保守保全

原子力の安全

原子力発電におけるリスク情報に基づくアプローチ

- リスク情報に基づくアプローチとは 原子力発電所の安全確保において、従来の手法は、考えられる最悪の事故を想定し、その発生を未然に防ぐことを重視してきました。これは、万が一にも深刻な事故が起きることを避けるためには必要な考え方でした。しかし、この方法では、実際に発生する可能性の低い事故への対策にも多くの資源が割かれることになります。 そこで近年注目されているのが、「リスク情報に基づくアプローチ(RIA)」です。RIAでは、起こりうるあらゆる事故を想定し、それぞれの発生確率と、事故が起きた場合の影響の大きさを数値で評価します。例えば、小さな故障が原因で起きる事故は発生確率は高いものの、影響は限定的かもしれません。一方、大規模な自然災害による事故は発生確率は低いものの、ひとたび発生すると甚大な被害をもたらす可能性があります。 RIAは、このようにそれぞれの事故のリスクを定量的に分析することで、限られた資源をより効果的に活用し、社会全体にとって最適な安全対策を選択・実施することを可能にします。具体的には、発生確率の高い事故に対しては、その発生を抑制するための対策を重点的に実施します。一方、発生確率は低くても影響の大きい事故に対しては、その影響を軽減するための対策を優先的に実施します。このように、リスクに基づいた合理的な安全対策を実施することで、より高いレベルの安全性を確保できると考えられています。