発電

原子力施設

幻の原子炉:THTR-300

- 夢の原子炉 「夢の原子炉」。それは、従来の原子炉が抱える問題を克服し、より安全で効率的なエネルギーを生み出す、人類の希望を託された存在でした。その夢を現実のものとするべく、ドイツで開発されたのが高温ガス炉「THTR-300」です。 高温ガス炉は、その名の通り高温のガスを用いて熱エネルギーを生み出す原子炉です。従来の原子炉と比べて、以下のような特徴から「夢の原子炉」と期待されていました。 まず、安全性です。高温ガス炉は、燃料をセラミックで覆い、さらに耐熱性の高い黒鉛でできた炉心に封じ込めています。この構造により、炉心溶融のリスクが大幅に低減されます。 次に、燃料効率です。高温ガス炉は、従来の原子炉よりも高い温度で運転することができます。そのため、より効率的に熱エネルギーを生み出し、発電効率の向上に繋がります。 THTR-300は、これらの利点を活かし、未来のエネルギー供給を担う存在として期待されていました。しかし、その道のりは平坦ではありませんでした。技術的な課題や建設コストの増大など、様々な困難に直面することになります。
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実証炉:未来への架け橋

原子力発電は、多くのエネルギーを生み出すことができ、地球温暖化対策としても期待されています。しかし、その安全性やコスト面など、解決すべき課題も残っています。これらの課題を乗り越え、より安全で効率のよい原子力発電を実現するため、世界中で新しいタイプの原子炉の開発が進められています。 その開発において、「実証炉」は重要な役割を担っています。「実証炉」とは、文字通り、新しく開発された原子炉の設計や技術が実際に機能することを証明するための原子炉です。新しい原子炉は、実験室での研究開発の後、実際に発電所として稼働する前に、実用規模に近い大きさで「実証炉」として建設されます。そして、「実証炉」で様々な試験運転を行い、新しい技術や設計の有効性や安全性を確認します。 「実証炉」での試験運転では、実際に原子炉を運転した時に想定される様々な状況を再現し、新しい原子炉が安全に、そして効率よく運転できるかを確認します。例えば、地震や津波など、自然災害が起きた場合でも安全に運転を続けられるか、長期間にわたって安定的に電力を供給できるかなどを調べます。これらの試験運転を通して、新しい原子炉の設計や技術の欠陥や問題点を発見し、改善することで、より安全で信頼性の高い原子力発電の実現を目指します。
原子力発電の基礎知識

エネルギー源の主力:加圧水型原子炉

- 加圧水型原子炉とは加圧水型原子炉(PWR)は、現在、世界中で最も広く利用されている原子炉形式の一つです。その名の通り、原子炉内で発生する熱を効率的に活用するために、水を高圧状態に保つという特徴があります。原子炉の中では、ウラン燃料の核分裂反応によって膨大な熱エネルギーが発生します。この熱を利用して水を沸騰させ、蒸気を作ります。この蒸気がタービンを回し、発電機を駆動することで電気が生み出されます。PWRでは、原子炉と蒸気発生器と呼ばれる装置がそれぞれ独立して設置されています。原子炉内で高圧に保たれた水は、放射性物質を含んだまま配管を通って蒸気発生器へと送られます。蒸気発生器では、原子炉から運ばれてきた高温・高圧の水の熱が、二次側の水に伝わり蒸気を発生させます。この二次側の蒸気は放射性物質を含んでいないため、安全にタービンを回して発電することができます。PWRは、原子炉で発生した熱を直接タービンに送る沸騰水型原子炉(BWR)に比べて、構造が複雑で設備費用も高額になるという側面があります。しかし、放射性物質の管理が容易であるため、安全性が高いという大きなメリットがあります。世界中で稼働する原子力発電所の多くがPWRを採用しており、今後も原子力発電の主要な炉型として、重要な役割を担っていくと考えられています。
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発電のしくみ:動力炉の役割

