
原子炉の安全を守る:残留熱除去系の役割
原子力発電所では、ウランなどの核燃料が核分裂反応を起こすことで莫大なエネルギーを生み出し、発電を行っています。原子炉運転中は、この核分裂反応によって非常に高い熱が発生します。発電のために原子炉の運転を停止した後でも、核燃料は放射線を出しながら崩壊を続けるため、発熱は完全には止まりません。これはちょうど、熱いストーブを消しても、しばらくの間は熱を持っているのと同じような状態です。この、原子炉停止後に燃料から発生し続ける熱を「崩壊熱」と呼びます。
崩壊熱に加えて、原子炉の運転停止後には、原子炉内の機器や配管などからも熱が発生します。これは、運転中に高温になった機器などが、徐々に冷めていく過程で周囲に熱を放出するためです。このような、機器などから発生する熱を「顕熱」と呼びます。
崩壊熱と顕熱によって、原子炉停止後も原子炉内には熱が蓄積され続けるため、適切に熱を除去しないと原子炉内の温度が上昇し、燃料の損傷や炉心の溶融といった深刻な事故につながる可能性があります。そこで重要な役割を担うのが、「残留熱除去系」と呼ばれるシステムです。残留熱除去系は、原子炉停止後に発生する崩壊熱や顕熱を安全に除去し、原子炉を冷却状態に保つための重要な安全設備です。原子炉の安全を確保するため、残留熱除去系は複数系統が設置されており、多重化によって信頼性を高めています。