核燃料サイクル

その他

原子力発電の未来:国際協力の変遷

- 国際原子力パートナーシップ構想の登場2006年、アメリカは「国際原子力パートナーシップ構想(GNEP)」を提唱し、世界の原子力利用の将来像を新たに示しました。これは、原子力発電の推進と並行して、核兵器の拡散リスクを抑え、放射性廃棄物の発生量削減を目指すという、意欲的な構想でした。具体的な方法として、先進的な再処理技術と高速炉の開発・世界展開を掲げました。高速炉は、従来の原子炉よりも多くのエネルギーを生み出し、放射性廃棄物の発生量も抑えられるという利点があります。さらに、使用済み核燃料を再処理することで、資源の有効活用と廃棄物の大幅な減容化が可能になります。この構想は、世界の国々を、核燃料の供給を担う役割と、原子力発電に専念する役割に明確に分けることを目指していました。アメリカを含む限られた数の先進国が核燃料サイクルの上流(ウラン濃縮や再処理)を担い、その他の国々は原子力発電に集中することで、核拡散リスクの抑制と原子力発電の平和利用を両立させようとしたのです。しかし、この構想は、核燃料サイクルの独占につながりかねないという懸念や、高速炉技術の実用化の難しさ、そして巨額なコストなどが課題として浮上しました。結局、GNEPは当初の構想通りには進まず、現在ではその活動は縮小されています。それでも、原子力発電の平和利用と核不拡散、そして環境負荷の低減という目標は、国際社会全体の共通認識として引き継がれています。
その他

原子力発電の未来:国際協力の重要性

- 国際原子力エネルギー・パートナーシップとは国際原子力エネルギー・パートナーシップ(GNEP)は、2006年に当時のアメリカ合衆国ブッシュ大統領(共和党)によって提唱された、国際的な原子力協力の枠組みです。これは、地球温暖化への対策として原子力発電の利用拡大を目指す一方で、原子力利用に伴う核拡散や放射性廃棄物問題などのリスクを軽減することを目的としていました。具体的な方法としては、まず、先進的な再処理技術や高速炉の開発・導入を推進することが挙げられます。従来の原子力発電と比べて、核燃料をより効率的に利用でき、放射性廃棄物の発生量も抑えられる技術です。そして、国際的にはアメリカを含む限られた数の国々が核燃料の供給を担い、その他の国々は原子力発電のみを行うという構想でした。しかし、この構想はいくつかの課題を抱えていました。例えば、核燃料の供給を一部の国に限定することは、エネルギー安全保障の観点から問題視されました。また、高速炉技術の開発には多大な費用と時間がかかること、再処理によって抽出されるプルトニウムが核兵器に転用されるリスクも懸念されました。これらの課題から、GNEPは当初の構想通りには進展しませんでした。しかし、国際的な原子力協力の重要性は依然として高く、現在も様々な枠組みで議論や協力が進められています。
原子力施設

使用済燃料の一時保管の重要性:中間貯蔵施設とは

原子力発電は、ウランなどの核燃料が持つ、原子核分裂という現象を利用して莫大な熱エネルギーを生み出し、その熱で水を沸騰させて蒸気を作ることでタービンを回し、電気を起こす仕組みです。火力発電と仕組みは似ていますが、石炭や石油の代わりにウランなどの核燃料を使う点が異なります。 原子力発電では、発電に使用した燃料は、「使用済燃料」と呼ばれます。これは、核燃料が原子核分裂を起こした後も、強い放射線を出す性質を持つためです。この使用済燃料は、放射能レベルが非常に高く、人体や環境への影響を抑えるため、厳重な管理と適切な処理が必要とされます。 使用済燃料には、まだ核分裂を起こすことができる物質が含まれています。そのため、再処理と呼ばれる工程を経て、新たな燃料として再利用することも可能です。再処理を行うことで、資源の有効活用や放射性廃棄物の減容化につながります。このように、原子力発電は、使用済燃料の処理を含めて、安全性と環境への配慮が求められる発電方法です。
核燃料

