食品照射と安全性:エームス試験で見る
- エームス試験とは
エームス試験は、ある物質が遺伝子の突然変異を引き起こす可能性(変異原性)を評価するための試験です。
私たちの遺伝子の本体であるDNAは、塩基と呼ばれる物質の配列によって遺伝情報を記録しています。しかし、放射線や特定の化学物質はこの塩基配列を傷つける可能性があり、その結果、細胞の正常な働きを阻害する可能性があります。
エームス試験では、ヒスチジンというアミノ酸を自ら作れない変異体を持つネズミチフス菌を用います。この菌は、通常、ヒスチジンを含んだ培地でなければ生育できません。
試験では、この菌を被験物質と混ぜて培養します。もし被験物質に変異原性があれば、菌のDNA配列に変化が起こり、ヒスチジンを再び合成できるようになることがあります。この変化を復帰突然変異と呼びます。復帰突然変異が起こると、菌はヒスチジンを含まない培地でも生育できるようになり、コロニーと呼ばれる集団を作ります。
エームス試験では、このコロニー数を数えることで、被験物質の変異原性を評価します。コロニー数が多ければ多いほど、被験物質の変異原性が高いと判断されます。
エームス試験は、簡便で迅速な試験であることから、医薬品、食品添加物、農薬、化粧品などの安全性評価に広く利用されています。