プルトニウム239

原子力施設

夢のエネルギーへ、核融合と核分裂の融合

未来のエネルギー源として期待される核融合。太陽が莫大なエネルギーを生み出す仕組みと同じ原理であり、その実現は人類の夢でもあります。核融合は、核分裂のように放射性廃棄物を大量に排出することが無く、安全性も高いという利点があります。しかし、実用化には解決すべき課題も残されています。 その一つが、核融合反応を起こすために必要なエネルギーの量です。核融合は非常に高い温度と圧力下でなければ起こらず、現状では投入エネルギーに対して得られるエネルギー量が十分ではありません。この課題を克服するために、近年注目されているのが「核融合−核分裂ハイブリッド炉」です。 これは、核融合炉だけでは達成が難しいエネルギー増倍率向上を目指し、既存の核分裂技術を組み合わせた革新的なシステムです。具体的には、核融合反応で発生する中性子を核分裂反応の燃料に利用します。核融合反応で放出される高速中性子は、核分裂反応の効率を飛躍的に高めることができると期待されています。 このハイブリッド炉は、核融合と核分裂、それぞれの技術が持つ利点を最大限に活かすことで、より効率的なエネルギー創出を目指します。将来的には、核融合反応の安定稼働に必要なトリチウムの増殖にも応用できる可能性を秘めており、エネルギー問題解決の切り札として期待されています。
原子力発電の基礎知識

原子力発電の基礎: 中性子捕獲とは

- 中性子捕獲とは何か原子力発電において、原子核に中性子を吸収させる「中性子捕獲」という現象は重要な役割を担っています。原子核は陽子と中性子で構成されていますが、中性子捕獲とは、外部から飛んできた中性子が原子核に飛び込む現象を指します。原子核は中性子を捕獲すると、不安定な状態となり、余分なエネルギーを電磁波の一種であるガンマ線を放出して安定になろうとします。この一連の反応を(n、γ)反応と呼びます。中性子を捕獲した原子核は、質量数が1だけ増加します。これは、中性子の質量がおよそ1原子質量単位であるためです。一方、原子番号は変化しません。原子番号は原子核内の陽子の数を表しますが、中性子は電荷を持たないため、陽子の数に影響を与えないためです。中性子捕獲は、原子力発電のエネルギー生成過程において重要な役割を果たすだけでなく、放射性同位元素の生成にも利用されています。
原子力施設

エネルギーの未来を切り開く高速炉

- 高速炉とは高速炉とは、高速中性子炉の略称で、原子核分裂を起こす際に飛び出す中性子の速度を落とさずに利用する原子炉のことです。現在主流となっている原子炉は軽水炉と呼ばれ、水によって中性子の速度を遅くして反応を制御しています。一方、高速炉では中性子の速度を落とすことなく、高速の状態で核分裂反応を起こすのが大きな特徴です。高速で運動している中性子を用いることで、ウラン燃料をより効率的に利用できるようになります。軽水炉では利用できないウラン資源も活用できるため、資源の有効利用という観点からも期待されています。さらに、高速炉は、プルトニウムを燃料として利用し、消費することも可能です。プルトニウムはウラン燃料の使用済み燃料から取り出すことができ、高速炉で利用することで、エネルギー資源の有効活用と放射性廃棄物の減容化を同時に実現できる可能性を秘めています。高速炉は、エネルギー効率の向上、資源の有効活用、廃棄物処理の効率化など、多くの利点を持つ次世代の原子力発電技術として期待されています。しかし、実用化には、技術的な課題や安全性の確保など、解決すべき課題も残されています。
核燃料

原子力発電における増殖:燃料が増えるしくみ

生物の世界では、細胞分裂などによって同じ種類の生き物が数を増やすことを増殖と言います。原子力発電の世界でも、これと似た現象が起こることがあります。原子力発電所で使われる燃料には、ウランやプルトニウムといった、核分裂を起こすことができる物質が含まれています。これらの物質は、発電のために核分裂を起こしていくと、だんだんと減っていくように思われます。しかし実際には、運転中にこれらの核分裂性物質が増える場合があるのです。これを、原子力における増殖と呼びます。 増殖は、主にウラン238という物質が、核分裂の際に発生する中性子を吸収することによって起こります。ウラン238は、中性子を吸収すると、いくつかの段階を経てプルトニウム239という物質に変化します。このプルトニウム239も、ウランと同じように核分裂を起こすことができる物質です。つまり、ウラン238が中性子を吸収することによって、核燃料となる物質が増えることになるのです。原子力発電において増殖は、核燃料をより効率的に利用できる可能性を秘めた現象として、現在も研究が進められています。
原子力の安全

原子力発電の要: 臨界質量とは

原子力発電は、物質の根源的な性質を利用して膨大なエネルギーを生み出す技術です。その中心となるのが核分裂反応と呼ばれる現象です。ウランやプルトニウムといった、原子核が分裂しやすい性質を持つ物質に中性子と呼ばれる粒子が衝突すると、原子核は不安定な状態になり、二つ以上の原子核に分裂します。これが核分裂です。 核分裂の際に特筆すべきは、単に原子核が分裂するだけでなく、新たな中性子が複数放出される点です。この放出された中性子が、周囲の他の原子核に衝突すると、さらに核分裂が引き起こされます。これが繰り返されることで、莫大な数の原子核が連鎖的に分裂し、膨大なエネルギーが放出されるのです。この現象こそが、核分裂連鎖反応です。 臨界質量とは、この核分裂連鎖反応を持続的に起こすために必要な、核分裂性物質の最小量を指します。核分裂性物質の量が臨界質量に達しない場合、放出された中性子は系外に逃げてしまい、連鎖反応は持続しません。しかし、核分裂性物質の量が臨界質量以上になると、放出された中性子は高確率で他の原子核と衝突し、連鎖反応が持続するようになります。原子力発電所では、この臨界質量を厳密に制御することで、安全かつ安定的にエネルギーを生み出しているのです。