国際核燃料サイクル評価:INFCEとは

1970年代後半、世界は大きな転換期を迎えていました。核兵器の脅威が現実のものとなる一方で、原子力の平和利用によるエネルギー問題解決への期待も高まっていました。こうした中、1974年にインドが平和利用を目的としたと主張する核実験を実施したことは、国際社会に大きな衝撃を与えました。核兵器の拡散を防ぐことと、平和利用を促進することの両立は、人類共通の課題として認識されるようになったのです。 こうした状況を背景に、当時のアメリカ合衆国カーター大統領の提唱により、国際核燃料サイクル評価(INFCE)が開催されることになりました。1977年10月から約2年間にわたり、40を超える国々が参加し、原子力の平和利用と核不拡散の両立という難題に取り組みました。 INFCEは、核燃料サイクルのあらゆる側面を技術的、経済的、政治的な観点から詳細に評価し、国際的な核不拡散体制を強化するための具体的な方策を検討する場となりました。議論は多岐にわたり、参加国の間では意見の対立も見られましたが、最終的には1980年2月に最終報告書が採択されました。 INFCEは、核不拡散と平和利用の両立という課題の困難さを改めて浮き彫りにすると同時に、国際社会が協力して解決策を探っていくことの重要性を示しました。INFCEで得られた教訓は、その後の国際的な核不拡散の取り組みにも大きな影響を与え続けています。
核燃料

原子力発電の課題:高レベル廃液とは

原子力発電所では、電気を作るためにウラン燃料が使われます。ウラン燃料は発電に使われると、核分裂生成物と呼ばれる放射性物質を含む使用済み燃料になります。この使用済み燃料は、再処理工場に運ばれ、再利用可能な物質とそうでない物質に分離する処理が行われます。 この再処理過程で発生するのが、高レベル廃液と呼ばれる、非常に強い放射能を持つ液体です。高レベル廃液には、ウランやプルトニウムから核分裂によって生成されたセシウム137やストロンチウム90といった放射性物質が含まれています。これらの物質は、非常に長い時間、放射線を出し続けるため、環境や人体への影響を最小限にするために、厳密な管理が必要です。 高レベル廃液は、セメントと混ぜて固めるなど、安定した状態に変えられます。そして、最終的には地下深くの安定した地層に処分されるまでの間、厳重に管理されます。このように、高レベル廃液は、その発生から処分に至るまで、安全性が最優先事項とされています。
その他

原子力発電の未来: GNEPからIFNECへ

- GNEPとは何かGNEPは、「地球規模原子力エネルギーパートナーシップ」を意味する英語「Global Nuclear Energy Partnership」の略称です。2006年、アメリカのブッシュ政権(共和党)が提唱した、国際的な原子力協力の枠組みです。GNEPは、世界中で原子力発電所を増やし、発電量を増やすと同時に、原子力発電に伴って発生する放射性廃棄物と、核兵器の製造に転用されるリスクを減らすことを目的としていました。この構想を実現するために、使用済み核燃料を再処理して資源として有効活用する「先進的な再処理技術」と、ウランをより効率的に利用できる「高速炉」の早期開発と導入が想定されていました。しかし、GNEPは、核拡散のリスクや高レベル放射性廃棄物の処理に関する技術的な課題、巨額な費用などが問題視され、計画は難航しました。その後、オバマ政権発足後の2009年には、事実上凍結されることとなりました。GNEPは、原子力発電の平和利用と核不拡散の両立という重要な課題に取り組んだ構想でしたが、その実現には技術的、政治的な課題が多く、国際的な合意形成には至りませんでした。
核燃料

貴重な資源:回収ウランの活用

原子力発電所では、燃料としてウランが使われています。発電に使用された後でも、燃料の中にはまだエネルギーとして利用できるウランが残っています。この使用済みの燃料から再びウランを取り出し、燃料として再利用しようという取り組みが進められています。 使用済みの燃料からウランを取り出すには、再処理と呼ばれる技術が必要です。再処理とは、使用済みの燃料を化学的に処理し、ウランとプルトニウムを分離・抽出する工程のことです。このようにして分離されたウランは、回収ウランと呼ばれます。 回収ウランは、新しい燃料の原料として再利用されます。ウラン資源の有効活用や、使用済み燃料の減容化に貢献できる技術として期待されています。
核燃料

原子力発電とEU:濃縮ウランと欧州連合

原子力発電所を動かすためには、燃料となるウランが必要です。しかし、地球上で採掘されるウランは、そのままでは発電に使うことができません。それは、天然ウランの中に発電に利用できるウラン235がわずか0.7%しか含まれていないためです。残りの大部分はウラン238という種類で、これは発電には適していません。 そこで、ウラン235の割合を人工的に高めることで、より効率的にエネルギーを生み出せるようにしたものが「濃縮ウラン」です。 濃縮ウランを作るには、まず天然ウランから不純物を取り除き、ウラン235とウラン238を分離する必要があります。この工程は、ウラン235とウラン238のわずかな重さの差を利用した遠心分離法という方法が主流です。遠心分離機と呼ばれる装置の中で高速回転させることで、重いウラン238と軽いウラン235を少しずつ分離していくことができます。 この分離と濃縮のプロセスは非常に高度な技術と大規模な設備を必要とするため、世界でも限られた国でしか行われていません。濃縮ウランは原子力発電の燃料として重要なだけでなく、軍事転用される可能性もあるため、その製造や取り扱いには国際的な監視体制が敷かれています。
核燃料

