変異原性

放射線について

変異原性: 遺伝子への影響

- 変異原性とは変異原性とは、生物の遺伝情報であるDNAや染色体に変化を促す性質、あるいはその作用の強さを指します。この変化は「突然変異」とも呼ばれ、生物の設計図を書き換えてしまう可能性を秘めています。私たちの体は、膨大な数の細胞から成り立っており、それぞれの細胞にはDNAという遺伝情報が含まれています。DNAは、親から子へと受け継がれる、まさに生命の設計図と言えるでしょう。変異原性は、この設計図であるDNAを傷つけたり、書き換えたりしてしまうため、時に「遺伝毒性」とも呼ばれます。変異原性を持つものとして、紫外線や放射線、一部の化学物質などが挙げられます。これらの物質は、DNAを構成する分子に直接作用したり、細胞分裂の際にDNAの複製を阻害したりすることで、遺伝情報に変化を引き起こします。変異の結果、細胞はがん化したり、正常に機能しなくなったりすることがあります。また、生殖細胞に影響が及べば、次世代に遺伝的な病気を引き起こす可能性も考えられます。私たちの身の回りには、変異原性を持つ可能性のある物質が多数存在します。健康な暮らしを送るためには、変異原性について正しく理解し、必要に応じて適切な対策を講じることが重要です。
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食品照射と安全性:エームス試験で見る

- エームス試験とは エームス試験は、ある物質が遺伝子の突然変異を引き起こす可能性(変異原性)を評価するための試験です。 私たちの遺伝子の本体であるDNAは、塩基と呼ばれる物質の配列によって遺伝情報を記録しています。しかし、放射線や特定の化学物質はこの塩基配列を傷つける可能性があり、その結果、細胞の正常な働きを阻害する可能性があります。 エームス試験では、ヒスチジンというアミノ酸を自ら作れない変異体を持つネズミチフス菌を用います。この菌は、通常、ヒスチジンを含んだ培地でなければ生育できません。 試験では、この菌を被験物質と混ぜて培養します。もし被験物質に変異原性があれば、菌のDNA配列に変化が起こり、ヒスチジンを再び合成できるようになることがあります。この変化を復帰突然変異と呼びます。復帰突然変異が起こると、菌はヒスチジンを含まない培地でも生育できるようになり、コロニーと呼ばれる集団を作ります。 エームス試験では、このコロニー数を数えることで、被験物質の変異原性を評価します。コロニー数が多ければ多いほど、被験物質の変異原性が高いと判断されます。 エームス試験は、簡便で迅速な試験であることから、医薬品、食品添加物、農薬、化粧品などの安全性評価に広く利用されています。