原子力発電とスラッジ: 知られざる廃棄物の正体
「スラッジ」と聞いて、何を思い浮かべるでしょうか?多くの人は、日常生活で排水溝などに溜まるヘドロのようなものを想像するかもしれません。確かに、スラッジは一般的には水底に溜まった泥を指す言葉として使われます。しかし、原子力発電の世界にも、同じ名前を持つ、全く異なる性質を持った「スラッジ」が存在します。
原子力発電所では、使い終わった核燃料を再処理する過程で、様々な廃棄物が発生します。この再処理とは、使用済み核燃料からまだ使えるウランやプルトニウムを取り出す作業のことで、非常に複雑な工程を経て行われます。そして、この過程で発生するのが、高レベル放射性廃液と呼ばれる、危険な液体です。スラッジは、この高レベル放射性廃液を処理する過程で生じる、泥状の放射性廃棄物のことを指します。
高レベル放射性廃液には、様々な放射性物質が含まれており、非常に危険なため、そのままの状態で保管することはできません。そこで、この廃液をガラスと混ぜて固化処理し、安定した状態にする処理が行われます。スラッジは、この固化処理の前に、廃液から分離・回収されるのです。スラッジには、放射性物質が濃縮されているため、厳重に管理する必要があります。そのため、セメントと混ぜて固化し、専用の容器に封入した後、厳重な管理体制が敷かれた場所に保管されます。