減損ウラン:原子力発電の副産物

- 減損ウランとはウランと聞いて、原子力発電や原子爆弾を思い浮かべる人は多いでしょう。ウランは放射線を出す重い金属で、地球上に広く存在しています。しかし、ウランと一口に言っても、実はその中には、性質の異なる様々な種類が存在します。原子力発電に利用されるウランと、身の回りにあるウランでは、その種類が異なっているのです。天然に存在するウランには、主にウラン238とウラン235と呼ばれる種類があります。このうち、核分裂を起こしやすい性質を持つウラン235は、原子力発電の燃料として利用されます。しかし、天然に存在するウランのうち、ウラン235が占める割合は約0.7%と、ごくわずかです。そこで、原子力発電では、ウラン235の割合を高めた「濃縮ウラン」が燃料として用いられます。ウランを濃縮し、ウラン235の割合を高める過程では、必然的にウラン235の割合が減ったウラン、つまり「減損ウラン」が発生します。減損ウランは、ウラン235の割合が低いため、原子力発電の燃料としては使い物になりません。しかし、減損ウランは、高い密度を持つことから、航空機の部品や医療機器など、様々な用途に利用されています。
原子力施設

原子力研究の拠点:原子炉研究所

ロシアの原子力研究の中心地として、ディミトロフグラードに位置する原子炉研究所(RIAR)は、1956年の設立以来、国内の原子力開発を先導してきました。ここは、基礎研究から応用研究まで幅広く手掛け、ロシアの原子力技術の進歩に大きく貢献してきました。RIARの特徴は、多様な原子炉を保有している点です。高速炉や熱中性子炉など、様々な種類の原子炉を用いることで、多岐にわたる研究開発プロジェクトを同時進行できます。 RIARでは、原子力発電の安全性向上に関する研究開発にも積極的に取り組んでいます。具体的には、過酷事故の模擬実験や新型燃料の開発などを通して、より安全な原子力発電の実現を目指しています。さらに、RIARは、放射性廃棄物の処理・処分技術の開発にも力を入れています。環境負荷を低減するために、より安全かつ効率的な処理・処分方法の確立が急務とされています。 RIARは、国際的な原子力研究機関とも連携し、世界規模で原子力技術の発展に貢献しています。人材育成にも力を入れており、将来を担う原子力技術者の育成にも重要な役割を担っています。
原子力施設

原子炉科学研究所:ロシアの原子力研究の中心

1956年、ロシアのディミトロフグラードに原子炉科学研究所、通称RIARが設立されました。当時のソ連は、原子力研究が国の将来を左右する重要な鍵となると考えていました。そして、原子炉技術の開発を急速に進めるために、世界に通用するような最高の研究機関が必要だと判断したのです。こうしてRIARは、ソ連の原子力研究の中心的な役割を担う機関として誕生しました。 RIARは、原子炉の設計や構造といった原子炉工学をはじめ、原子炉に使用される材料の研究、ウランより重い元素である超ウラン元素の研究など、原子力に関する幅広い分野の研究開発に取り組んできました。
その他

日本のエネルギー未来: 原子力立国計画の展望

2006年8月に決定された原子力立国計画は、日本のエネルギー政策における重要な柱となっています。これは、2005年に閣議決定された「原子力政策大綱」に基づき、資源エネルギー庁が中心となって具体策をまとめたものです。 この計画は、原子力の利用促進だけを目的としたものではありません。エネルギーを海外からの輸入に頼っている現状を改善し、エネルギーの安定供給を図ること、原子力発電によって経済を活性化し、経済成長につなげること、そして、二酸化炭素の排出量を抑え、地球温暖化問題の解決に貢献することなど、様々な目標を達成することを目指しています。 原子力立国計画は、日本のエネルギーの未来、経済の将来、そして地球環境問題への取り組みを左右する重要な計画と言えるでしょう。
核燃料

