ベルギー

原子力施設

次世代原子力システム:MYRRHAの可能性

- MYRRHAとはMYRRHA(ミーラ)は、ベルギーの研究機関SCK・CENが中心となって開発を進めている、次世代の原子力システムです。正式名称は「多目的加速器駆動核変換システム」といい、英語の頭文字を取ってADSとも呼ばれます。 従来の原子炉は、ウランなどの核分裂しやすい物質を核燃料として利用し、その核分裂反応によって生じる熱エネルギーを用いて発電します。一方、MYRRHAは、加速器という装置を用いて陽子を光速近くまで加速し、重金属の標的に衝突させることで中性子を発生させます。この中性子を用いて核分裂反応を持続させるのが、加速器駆動システムと呼ばれる所以です。 MYRRHAは、この加速器駆動システムを用いることで、従来の原子炉では利用が難しかったトリウムや劣化ウランなども燃料として使用することが可能となります。また、運転中に発生する高レベル放射性廃棄物の量を大幅に減らし、さらにその毒性を短期間化することも期待されています。 MYRRHAは、世界に先駆けて設計が進められている実験炉レベルのADSで、その出力は40MWにも達します。将来的には、この技術を応用した商用炉の建設も期待されており、エネルギー問題や環境問題の解決に貢献することが期待されています。
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地下深くに眠る研究施設:HADES

- 地下実験施設HADESとはベルギーの原子力センターが建設した地下実験施設HADESは、原子力発電に伴い発生する高レベル放射性廃棄物を、地下深くの粘土層に安全に処分する方法を研究するための施設です。1980年代から建設が進められ、地下230メートルという深さに主要な実験場が設けられています。この実験場は、直径2.65メートルの立坑と、そこから水平方向に伸びる直径3.5メートルの横抗回廊で構成されています。この地下空間を利用して、様々な研究活動が行われています。まず、処分場の候補地として選ばれた粘土層の特性を詳しく調べる研究が行われています。具体的には、粘土層の強度や透水性、そして放射性物質を吸着する能力などが調べられています。次に、実際に放射性廃棄物を粘土層に埋め込むための処分場の建設技術に関する研究も進められています。例えば、地下深くまで安全にトンネルを掘削する技術や、放射性廃棄物を安定して保管するための容器の開発などが挙げられます。さらに、万が一放射性物質が容器から漏洩した場合に備え、粘土層の中をどのように放射性物質が拡散していくのかを予測する研究も行われています。これらの研究を通して、HADESは高レベル放射性廃棄物の地層処分を安全かつ確実に実施するために必要なデータを取得し、その実現可能性を評価するという重要な役割を担っているのです。