ストロンチウム90

核燃料

原子力発電の基礎:FP(核分裂生成物)とは?

原子力発電所の中心にある原子炉では、ウランやプルトニウムなどの重い原子核が中性子を吸収することによって核分裂反応を起こします。この核分裂反応は、莫大なエネルギーを放出すると同時に、元の原子核よりも軽い新しい原子核を生成します。これらの新しい原子核は、核分裂生成物(FP)と呼ばれます。 FPは、原子力発電の過程で必ず発生する副産物であり、その種類は数百種類にも及びます。 FPには放射性を持つものも多いため、その性状と管理は、原子力発電の安全性と持続可能性を考える上で非常に重要な要素となります。 FPは、原子炉の運転期間中、燃料集合体の中に蓄積されていきます。FPの中には、中性子を吸収しやすいものも含まれており、これが核分裂反応を阻害する可能性もあります。そのため、一定期間運転した後には、燃料集合体を新しいものと交換する必要があります。 使用済み燃料の中には、FP以外にも、ウランやプルトニウムなどの放射性物質が含まれています。これらの物質は、適切に処理・処分する必要があります。 現在、使用済み燃料の再処理技術や最終処分方法の研究開発が進められています。これらの技術開発は、原子力発電の持続可能性を確保する上で非常に重要です。
放射線について

ストロンチウム90: 原子力と環境を考える

- ストロンチウム90とはストロンチウム90は、私たちの身の回りにも存在するストロンチウムという元素の一種です。ストロンチウム自体は、土壌や岩石、海水中に広く分布しており、私たちの体内にもごく微量ながら存在しています。しかし、ストロンチウム90は、通常のストロンチウムとは異なり、原子核が不安定な状態にあります。原子核が不安定な物質は、自ら放射線を出して安定になろうとする性質を持っており、このような物質を放射性同位体と呼びます。ストロンチウム90も放射性同位体の一つであり、ベータ線と呼ばれる放射線を出しながら別の元素であるイットリウム90へと変化していきます。 このような放射性物質の崩壊は、一定の時間で元の量の半分になるという性質があり、これを半減期と呼びます。ストロンチウム90の半減期は約29年で、これはストロンチウム90が100個あった場合、29年後には50個に、さらに29年後には25個になることを意味します。ストロンチウム90から変化したイットリウム90もまた放射性同位体であり、約64時間の半減期でベータ線を放出してジルコニウム90へと変化します。ジルコニウム90は安定した元素であるため、これ以上の放射性崩壊は起こりません。このように、ストロンチウム90はベータ崩壊を繰り返すことによって、最終的に安定なジルコニウム90へと変化していくのです。