BNFL:英国の原子力事業を支えた企業の変遷

- BNFLの誕生と役割1984年、英国ではサッチャー政権下で国有企業の民営化が積極的に進められていました。その一環として、それまで国の機関であった英国核燃料公社も民営化の対象となり、新たに「ブリティッシュ・ニュークリア・フューエルズ株式会社」、略称BNFLが設立されることになりました。これは、電力供給など公益性の高い事業であっても、民間企業の力で効率的に運営できるという考えに基づいた政策でした。BNFLは、民営化後も英国における核燃料サイクルにおいて重要な役割を担い続けました。具体的には、原子力発電所の燃料となるウランの濃縮や加工、使用済み核燃料の再処理、そして最終的な処分といった、原子力発電に伴う一連の工程を一手に引き受けていました。特に、再処理事業は国際的にも高く評価され、日本を含む世界各国から使用済み核燃料を受け入れていました。このように、BNFLは英国の原子力政策を支える中核的な企業として、長年にわたり大きな存在感を示していました。しかし、その一方で、高レベル放射性廃棄物の処理問題や、再処理施設における事故なども発生し、常に安全性の確保が課題としてつきまとっていました。
核燃料

原子力発電のバックエンド:使用済燃料のその後

原子力発電は、ウランなどの核燃料が持つエネルギーを利用して電気を生み出す発電方法です。火力発電のように石油や石炭を燃やす代わりに、ウランなどの原子核が核分裂する際に生じる莫大なエネルギーを利用するのが特徴です。この核燃料は、採掘から発電、そして使用後まで、一連の流れの中で慎重に取り扱われます。これを核燃料サイクルと呼びます。 まず、ウラン鉱石は鉱山から採掘され、発電に利用できる形に加工されます。その後、加工されたウラン燃料は原子力発電所へ運ばれ、原子炉の中で核分裂反応を起こし、熱を生み出します。この熱は水を沸騰させて蒸気へと変化させ、その蒸気の力でタービンを回し発電機を動かします。 原子力発電では、このサイクル全体を理解することが重要です。なぜなら、原子力発電は、燃料の採掘から加工、発電、そして使用済み燃料の処理や処分に至るまで、それぞれの段階で環境や安全への配慮が求められるからです。特に、使用済み燃料には放射性物質が含まれているため、適切な処理と保管が不可欠です。 このように、原子力発電と燃料サイクルは密接に関係しており、安全で安定したエネルギー供給のためには、サイクル全体を理解し、それぞれの段階における技術開発や環境への影響評価を進めていくことが重要です。
原子力施設

原子力施設の安全性:多重防御の重要性

- 原子力施設とは原子力施設と聞いて、多くの人は電気を作る場所を思い浮かべるでしょう。確かに、原子力施設の代表格は原子力発電所です。原子力発電所では、ウラン燃料の核分裂反応を利用して熱を生み出し、その熱で水を沸騰させて蒸気を作ります。そして、その蒸気の力でタービンを回し、電気を作り出しています。 しかし、原子力施設は原子力発電所だけではありません。 原子力発電の前後には、燃料を加工したり、使い終わった燃料を処理したりする工程が必要です。また、医療や工業で利用される放射性物質を作る施設もあります。具体的には、原子力施設には次のようなものがあります。まず、ウランを核燃料に加工する核燃料加工施設、ウラン濃縮を行う同位体分離工場があります。そして、電気を作る原子力発電所、使い終わった燃料から再利用可能な物質を取り出す再処理工場、再処理できないものを保管する使用済燃料貯蔵施設などがあります。さらに、放射性物質を利用して医療に役立つ医薬品などを作る原子炉やRI製造施設なども原子力施設に含まれます。このように、原子力施設は私たちの生活に欠かせない電気を供給するだけでなく、医療や工業など、様々な分野を支える重要な役割を担っています。
核燃料

幻となった夢の原子炉:先進燃焼炉

原子力発電の未来を担うはずだった革新的な原子炉、それが先進燃焼炉です。従来の原子炉では実現できなかった、夢のような技術が盛り込まれた原子炉として、大きな期待が寄せられていました。 先進燃焼炉の最大の特徴は、プルトニウムや超ウラン元素といった、従来の原子炉では処理が困難だった物質を燃料として有効活用できる点にあります。これらの物質は、従来のウラン燃料から原子力発電を行う過程で副産物として生じ、放射性廃棄物として保管されてきました。先進燃焼炉は、これらの物質を燃料として利用することで、放射性廃棄物の量を大幅に削減し、資源の有効活用にも貢献することが期待されていました。 さらに、先進燃焼炉は、従来の原子炉に比べて、より安全性の高い炉型になるように設計されていました。しかし、その革新的な技術の実現には、多くの課題を克服する必要があり、開発は容易ではありませんでした。現在、開発は凍結されていますが、先進燃焼炉は、原子力発電の未来を変える可能性を秘めた技術として、今もなお注目されています。
核燃料

