医療応用

放射線について

放射免疫分析:微量物質を測る精密な目

- 放射線で微量物質を捉える私たちの体内で、ごくわずかな量でも大きな役割を果たす物質が存在します。 例えば、ホルモンはその代表的な例です。 ホルモンは、わずか数マイクログラムの変化でも、体の成長や代謝、さらには感情にまで影響を及ぼすことがあります。 このような微量物質を正確に測定することは、病気の診断や治療効果の判定、そして新薬の開発などに不可欠です。では、どのようにして、このような微量な物質を正確に捉えることができるのでしょうか? その答えの一つが、放射線を用いた測定方法である「放射免疫分析法」です。 この方法は、放射性同位元素で標識した物質と、測定対象となる物質との結合の強さを利用して、目的の物質の量を測定します。 放射性同位元素は、ごく微量でも検出できるため、従来の方法では測定が困難であった微量物質の定量が可能になりました。 放射免疫分析法は、ホルモンをはじめ、様々な微量物質の測定に応用され、医療分野の進歩に大きく貢献してきました。 例えば、甲状腺ホルモンの測定は、甲状腺機能の診断に欠かせないものとなっており、また、がん細胞が出す特定の物質を検出することで、がんの早期発見にも役立っています。このように、放射線は、目に見えない微量物質を捉え、私たちの健康を守るために役立っているのです。
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ガンマナイフ治療:脳疾患に有効な放射線治療

- ガンマナイフ治療とはガンマナイフ治療とは、頭部に集中的にガンマ線を照射することで、脳腫瘍などの病気を治療する方法です。 手術のように頭蓋骨を開く必要がなく、身体への負担が少ないのが大きな特徴です。では、なぜガンマ線を使うと、身体への負担を軽減できるのでしょうか? ガンマ線は、光と同じ電磁波の一種ですが、 エネルギーが高く、組織を透過する力も強いという性質を持っています。 このため、皮膚や骨を傷つけることなく、病巣にピンポイントで照射することが可能なのです。治療では、患者さんの頭に専用の固定具を取り付け、頭部の位置を正確に固定します。 その後、CTやMRIなどの画像診断装置を用いて、病変の位置や形状を正確に把握します。 得られた情報に基づいて、コンピュータが最適な照射計画を立て、200本以上のガンマ線ビームを病巣に集中させます。ガンマナイフ治療は、 従来の手術に比べて、入院期間が短く、日常生活への復帰も早いというメリットがあります。 また、 脳深部の病変にも適用可能であり、多くの患者さんにとって福音となる治療法と言えるでしょう。
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がん治療におけるRALS:遠隔操作で高精度な放射線治療

- 遠隔操作式後重点法治療装置(RALS)とは遠隔操作式後重点法治療装置(RALS)は、放射線を利用してがん細胞を死滅させる治療装置です。手術でがんを取り除く外科療法、抗がん剤を用いる化学療法と並んで、がん治療において重要な役割を担っています。従来の放射線治療では、体の外から放射線を照射するため、周囲の正常な細胞にも影響が及ぶ可能性がありました。しかし、RALSは放射線を出す小さな線源を細い管を通して体内の治療したい場所に直接挿入します。これにより、がん細胞を狙い撃ちするようにピンポイントに放射線を照射することが可能となり、周囲の正常な細胞への影響を最小限に抑えることができます。治療は、まず患者さんの体内にあらかじめアプリケーターと呼ばれる器具を留置します。その後、RALS本体から線源をアプリケーターを通して送り込み、がんに放射線を照射します。線源は治療が終わるとRALS本体に戻されるため、治療中以外は患者さんの体内に放射線が残り続けることはありません。RALSを用いた治療は、子宮頸がん、子宮体がん、前立腺がんなど、体の深部にできたがんの治療に特に有効とされています。また、従来の放射線治療に比べて治療期間が短く、入院期間の短縮も見込めます。
その他

