海洋投棄:過去と現在
- 海洋投棄とは海洋投棄とは、発生した放射性廃棄物を海に廃棄する方法です。具体的には、放射性物質を含む廃棄物をドラム缶などの容器に密閉したり、セメントなどで固めたりした後に、海底に沈める行為を指します。かつては、広大な海の持つ浄化能力に期待し、陸上での処分と比べて環境への影響は少ないと考えられていました。陸上に比べて人が住んでおらず、広大な面積を持つ海洋は、放射性廃棄物を希釈し、その影響を薄めると考えられていたためです。しかし、海洋は地球全体の生態系にとって重要な役割を担っており、一度汚染されると回復が難しいという側面も持ち合わせています。そのため、海洋投棄によって海洋環境や生態系への悪影響が懸念されるようになりました。また、放射性物質は長期間にわたって毒性を持ち続けるため、将来世代への影響も考慮する必要があります。これらの懸念から、国際社会では海洋投棄に対する規制が強化されてきました。1972年には「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」(ロンドン条約)が採択され、1996年には放射性廃棄物を含むすべての廃棄物の海洋投棄を原則禁止する議定書が採択されました。現在では、海洋投棄は国際的に禁止されている廃棄物処理方法となっています。