原子力発電の未来:先進的燃料サイクル

原子力発電は、地球温暖化対策の切り札として、またエネルギー安全保障の観点からも重要な役割を担っています。しかし、発電に伴って発生する使用済み燃料の処理は、解決すべき課題として認識されています。 こうした課題を克服するために、アメリカでは「先進的燃料サイクル構想」と呼ばれる計画が提唱されました。これは、使用済み燃料に含まれる未利用の資源を有効活用し、廃棄物の量を大幅に減らしながら、エネルギー資源をより効率的に利用することを目指すものです。 この構想は、従来の原子力発電技術の限界を克服し、より持続可能なエネルギーシステムを構築する上で極めて重要なものです。 このブログ記事では、先進的燃料サイクル構想の概要と歴史、そして日本の原子力発電における将来展望について解説していきます。
原子力施設

未来の原子力:専焼高速炉の潜在力

- 専焼高速炉とは 原子力発電所からは、運転の過程でどうしても放射線を出すゴミが出てしまいます。これは放射性廃棄物と呼ばれ、その中でも特に寿命の長いものがマイナーアクチノイド(MA)です。MAは、ウラン燃料が原子炉の中で核分裂する際に発生する副産物で、非常に長い年月をかけて放射線を出し続けるため、安全かつ確実に処分することが課題となっています。 このMAを処理するために開発が進められているのが専焼高速炉です。従来の原子炉は、ウランを燃料として熱を生み出し、発電を行いますが、専焼高速炉は、MAを主な燃料として利用します。高速炉の中で、MAは中性子を吸収し、核分裂反応を起こします。この核分裂反応によって、MAはより短寿命の核種に変換され、放射線の危険性を低減することができます。 専焼高速炉は、MAの処理と同時に、エネルギーを生み出すことができるという利点も持っています。そのため、将来の原子力発電の選択肢の一つとして期待されています。しかし、技術的な課題も残されており、実用化にはまだ時間がかかると考えられています。
核燃料

英国核燃料会社:その変遷とMOX燃料工場

- 英国核燃料会社の設立 1984年、英国原子力産業にとって重要な転換期となる出来事がありました。それは、英国核燃料会社、通称BNFLの誕生です。BNFLは、原子力発電の要となる核燃料サイクルと、原子力発電所の稼働を停止した後に必要な廃止措置を専門に行う企業として設立されました。 BNFLの設立は、当時の英国政府が進めていた国有企業の民営化政策の一環として行われました。それまで英国の原子力産業を支えてきた国有企業であった英国核燃料公社が、民営化によって生まれ変わったのです。 民営化によって生まれたBNFLでしたが、その略称は以前の英国核燃料公社時代から引き継がれました。これは、国民にとって馴染みのある名称を維持することで、原子力事業に対する理解と信頼を継承しようとする狙いがあったと考えられます。 こうして産声を上げたBNFLは、その後、英国における原子力産業を牽引する存在として、その歩みを着実に進めていくことになります。
核燃料

ウラン濃縮度:原子力発電の要

- ウランエネルギーの源ウランは、原子力発電の燃料となる、熱と光を発生させる力を持つ貴重な元素です。地球の地殻に存在しますが、そのままでは発電に利用できません。自然界に存在するウランには、ウラン238とウラン235という二つの種類があります。このうち、核分裂を起こしてエネルギーを放出するのはウラン235です。しかし、天然ウランにおけるウラン235の割合はわずか0.7%ほどしかありません。そこで、原子力発電を行うためには、天然ウランからウラン235の割合を高める「濃縮」という工程が必要となります。濃縮は、ウランを気体状の化合物に変え、遠心分離機などを用いて繰り返し分離することで、ウラン235の濃度を高めていきます。濃縮されたウランは、燃料として原子炉に供給されます。原子炉の中では、ウラン235が核分裂反応を起こし、膨大な熱エネルギーを発生させます。この熱エネルギーを利用して蒸気を作り、タービンを回し発電機を動かすことで、電気エネルギーを生み出しているのです。このように、ウランは、私たちの生活に欠かせない電気エネルギーを生み出すための重要な役割を担っていると言えます。
核燃料

