟国の生産量を調整することで、国際市場における石油の供給量をコントロールし、価格の安定化を図っています。具体的には、需要が減少し価格が下落する傾向にある場合は、生産量を減らして価格の下支えを図ります。逆に、需要が高まり価格が上昇する場合は、生産量を増やして価格の高騰を抑えるように調整を行います。 しかし、近年では、アメリカのシェールオイル増産や再生可能エネルギーの普及などにより、OPECの影響力は低下傾向にあります。また、加盟国間では、それぞれの国の思惑から、足並みが揃わないケースも出てきています。それでも、OPECは、世界経済に大きな影響を与える存在であることに変わりはなく、その動向は今後も注目されます。
その他

LNG冷熱発電:エネルギーの有効活用

- はじめに 都市ガスや発電の燃料として私たちの暮らしに欠かせないものとなっているのが、液化天然ガス(LNG)です。LNGは、天然ガスをマイナス160℃という極低温まで冷却し、液体にしたものです。液体にすることで体積が約600分の1まで小さくなるため、効率的に輸送・貯蔵することができます。 LNGは利用する際に気体に戻す必要がありますが、この気化の過程で周囲から大量の熱を奪うという特性があります。 LNG冷熱発電は、この気化の際に発生する冷熱エネルギーを利用した発電方法です。 従来の発電方法では、燃料を燃焼させて発生する熱エネルギーを利用していましたが、LNG冷熱発電は、気化熱という自然の力を利用するため、エネルギー効率が高く、環境負荷の低い発電方法として注目されています。
その他

資源開発の鍵、生産分与契約とは

- 生産分与契約の概要生産分与契約(PS契約)は、1960年代からインドネシアで普及し始めた、石油や天然ガスといった資源開発における契約形態の一つです。従来の契約とは異なり、生産された資源そのものを資源国と開発企業で直接分配する点が、大きな特徴として挙げられます。この契約形態では、開発企業は資源国の作業請負人としての役割を担います。つまり、資金調達から探査、開発、そして生産に至るまで、資源開発の全工程を開発企業が責任を持って行うのです。その代わりに、開発企業は生産された資源から開発費用を回収し、残りの資源を資源国と取り決めた割合で分配します。従来の契約形態では、利益を分配するのが一般的でしたが、PS契約では利益ではなく、生産物そのものを分配するという点が大きく異なります。 この契約形態は、資源国にとっては、自ら資金や技術力を投入しなくても資源開発を進め、収益を得られるというメリットがあります。一方、開発企業にとっては、初期投資が大きくなるものの、開発が成功すれば、長期間にわたって安定的に資源を確保できるというメリットがあります。このように、PS契約は資源国と開発企業の双方にとってメリットがある契約形態として、現在では世界各国で広く採用されています。
その他

エネルギーの基礎: 一次エネルギー供給量とは?

私たちの暮らしや経済活動を陰ながら支えているエネルギー。その供給源は、石油や石炭といった化石燃料、原子力、太陽光や風力といった再生可能エネルギーなど、多岐にわたります。これらの多様なエネルギー源から、ある一定期間にどれだけのエネルギーが供給されたのかを示す指標が「一次エネルギー供給量」です。 この指標は、一年間の合計量で表されることが一般的で、エネルギーの需給状況を把握する上で欠かせない重要なデータとなります。 例えば、ある年の一次エネルギー供給量が前年と比べて増加していた場合、経済活動の活発化や国民生活の水準向上によってエネルギー需要が高まったと推測できます。逆に、減少していた場合は、省エネルギーの取り組みが進展した、もしくは経済活動が停滞したなどの要因が考えられます。 一次エネルギー供給量の構成比をエネルギー源別に見ると、それぞれのエネルギー源への依存度や、エネルギー政策の成果などを分析することができます。近年、地球温暖化対策として、二酸化炭素排出量の少ない再生可能エネルギーの導入が推進されています。一次エネルギー供給量における再生可能エネルギーの割合が増加しているかどうかも、重要な注目点と言えるでしょう。
その他

エネルギー貯蔵の未来:リチウムイオン電池

リチウムイオン電池は、現代社会に欠かせない小型でパワフルな電源です。携帯電話やノートパソコンから電気自動車まで、様々な機器で利用されています。 その名の通り、リチウムイオン電池は「リチウムイオン」という物質の動きを巧みに利用して電気を蓄えたり、放電したりします。電池内部には、プラスの電気を帯びた「正極」とマイナスの電気を帯びた「負極」の二つの電極が存在し、その間をリチウムイオンが移動することで電気が発生します。 電池への充電は、外部からエネルギーを与えてリチウムイオンを負極から正極へ移動させる行為と言えます。充電が完了した電池は、多数のリチウムイオンが正極に蓄えられた状態となり、大きなエネルギーを秘めていると言えます。 一方、電池の使用は、蓄えられたリチウムイオンが正極から負極へと自然に移動することで電気を発生させます。この時、リチウムイオンは電解質と呼ばれる液体の中を移動し、電子回路を通って外部に電気を供給します。 リチウムイオン電池は、従来の電池と比較して小型軽量でありながら、高い電圧と大きな容量を実現できるため、様々な分野で活躍しています。しかし、発火の危険性など課題も残っており、より安全な電池の開発が期待されています。
放射線について

エネルギー源であるアデノシン三リン酸

- 細胞のエネルギー通貨アデノシン三リン酸 生命活動の根幹を支えるエネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)は、しばしば「細胞のエネルギー通貨」と例えられます。私たち人間を含め、地球上のあらゆる生物は、活動に必要なエネルギーを得るために、食物を摂取しています。しかし、食物から得られたエネルギーは、直接利用されるのではなく、一度ATPという形に変換されます。 この過程は、銀行にお金を預け入れることに似ています。お金をそのまま持ち歩くのではなく、銀行に預けておくことで、必要な時に必要なだけ引き出して使うことができます。同様に、細胞もエネルギーをATPという形で貯蔵しておくことで、必要な時に必要なだけエネルギーを取り出して、様々な生命活動に利用することができるのです。 ATPは、アデニンという物質とリボースという糖、そして三つのリン酸が結合した構造をしています。エネルギーが必要になると、ATPの末端にあるリン酸が一つ外れて、アデノシン二リン酸(ADP)に変換されます。この時、リン酸結合が切断される際に放出されるエネルギーが、細胞の様々な活動に利用されるのです。筋肉の収縮や神経伝達、物質の合成など、私たちが生きていく上で必要なあらゆる活動は、ATPから得られるエネルギーによって支えられています。