直線加速器: 粒子を加速させる技術

直線加速器とは 直線加速器とは、読んで字のごとく、電子やイオンといった電気を帯びた粒子をまっすぐな経路に沿って加速し、高エネルギー状態にする装置です。「リニアック」という別名でも知られています。 その仕組みは、電場を用いて荷電粒子を加速するという、一見単純なものです。しかし、粒子を光の速度に近い速度まで加速し、原子核物理学や素粒子物理学といった分野で利用できるレベルの高いエネルギーを達成するには、高度な技術と複雑な構造が必要となります。 直線加速器の基本的な構造は、ドリフトチューブと呼ばれる円筒形の電極が、一定の間隔で配置されたものです。荷電粒子は、これらのドリフトチューブの間を通り抜けながら、高周波の電場によって加速されます。ドリフトチューブの長さは、粒子の速度に合わせて精密に調整されており、これにより粒子は常に加速電場を受け続けることができます。 直線加速器は、医療分野では、がん治療に用いられる放射線治療などに利用されています。また、物質の構造や性質を調べる研究や、新材料の開発など、様々な分野で活躍しています。
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骨の健康を知る:骨塩量測定のススメ

- 骨粗しょう症とは骨粗しょう症は、骨の強度が低下し、骨折しやすくなる病気です。 私たちの骨は、常に古い骨が壊される骨吸収と、新しい骨が作られる骨形成を繰り返すことで、一定の強さを保っています。通常、骨の形成と吸収のバランスはとれていますが、加齢などによりこのバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回るようになると、骨の量が減ってしまいます。 骨の量が減ると骨の中がスカスカの状態になり、骨が脆くなってしまいます。その結果、わずかな衝撃でも骨折しやすくなるのが骨粗しょう症です。 骨粗しょう症は、骨が脆くなるまで自覚症状がないことが多いため、知らないうちに進行しているケースが少なくありません。特に高齢者や閉経後の女性に多く見られますが、若い世代でも注意が必要です。 骨粗しょう症を予防するためには、バランスの取れた食事、適度な運動、日光浴など、日々の生活習慣を見直すことが大切です。
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回転照射法:がん治療における精密照射

- 回転照射法とは回転照射法は、がん細胞に放射線を照射して死滅させる治療法である放射線治療において、画期的な技術として知られています。がん治療においては、がん病巣を効果的に攻撃すると同時に、周りの正常な細胞への影響を最小限に抑えることが非常に重要です。回転照射法は、まさにこの精密な照射を実現する技術と言えるでしょう。従来の放射線治療では、放射線を照射する装置は固定されていました。しかし、回転照射法では、放射線発生装置が治療台を中心軸として回転します。これにより、様々な角度から放射線を照射することが可能になります。この回転により、がん病巣に対しては常に集中して放射線を照射し続ける一方で、周囲の正常な細胞への照射時間は短縮されます。結果として、がん細胞への高い治療効果を保ちつつ、正常細胞へのダメージを大幅に軽減することが可能になるのです。回転照射法は、特に体内の深い場所に位置するがんや、重要な臓器に近接したがんの治療に有効です。従来の方法では、正常組織への影響が大きいため、十分な量の放射線を照射することが困難なケースでも、回転照射法を用いることで、より効果的な治療が行える可能性があります。
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開創照射:がん治療における新たな選択肢

- 開創照射とは開創照射とは、外科手術の最中に、がん病巣に対して集中的に放射線を照射する治療法です。一般的に「術中照射」とも呼ばれ、近年、がん治療の新たな選択肢として注目されています。従来の放射線治療では、体の外から病巣に向けて放射線を照射するため、どうしても周囲の正常な組織にも影響が及んでしまう可能性がありました。しかし、開創照射では、手術で患部を切開した状態で、腫瘍に直接照射筒を挿入します。これにより、ピンポイントで放射線を照射することができるため、周囲の正常な組織への影響を最小限に抑えつつ、高い治療効果を期待することができます。開創照射は、特に進行したがんや、手術で取り切ることが難しい場所にできたがんに対して有効と考えられています。また、従来の放射線治療と比較して、治療期間が短縮されることも大きなメリットです。開創照射は、まだ新しい治療法であり、保険適用外の医療機関もあるため、治療を受ける際には事前に医療機関に相談する必要があります。
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脳腫瘍治療における放射線の役割

