ヨーロッパにおける原子力:ユーラトムの役割
1950年代、ヨーロッパは第二次世界大戦の傷跡から立ち直り、経済発展を遂げようとしていました。人々の生活が豊かになるにつれ、工場を動かし、家庭に明かりを灯し続けるためには、より多くのエネルギーが必要となりました。しかし、従来の石炭や石油といった化石燃料だけでは、この急増するエネルギー需要に対応しきれなくなることが懸念されていました。
こうした中、新たなエネルギー源として期待を集めたのが原子力でした。原子力は、石炭や石油と比べて、わずかな量で莫大なエネルギーを生み出すことができる夢のエネルギーとして注目されていました。しかし、原子力発電所の建設には、莫大な費用と高度な技術力が必要とされ、一国だけで開発を進めることは容易ではありませんでした。
そこで、ヨーロッパの国々は、力を合わせることでこの課題を克服しようと決意しました。1958年1月、ベルギー、フランス、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、西ドイツの6か国が集まり、欧州原子力共同体(ユーラトム)を設立したのです。ユーラトムは、加盟国間で原子力技術や資源を共有し、協力して原子力発電の開発を進めることを目的としていました。これは、ヨーロッパ統合への大きな一歩として、その後の発展に大きく貢献していくことになります。