ガス冷却炉

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マグノックス炉:イギリス生まれの原子炉

- マグノックス炉とはマグノックス炉は、イギリスで開発された原子炉の一種です。原子炉は大きく分けて、炉心の核分裂反応を制御するための減速材と、核燃料を包む被覆材の種類によって分類されます。マグノックス炉は、減速材に黒鉛、被覆材にはマグノックスと呼ばれるマグネシウム合金を使用していることが最大の特徴です。このマグノックスという名前は、「酸化しないマグネシウム」という意味の英語表現「Magnox」に由来しています。マグネシウムは本来、空気中で容易に酸化してしまう物質ですが、マグノックスはアルミニウムやベリリウムなどを添加することで、酸化を防ぐ性質を高めた合金です。マグノックス炉は、世界で初めて商業用発電に成功した原子炉である改良型コルダーホール炉としても知られています。1956年にイギリスで運転を開始したコルダーホール炉は、その後の原子力発電所の発展に大きく貢献しました。日本では、日本原子力発電の東海炉1号炉がマグノックス炉にあたり、1966年から1998年まで運転されていました。東海炉は、日本における原子力発電の黎明期を支えた重要な原子炉と言えるでしょう。マグノックス炉は、現在では新型の原子炉に比べて熱効率が低いことなどから、新規の建設は行われていません。しかし、その歴史的な意義や技術的な特徴から、原子力開発の重要な一歩として、現在も語り継がれています。
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重水減速炭酸ガス冷却型炉:幻の原子炉

原子力発電所では、ウランの核分裂反応を利用して熱エネルギーを生み出し、発電を行っています。この核分裂反応を効率的に進めるためには、中性子の速度を適切に制御することが非常に重要です。中性子は原子核を構成する粒子のひとつで、電気的に中性であるため、他の物質と反応しにくい性質を持っています。しかし、中性子の速度が遅くなると、ウランの原子核に捕獲されやすくなり、核分裂反応を引き起こしやすくなります。 原子炉の中には、核分裂反応を制御するための様々な工夫が凝らされています。その中でも、中性子を減速させる役割を担うのが減速材、そして発生した熱を運び出す役割を担うのが冷却材です。 重水減速炭酸ガス冷却型原子炉(HWGCR)は、減速材として重水、冷却材として炭酸ガスを用いた原子炉です。重水は通常の軽水に比べて中性子の減速能力に優れており、天然ウラン燃料でも効率的に核分裂反応を持続させることができます。一方、炭酸ガスは化学的に安定で高温高圧に耐える性質を持つため、冷却材として適しています。このように、HWGCRは重水と炭酸ガス、それぞれの物質の利点を活かすことで、高い安全性と効率性を両立させた原子炉と言えます。
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原子力発電の隠れた逸材:ガス冷却炉

原子力発電所の中心である原子炉では、核分裂反応によって膨大な熱が生み出されます。この熱を効率的に取り除き、発電に利用するために、冷却材が重要な役割を担っています。多くの原子炉では水などの液体が冷却材として使われていますが、中には一風変わった方法として気体を冷却材に使う原子炉も存在します。それが、ガス冷却炉と呼ばれるタイプの原子炉です。 ガス冷却炉では、主に二酸化炭素やヘリウムが冷却材として使われています。これらの気体は、液体と比べて熱を伝える能力は低いものの、いくつかの利点があります。まず、二酸化炭素やヘリウムは化学的に安定しているため、原子炉内部の構造材と反応しにくく、炉の寿命を長く保つことにつながります。また、気体は液体と比べて密度が低いため、ポンプで循環させる際に必要なエネルギーが少なくて済むという利点もあります。さらに、万が一冷却材が漏洩した場合でも、気体は液体のように周囲に広がりにくいため、事故の影響を小さく抑えることが期待できます。 ガス冷却炉は、イギリスやフランスなどで開発が進められてきましたが、近年では日本でも高温ガス炉と呼ばれる、より安全性の高い新型炉の研究開発が進められています。高温ガス炉は、従来のガス冷却炉よりもさらに高い温度で運転することができ、発電効率の向上や水素製造への応用などが期待されています。
原子力発電の基礎知識

