
放射線と電離:原子レベルの現象
物質は原子からできており、原子はさらに小さな電子と原子核から構成されています。通常、原子は陽子の数と電子の数が等しく、電気的に中性となっています。しかし、外部からエネルギーが加えられると、原子は電子を失い、プラスの電気を帯びた状態になることがあります。この現象を電離と呼びます。
電離を引き起こすエネルギーは、放射線や熱、光など様々なものが考えられます。例えば、放射線が原子に衝突すると、そのエネルギーが原子に伝わり、電子が原子から飛び出すことがあります。また、物質同士の摩擦によっても、電子が移動し、電離が起こることがあります。
電離によって生じた、プラスの電気を帯びた原子を陽イオンと呼びます。私たちの身の回りで見られる静電気も、この電離現象によって引き起こされます。例えば、乾燥した冬にセーターを脱ぐ際にパチパチと音がしたり、ドアノブに触れるとビリッときたりするのは、摩擦によってセーターや体に電子が移動し、電荷のバランスが崩れることで起こるのです。
電離は、私たちの身の回りで様々な現象を引き起こすだけでなく、医療分野や工業分野など、幅広い分野で応用されています。例えば、レントゲン撮影は、X線による電離作用を利用して身体の内部を撮影する技術です。また、放射線治療は、放射線による電離作用を利用して、がん細胞を破壊する治療法です。