崩壊熱除去

原子力の安全

原子力発電の安全を守る: 2次系分岐冷却方式とは

- 高速増殖炉の安全確保高速増殖炉は、従来の原子炉と比べて、ウラン資源をより効率的に利用できるだけでなく、高レベル放射性廃棄物の量を減らせる可能性を秘めた、次世代の原子炉として期待されています。しかし、高速増殖炉は高い出力密度と反応速度を特徴としており、安全性確保には従来の原子炉以上に細心の注意を払う必要があります。そこで、高速増殖炉では、万が一、炉心冷却系統に異常が発生した場合でも、原子炉を安全に停止させ、炉心損傷を防ぐための対策として、「2次系分岐冷却方式」と呼ばれるシステムが採用されています。このシステムは、原子炉を冷却する1次系冷却材とは別に、2次系の冷却材経路を設け、異常発生時には、この経路を通じて炉心を冷却するというものです。1次系と2次系は物理的に分離されているため、仮に1次系で冷却材の循環が停止するような事態が発生した場合でも、2次系からの冷却材供給によって、炉心の温度上昇を抑制し、炉心損傷を防ぐことが可能となります。このように、高速増殖炉は、その特性上、高度な安全対策が求められますが、「2次系分岐冷却方式」のようなシステムの導入により、高い安全性を確保できるよう設計されています。
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原子炉隔離時冷却系:RCICとは

原子力発電所では、発電のための熱を生み出す原子炉の安全確保は最も重要です。万が一の事故発生時でも、放射性物質の放出を抑え、周辺環境や住民への影響を最小限に抑えるため、様々な安全装置が備わっています。 中でも、沸騰水型原子炉(BWR)と呼ばれるタイプの原子炉には、多重的な安全システムが組み込まれています。 今回は、BWRに設置されている重要な安全装置の一つである、原子炉隔離時冷却系(RCIC)について詳しく解説します。 RCICは、原子炉で何らかの異常が発生し、通常運転を継続できなくなった場合に自動的に作動するシステムです。原子炉内の圧力や水位が異常に低下した場合、RCICは高圧の冷却水を炉心に注入することで、炉心の過熱を防ぎ、炉心損傷の可能性を低減します。 このシステムは、外部からの電力供給が途絶えた場合でも、独自の発電機とポンプを備えているため、独立して機能することができるという点で非常に重要です。 このようにRCICは、原子炉の安全を確保するための最後の砦として、万が一の事故発生時にその真価を発揮する重要な安全装置です。
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原子炉の安全を守るPRACSとは?

高速増殖炉は、ウラン資源を有効に活用できる未来の原子炉として期待されています。通常の原子炉と比べて、より高いエネルギーを持つ高速中性子を利用して核分裂反応を起こすため、非常に高い熱を発生します。このため、高速増殖炉では、運転中だけでなく、運転を停止した後も安全に熱を除去することが非常に重要となります。 高速増殖炉から発生する熱は、主に「崩壊熱」と呼ばれます。これは、核分裂反応によって生じた放射性物質が、時間をかけて安定な状態へと変化する際に放出する熱です。高速増殖炉は高い出力で運転されるため、運転停止後も相当量の崩壊熱が発生し続けます。もし、この熱を適切に除去できない場合、炉心の温度が過度に上昇し、炉心損傷などの深刻な事故につながる可能性があります。 そこで、高速増殖炉では、多重化された冷却システムを採用することで、熱除去の安全性を高めています。具体的には、通常運転時に熱を除去する1次系ナトリウム冷却システムに加え、万が一、1次系ナトリウム冷却システムに異常が発生した場合でも、炉心を冷却できる2次系ナトリウム冷却システムや、最終的な熱の逃がし場となる3次冷却システムなどが備えられています。このように、高速増殖炉の冷却システムは、多重化と冗長性を持たせることで、高い信頼性と安全性を確保しています。
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原子炉の安全: 中間熱交換器冷却方式とは

高速増殖炉は、ウラン資源をより効率的に利用できる夢の原子炉として、将来のエネルギー問題解決への期待を担っています。しかし、通常の原子炉よりも高いエネルギーを持つ高速中性子を利用するため、安全性確保には特別なシステムが必要不可欠です。 高速増殖炉では、核分裂反応が停止した後も、炉心で発生する熱、すなわち崩壊熱が問題となります。この崩壊熱は、通常の原子炉と比較して格段に大きく、放置すると炉心損傷を引き起こす可能性があります。そこで、高速増殖炉には、異常時においても確実に崩壊熱を除去する安全システムが備えられています。 この安全システムは、大きく分けて2つの系統から構成されています。1つ目は、原子炉の運転中に常に作動している主冷却系統です。これは、液体金属であるナトリウムを冷却材として用い、炉心で発生した熱を大型の熱交換器へと運び、最終的に発電に利用します。2つ目は、主冷却系統が機能喪失した場合に備えた、独立した予備的な冷却系統です。この系統は、自然循環の原理を応用し、電力に頼らずとも崩壊熱を安全に除去できる設計となっています。 このように、高速増殖炉は、その特性上、特別な安全対策が必要となりますが、多重的な安全システムを構築することによって、高い安全性を確保できると考えられています。
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原子炉を守る最後の砦!直接炉心冷却システム

原子力発電所では、運転を停止した後も核燃料から熱が発生し続けます。これは崩壊熱と呼ばれ、原子炉の安全確保において重要な要素です。高速炉においても、この崩壊熱を安全に除去するために、通常運転時には主冷却系統と呼ばれる冷却システムが稼働しています。これは、原子炉内で発生した熱を常に運び出し、発電などに利用すると同時に、炉心を冷却する役割を担っています。 しかし、地震などの自然災害や機器の故障といった不測の事態によって、この主冷却系統が機能しなくなる可能性も考えられます。このような万が一の事態においても、炉心を確実に冷却し、過熱による損傷を防ぐために、高速炉にはバックアップシステムが備わっています。それが、直接炉心冷却システム、DRACS(Direct Reactor Cooling System)と呼ばれるシステムです。DRACSは、主冷却系統が機能喪失した場合に自動的に作動し、自然循環などにより炉心へ冷却材を供給し続けることで、炉心の安全を確保する役割を担います。これは、原子炉の安全性を高める上で非常に重要なシステムです。
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原子炉の安全を守るIRACSとは?

高速増殖炉は、ウラン資源を有効に活用できる夢の原子炉として、将来のエネルギー問題解決への期待を担っています。しかし、従来の原子炉と比べて、炉心内の出力密度が高く、反応性の変化も速いことから、安全性の確保が極めて重要となります。 高速増殖炉では、万が一、原子炉で異常が発生した場合、直ちに炉を停止させる必要があります。そのために、制御棒を高速で炉心に挿入するシステムや、炉心を冷却材で満たして反応を抑えるシステムなど、多重の安全装置が備えられています。 さらに、原子炉が停止した後も、核分裂生成物の崩壊熱によって、炉心は高温状態が続きます。この崩壊熱を適切に除去しなければ、炉心損傷に繋がる可能性があります。そこで、高速増殖炉では、通常運転時だけでなく、停止時にも確実に崩壊熱を除去できるよう、複数の冷却系統が設置されています。これらの冷却系統は、電力供給が断たれた場合でも、自然循環によって機能するよう設計されており、高い信頼性を確保しています。