原子炉出力

原子力発電の基礎知識

原子炉の静寂から目覚め:中性子源領域

原子炉の出力を変化させる様子は、まるで夜明け前から太陽が燦々と輝き昼間になるまでのように、徐々に変化していきます。静かな闇夜に包まれた原子炉を目覚めさせる最初の段階、それが「中性子源領域」です。 原子炉は停止状態からいきなり最大出力になるわけではありません。原子炉内の核分裂反応は、中性子と呼ばれる粒子がウランなどの核燃料に衝突することで始まり、さらに中性子を放出して連鎖的に反応が進んでいきます。しかし、停止状態の原子炉内には、この核分裂反応を引き起こすのに十分な中性子が存在しません。 そこで、「中性子源」を用いて原子炉内に中性子を注入し、核分裂反応を促します。中性子源から供給される中性子によって、わずかながら核分裂反応が始まり、徐々に中性子の数が増えていきます。この、中性子源によって原子炉内の出力レベルをゆっくりと上昇させていく領域が「中性子源領域」と呼ばれます。 原子炉の出力はこの中性子源領域から始まり、徐々に上昇していきます。そして、中性子源からの供給がなくても自ら安定して核分裂反応を維持できる状態へと移行していきます。原子炉の出力変化を朝日に例えるなら、「中性子源領域」はまさに夜明け前にほのかに明るくなっていく、そんな最初の瞬間を捉えていると言えるでしょう。
原子力発電の基礎知識

原子炉の出力調整役:制御棒

原子力発電は、ウランなどの核燃料が核分裂を起こす際に生じる莫大なエネルギーを利用した発電方法です。核分裂とは、ウランの原子核に中性子が衝突することによって、核が分裂し、エネルギーを放出する現象です。この反応を安全かつ効率的に行うためには、出力調整、すなわち反応の速度を制御することが欠かせません。 この重要な役割を担うのが「制御棒」です。制御棒は、中性子を吸収する性質を持つ材料で作られており、原子炉の炉心に挿入したり、引き抜いたりすることで、核分裂の連鎖反応を制御します。制御棒を炉心に深く挿入すると、中性子が吸収されやすくなるため、核分裂の反応は抑制され、出力が低下します。逆に、制御棒を引き抜くと、中性子の吸収が減り、核分裂が促進され、出力が上昇します。このように、制御棒を巧みに操作することで、原子炉内の反応を安定させ、安全かつ効率的な発電を可能にしているのです。