エネルギー源としてのウラン濃縮

- ウラン濃縮とはウランには、ウラン235とウラン238という二種類の仲間が存在します。このうち、原子力発電の燃料として利用できるのは、核分裂を起こしやすいウラン235のみです。しかし、自然界に存在するウラン(天然ウランと呼びます)には、ウラン235はわずか0.7%しか含まれておらず、大部分はウラン238で占められています。このままだと、ウラン235の割合が低すぎて、効率的にエネルギーを取り出すことができません。そこで、原子力発電で利用するために行われるのがウラン濃縮と呼ばれる作業です。これは、人工的にウラン235の割合を高め、燃料としての価値を高めるための工程です。ウラン濃縮を行うことで、天然ウランにわずかに含まれるウラン235の割合を、原子力発電で利用可能な3〜5%程度まで濃縮します。ウラン235とウラン238は、原子核を構成する中性子の数が異なるだけで、化学的な性質はほとんど変わりません。そのため、質量の違いを利用して両者を分離します。具体的には、気体拡散法や遠心分離法といった高度な技術を用いて、少しずつウラン235の割合を高めていきます。ウラン濃縮は、原子力発電の燃料を製造する上で欠かせない工程であり、高度な技術と厳重な管理体制が必要とされます。
核燃料

ウラン製錬:原子力発電の燃料を作るまで

私たちの社会を支える電気エネルギー。その供給源の一つである原子力発電所では、ウランと呼ばれる物質が燃料として使われています。しかし、ウランは、そのまま発電所で使用できるわけではありません。原子力発電の燃料となるウランは、自然界に存在するウラン鉱石と呼ばれる鉱物から取り出されます。 ウラン鉱石と一口に言っても、その種類は様々です。代表的なものとしては、黄色い色をした閃ウラン鉱、瀝青ウラン鉱とも呼ばれる黒いピッチブレンド、そして黄色や緑色をしたブランネル石などが挙げられます。これらの鉱石は、世界各地の地層や岩石の中に存在しています。 ウラン鉱石の特徴は、ウランが酸素と結びついた酸化物の形で含まれていることです。このウラン酸化物は、そのままでは原子力発電の燃料として使うことはできません。鉱石から不純物を取り除き、ウランの濃度を高める作業が必要です。こうして精製されたウランは、原子力発電所の燃料として利用され、莫大なエネルギーを私たちに供給してくれるのです。
核燃料

原子力発電の安全確保:炉心インベントリーの役割

原子力発電所では、ウランやプルトニウムといった核物質がエネルギーを生み出すために欠かせません。これらの物質は、採掘されてから燃料として加工され、原子炉で使用された後、処理され、最終的に処分されるまで、一貫して厳重に管理されています。このような核物質の一連の流れは「核燃料サイクル」と呼ばれ、そのあらゆる段階において、核物質の総量を正確に把握することが重要となります。この総量のことを「インベントリー」と呼びます。特に、原子炉の心臓部である炉心に装荷されている燃料集合体すべてに含まれる核物質の総量は「炉心インベントリー」と呼ばれ、これは原子炉の安全性を確保する上で極めて重要な意味を持ちます。炉心インベントリーを常に把握することで、原子炉が安全に運転できる範囲内にあるかを確認することができ、想定外の核分裂反応を防ぐなど、安全性の確保に大きく貢献しています。
核燃料

原子力発電の未来を担う?:ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料

原子力発電所では、ウラン燃料を使って電気を作っています。燃料は使い終わると、まだエネルギーを生み出す力を持ったウランやプルトニウムが残っています。この、いわば「使い残し」のウランやプルトニウムを再利用し、資源を有効活用するために開発されたのがウラン・プルトニウム混合酸化物燃料、通称MOX燃料です。 MOX燃料は、使用済み燃料から回収したプルトニウムと、新たに採掘したウラン、あるいは使用済み燃料から回収したウランを混ぜ合わせて作られます。MOX燃料は、従来のウラン燃料と同じように原子炉の中で核分裂反応を起こし、熱エネルギーを生み出すことができます。 MOX燃料を使うことには、資源の有効活用の他にも、プルトニウムの量を減らせるという利点があります。プルトニウムは、核兵器の材料となる可能性があるため、その量を減らすことは国際的な安全保障の観点からも重要です。 MOX燃料は、資源の有効活用と核拡散防止の両方に貢献する技術として、期待されています。