- 脳腫瘍に対する放射線治療とは放射線治療は、目に見えないエネルギーの線を用いてがん細胞を死滅させる、あるいは増殖を抑える治療法です。 脳腫瘍の場合、この放射線は頭部の外から照射される場合と、手術中に腫瘍に直接照射される場合があります。脳腫瘍に対する放射線治療は、大きく分けて二つの目的で行われます。一つは、手術で腫瘍を完全に取り除くことが難しい場合に、腫瘍を小さくして症状を和らげるためです。もう一つは、手術や化学療法後に残っている可能性のあるわずかながん細胞を死滅させ、再発を予防するためです。放射線治療は、脳腫瘍の種類や大きさ、位置、そして患者さんの状態によって、他の治療法と組み合わせて行われることが多いです。例えば、手術で腫瘍を可能な限り取り除いた後に、残っているがん細胞を死滅させるために放射線治療を行うことがあります。また、化学療法と併用することで、治療効果を高めることもあります。放射線治療は、吐き気や脱毛、疲労感などの副作用が現れる可能性があります。しかし、これらの副作用はほとんどの場合、治療の終了後には消失します。 また、近年では、放射線の照射範囲を絞り込むことで、正常な細胞への影響を最小限に抑える技術が進歩しており、副作用を抑えながら効果的な治療が可能になっています。
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開頭手術不要?!放射線で病巣を治療する「ラジオサージャリー」

- ラジオサージャリーとはラジオサージャリーは、頭にメスを入れることなく、放射線を用いて頭蓋内の病巣を治療する革新的な治療法です。別名「定位的放射線治療」とも呼ばれ、ガンマ線やエックス線といった高エネルギーの放射線をピンポイントで病巣部に照射します。周辺の健康な組織への影響を最小限に抑えながら、病巣だけを効果的に破壊します。従来の外科手術では、開頭して病巣に直接アプローチする必要がありました。一方、ラジオサージャリーは身体への負担が少なく、入院期間も大幅に短縮できるという大きなメリットがあります。治療後、日常生活に早く復帰できるため、患者さんの身体的、精神的な負担軽減にも大きく貢献しています。さらに、脳腫瘍や脳血管奇形など、従来の手術が困難だった症例にも適用できる場合があります。ラジオサージャリーは、患者さんにとって低侵襲で効果の高い治療の選択肢となりつつあります。
その他

ラジオイムノアッセイ:微量物質測定の立役者

- ラジオイムノアッセイとはラジオイムノアッセイ(RIA)は、放射線を出す物質を利用して、血液や組織などの検体中に含まれる、ごく微量の物質を測定する技術です。 1950年代に、ホルモンの一種であるインスリンの測定方法として初めて応用され、その高い感度が評価されました。その後、RIAは医療分野において大きく貢献し、現在ではホルモン以外にも、腫瘍マーカーや薬物など、様々な物質の測定に広く利用されています。RIAの仕組みは、抗原抗体反応と呼ばれる、体の中に侵入した異物(抗原)と、それと特異的に結合する物質(抗体)が結合する反応を利用する点が特徴です。まず、測定したい物質に対する抗体と、その抗体と結合する放射性物質で標識した物質を用意します。次に、測定したい検体と、標識した物質を混ぜ合わせます。すると、検体中に測定したい物質が存在する場合、標識した物質と競合して抗体と結合します。この反応の後、結合していない物質を取り除き、結合した物質から放射される放射線の量を測定します。放射線の量は、検体中の測定したい物質の量に比例するため、この測定結果から、検体中の物質の量を正確に知ることができます。 RIAは非常に感度の高い測定方法であるため、従来の方法では検出が難しかった、ごく微量の物質を測定することが可能になりました。