放射線と細胞:核濃縮の謎に迫る
生き物は体の細胞が分裂することで成長しますが、細胞は常に分裂しているわけではありません。細胞分裂の準備をしている期間や、一時的に分裂を停止している期間の方が長いのです。このような期間を静止期と呼びます。
細胞は静止期に入ると、まるで眠っているような状態になり、目立った活動は見られなくなります。しかし、静止期は細胞にとって、ただ休んでいるだけの時間ではありません。細胞分裂に向けて、エネルギーを蓄えたり、細胞に必要な物質を合成したりと、次の分裂に向けて準備をしている重要な期間なのです。
静止期にある細胞では、核の中に存在するクロマチンと呼ばれる構造が凝縮し、濃縮して見える現象が起こります。これは核濃縮と呼ばれる現象で、別名「ピクノシス」とも呼ばれます。核濃縮は、細胞が静止期に入ったことを示す指標の一つとして用いられます。静止期の細胞は、再び分裂期に入ると、核濃縮が解除され、クロマチンは緩んだ状態に戻ります。そして、細胞分裂に必要な情報をコピーし、新しい細胞が作られる準備を始めます。