
黒鉛減速ガス冷却炉:歴史と未来
- 黒鉛減速ガス冷却炉とは黒鉛減速ガス冷却炉とは、原子炉の核心部で発生する核分裂反応の速度を制御し、安全かつ安定的に熱エネルギーを取り出すために、減速材として黒鉛を、冷却材として炭酸ガスやヘリウムを使用する原子炉のことを指します。原子炉内でウラン燃料が核分裂反応を起こすと、高速の中性子が放出されます。この高速中性子をそのままにしておくと、ウラン燃料との反応確率が低く、効率的な核分裂の連鎖反応を維持できません。そこで、中性子の速度を落とす役割を果たすのが減速材です。黒鉛は中性子の減速能力が高く、化学的に安定しているため、減速材として優れた特性を持っています。一方、発生した熱を炉心から運び出す役割を担うのが冷却材です。炭酸ガスやヘリウムは、中性子をあまり吸収せず、黒鉛との相性が良いという特徴があります。これらのガスは原子炉内を循環し、核分裂反応で発生した熱を吸収してタービンを回し、電気を生み出すために利用されます。黒鉛減速ガス冷却炉は、燃料の種類や冷却材の種類、炉心の設計などによっていくつかの種類に分類されます。世界で初めて運転を開始したイギリスの「コールダーホール型炉」や、日本で開発が進められた「高温ガス炉」などがその代表例です。