ガス冷却高速炉:未来の原子力エネルギー

- ガス冷却炉とは原子力発電所では、ウランなどの核分裂によって莫大な熱エネルギーが生まれます。この熱を取り出してタービンを回し、電気を作り出すためには、炉の中で発生した熱を効率的に運ぶ役割をする「冷却材」が欠かせません。 冷却材として広く使われているのは水ですが、気体を用いる原子炉も存在します。それがガス冷却炉です。ガス冷却炉では、空気や二酸化炭素、ヘリウムなどが冷却材として利用されます。これらの気体は、水に比べて熱を伝える能力(熱伝達率)は低いものの、高温でも圧力が上がりにくいという利点があります。なかでもヘリウムは、中性子を吸収しにくく、化学的に安定しているため、特に高温ガス炉の冷却材として適しています。高温ガス炉は、他の原子炉と比べてより高い温度で運転することができ、熱効率の向上や、水素製造などへの応用が期待されています。しかし、ガス冷却炉は水冷却炉と比べて、冷却材の密度が低いため、大型化が必要になるという側面もあります。
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ウィンズケール炉:解体から学ぶ未来

- 革新的な原子炉の誕生1962年、英国のウィンズケール原子力研究所に、「ウィンズケール改良型ガス冷却炉」、通称WAGRが建設されました。この原子炉は、36MWeの電力を供給する能力を持つ、当時としては画期的な原子炉でした。WAGRは、従来の原子炉の設計を大きく進化させた「改良型ガス冷却炉」の原型炉として開発され、その後の原子力発電の進歩に大きな影響を与えました。従来の原子炉では、中性子を減速させる減速材と、原子炉の炉心を冷却する冷却材に、それぞれ水を使用するのが一般的でした。しかし、改良型ガス冷却炉であるWAGRでは、減速材に黒鉛、冷却材に二酸化炭素ガスを採用した点が、大きな特徴として挙げられます。この新しい冷却方式は、従来の水冷却方式と比較して、より高い温度で運転することが可能となり、その結果、発電効率の向上に繋がりました。また、二酸化炭素ガスは水と比べて中性子を吸収しにくいため、より多くの neutron を核分裂反応に利用することができ、燃料の燃焼効率も向上しました。WAGRは、これらの革新的な技術を採用することにより、安全性と効率性を兼ね備えた原子炉として、その後の原子力発電所の設計に大きな影響を与えました。WAGRで得られた貴重なデータや運転経験は、その後の改良型ガス冷却炉の開発に活かされ、英国をはじめ世界各国で原子力発電が普及していく礎を築きました。
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原子力発電の心臓部:ループ型原子炉

原子力発電所の中枢を担う原子炉は、その構造によって大きく二つに分類されます。一つはループ型原子炉、もう一つはタンク型原子炉と呼ばれています。この分類は、原子炉冷却材、つまり原子炉内で発生した熱を運ぶための物質の循環方式の違いに基づいています。 ループ型原子炉は、原子炉圧力容器と呼ばれる頑丈な容器の中で核分裂反応を起こし、そこで発生した熱を冷却材へと伝えます。この冷却材は配管によって原子炉の外にある蒸気発生器へと送られ、そこで熱交換によって水を沸騰させて蒸気を発生させます。発生した蒸気はタービンを回し、発電機を駆動する仕組みです。ループ型原子炉は、冷却材が循環する経路がループ状になっていることからその名がつけられました。 一方、タンク型原子炉は、原子炉圧力容器の中に原子炉の主要な機器と冷却材をすべて収納する構造となっています。原子炉内で発生した熱は、冷却材を自然循環またはポンプによって循環させることで蒸気発生器へと伝えられます。ループ型原子炉に比べて構造がシンプルであることが特徴です。 このように、原子炉には大きく分けて二つの型が存在し、それぞれに特徴があります。原子力発電所の設計や運用においては、これらの特徴を理解した上で最適な型を選択することが重要となります。