電子ビームが切り拓く、排煙処理の新時代
火力発電所や工場などから排出される煙の中には、硫黄酸化物や窒素酸化物といった有害物質が含まれています。これらの物質は大気を汚染し、酸性雨や呼吸器疾患の原因となるため、環境問題解決のために適切な処理が欠かせません。従来から、排煙中の有害物質を取り除くために、様々な処理技術が開発されてきました。例えば、水と反応させて硫黄酸化物を除去する湿式排煙脱硫装置や、触媒を用いて窒素酸化物を分解する排ガス脱硝装置などがあります。
しかしながら、これらの従来技術には、処理に費用やエネルギーがかかる、新たな廃棄物が発生するといった課題も残されています。
近年、これらの課題を解決する新たな技術として、電子ビームを用いた画期的な排煙処理法が注目を集めています。電子ビームは、電気エネルギーによって加速された電子の流れであり、排煙に照射すると、有害物質を分解することができます。電子ビームによる排煙処理法は、従来の方法と比べて処理効率が高く、有害物質の分解率を高めることができます。また、処理後の生成物は肥料として利用できるため、副産物の発生を抑制できる点も大きな利点です。電子ビームによる排煙処理技術は、環境負荷低減への貢献が大きく期待されており、今後の普及が期待されています。