放射線について

原子力発電の安全を守る「遮へい」

原子力発電は、ウランという物質の核分裂反応を利用して、莫大な熱エネルギーを生み出し、電気を作る技術です。しかし、この核分裂反応に伴い、目に見えない危険な放射線も発生します。 原子力発電所における遮へいとは、この放射線から働く人や周辺環境を守るための、重要な安全対策のことを指します。 原子力発電所から発生する放射線は、その種類やエネルギーの強さが様々です。そこで、遮へいには、放射線の種類や強さに応じて、水、コンクリート、鉛、鉄など、適切な材料が使い分けられます。例えば、水は中性子と呼ばれる放射線の遮へいに効果があり、原子炉の周りに設置されます。コンクリートは、比較的安価でガンマ線と呼ばれる放射線の遮へいに効果があり、建屋など広範囲に使われています。鉛や鉄は、ガンマ線の中でも特にエネルギーの強いものを遮る必要がある場合に用いられます。 このように、原子力発電所では、複数の遮へいを組み合わせて設置することで、放射線の影響を可能な限り小さくし、安全性を確保しています。
原子力発電の基礎知識

原子炉の安全性とサブクール度

- サブクール度とは?液体を加熱すると、やがて沸騰して気体になりますが、この沸騰する温度は圧力によって変化します。山の上のように気圧が低い場所では低い温度で沸騰し、逆に圧力鍋の中のように圧力が高い場所では高い温度で沸騰します。この沸騰する温度のことを飽和温度と呼びます。サブクール度とは、ある圧力における液体の温度が、その圧力での飽和温度よりどれだけ低いかを示す値です。 つまり、液体がどれだけ沸騰から離れているかを表す指標とも言えます。例えば、水は大気圧(1気圧)では100℃で沸騰しますが、圧力を10気圧まで上げると飽和温度は約180℃になります。この時、10気圧下にある水が150℃であれば、飽和温度の180℃と比べて30℃低いので、サブクール度は30℃となります。サブクール度は、原子力発電所など、高い圧力で液体を扱うシステムにおいて重要な役割を果たします。例えば、原子炉で冷却材として用いられる水は、高い圧力に保たれており、沸騰を防ぐためにサブクール度を一定以上に保つ必要があります。
放射線について

放射線と水が生み出すもの:水和電子

原子力発電所において、水の安全性の確保は極めて重要です。原子炉を冷却するために大量の水が使用されるため、水と放射線の関係について深く理解することが不可欠です。 放射線が水に照射されると、水の分子とエネルギーが衝突を起こし、様々な反応が引き起こされます。その中でも特に注目すべきは、水が放射線によって分解される現象です。これは、放射線のエネルギーによって水の分子が分解され、水素と酸素、そしてごく微量の過酸化水素などの活性酸素が発生する現象です。 これらの反応は、原子炉の運転に影響を与える可能性があります。例えば、発生した水素ガスは、建屋内に蓄積すると爆発の危険性があります。また、過酸化水素は配管などの材料を腐食させる可能性があります。 このような問題を防ぐため、原子力発電所では、水の放射線分解を抑制する対策がとられています。具体的には、水中の不純物を除去する精製装置や、水素ガスを燃焼させて水に戻す装置などが設置されています。 原子力発電の安全性確保のためには、水と放射線の関係を正しく理解し、適切な対策を講じることが重要です。
地熱発電

地熱発電の立役者:水蒸気の力

- 地熱エネルギーとは地熱エネルギーとは、地球の奥深くに蓄えられた熱を利用したエネルギーのことです。地球の中心部は高温高圧状態で、その温度は数千度にも達します。この熱は、地球が誕生したときの名残や、ウランやトリウムといった放射性物質の崩壊によって絶えず生み出されています。 この膨大な熱エネルギーは、マグマの活動を通じて地球の表面近くにまで上昇してきます。地下深くにある高温の岩石に水が触れることで、蒸気や熱水ができます。この蒸気や熱水を地上に汲み上げることで、発電や暖房などに利用することができます。 地熱エネルギーは、太陽光や風力のように天候に左右されることがなく、安定した供給が見込める点が大きな利点です。また、二酸化炭素の排出量が非常に少ないため、地球温暖化対策としても注目されています。 日本は世界有数の火山国であり、豊富な地熱資源に恵まれています。温泉地として有名な地域だけでなく、全国各地で地熱発電所の建設が進められており、未来のエネルギー源として期待されています。
太陽光発電

SDGs時代の太陽光発電:地球と共存する未来へ

2015年に国連で採択された国際目標である持続可能な開発目標(SDGs)。貧困や飢餓、教育、医療など、私たち人類が様々な課題に直面する中で、2030年までにこれらの課題を解決することを目指した共通の目標です。SDGsが掲げる17の目標は、いずれも重要な課題ばかりですが、中でも喫緊の課題として世界的に注目されているのが地球温暖化対策です。地球温暖化は、気候変動や海面上昇、自然災害の増加など、私たちの暮らしに深刻な影響を及ぼすと言われています。 こうした状況の中、太陽光発電は地球温暖化対策として有効な手段の一つとして大きく期待されています。太陽光発電は、太陽光という枯渇する心配のない自然エネルギーを利用して発電するため、温室効果ガスの排出を抑制し、地球温暖化の防止に貢献できます。また、太陽光発電は、設置場所を選ばないという点も大きなメリットです。住宅の屋根はもちろんのこと、工場や倉庫の屋根、遊休地など、様々な場所に設置することができます。 太陽光発電の普及は、エネルギー問題の解決だけでなく、地球温暖化対策にも大きく貢献することから、SDGsの目標達成に向けて重要な役割を担っています。地球全体の未来のために、太陽光発電の普及を促進していくことが、私たち一人ひとりに求められています。