- 動力炉エネルギー変換の中心原子力発電所の中核を担うのが動力炉です。原子力発電は、ウラン燃料の核分裂反応によって生み出される莫大な熱エネルギーを、電力に変換する仕組みです。この熱エネルギーを生み出す装置こそが動力炉であり、原子炉の中でも特に発電や船舶の推進など、動力源として利用されるものを指します。動力炉は、研究や実験を目的とする原子炉とは明確に区別されます。研究炉は、中性子線や放射性同位元素を生成するために利用される一方、動力炉は、いかに効率よく熱エネルギーを発生させ、電力を安定供給できるかという点に設計の重点が置かれています。動力炉の中には、核分裂反応を制御するための炉心、熱エネルギーを運び出す冷却材、そして核分裂反応の速度を調整する制御棒など、様々な装置が組み込まれています。これらの装置が複雑に連携することで、安全かつ安定的に熱エネルギーを生み出し続けることが可能となります。原子力発電は、化石燃料を使用しないため、地球温暖化対策の切り札として期待されています。動力炉は、その原子力発電を支える心臓部として、未来のエネルギー供給を担う重要な役割を担っていると言えるでしょう。
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電力供給の要!火力発電の仕組みと役割

- 火力発電とは 火力発電は、私たちが日常生活で使う電気を生み出す主要な方法の一つです。 石油や石炭、天然ガスなどの燃料を燃やし、その熱エネルギーを使って電気を作る仕組みです。 火力発電所では、まず燃料を燃焼させて高温のガスを発生させます。この高温ガスはボイラーと呼ばれる装置の中で水を沸騰させ、高圧の水蒸気を作り出します。この高圧の水蒸気がタービンと呼ばれる巨大な羽根車に勢いよく吹き付けられることで、タービンは高速回転します。そして、タービンの回転エネルギーを利用して、発電機が電気エネルギーを発生させるのです。 火力発電は、必要な時に必要なだけ電気を作り出すことができるという点で利点があります。また、他の発電方法と比べて発電コストが低いというメリットもあります。一方で、発電時に二酸化炭素などの温室効果ガスを排出するため、地球温暖化の原因の一つとされています。近年では、二酸化炭素の排出量を抑える技術開発や、排出された二酸化炭素を回収・貯留する技術開発なども進められています。
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未来の発電方式:電磁流体発電

- 電磁流体発電とは電磁流体発電は、これまでの火力発電とは異なる仕組みで電気エネルギーを生み出す、未来のエネルギー源として期待される発電技術です。火力発電と同様に、電磁流体発電でも燃料を燃焼させて高温のガスを発生させます。しかし、従来の火力発電のようにタービンを回転させて発電機を駆動するのではなく、電磁流体発電では、高温のガスを直接利用して電気エネルギーを発生させる点が大きく異なります。この高温ガスは、単なる熱い空気ではありません。電気を帯びた特別な気体、プラズマと呼ばれる状態になっています。プラズマは、原子核と電子がバラバラに飛び回っている状態であり、電気を通す性質を持っています。電磁流体発電では、このプラズマを磁場の中を高速で通過させることで電気を発生させます。これは電磁誘導と呼ばれる現象を利用したもので、磁場の中を導電体が移動すると、電流が発生するという原理に基づいています。電磁流体発電は、タービンや発電機などの回転部分を必要としないため、エネルギーの損失が少なく、高い発電効率を実現できる可能性を秘めています。また、排熱の温度も低く抑えられるため、環境負荷の低減にも貢献できると期待されています。
原子力発電の基礎知識

エネルギーミックス:電力の未来を形作る

電力会社は、私たちが日々当たり前のように電気を使えるよう、絶え間なく電気を送り届けています。これを「電力供給」と呼びますが、安定した電力供給を実現するためには、どのような方法で発電した電気をどのくらいの割合で組み合わせるのかを綿密に計画する必要があります。この組み合わせのことを「電源構成」と呼びます。 電源構成は、いわば電力のレシピのようなものです。レシピには様々な食材を組み合わせることで、栄養バランスを整えたり、味のバリエーションを増やしたりする役割がありますよね。電源構成も同様に、複数の発電方法を組み合わせることで、それぞれのメリットを活かしながらデメリットを補完し、安定供給と環境への影響の低減を両立させることを目指しています。 発電方法には、水力発電、火力発電、太陽光発電、原子力発電など、様々な種類があります。水力発電は天候によって発電量が大きく変動することがあり、火力発電は燃料を海外からの輸入に頼っているため、国際情勢の影響を受けやすいという側面があります。太陽光発電は天候に左右されやすく、夜間は発電できません。このように、どの発電方法にも一長一短があります。そのため、特定の発電方法に偏ることなく、それぞれの特性を考慮しながらバランスの取れた電源構成を構築することが、安定した電力供給を実現する上で非常に重要なのです。
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LNGコンバインドサイクル:高効率発電の仕組み

社会が発展し、人々の生活が豊かになるにつれて、電気を使う場面はますます増えています。私たちの暮らしに欠かせない電気ですが、その需要を満たすためには、より効率的な発電方法が求められています。 火力発電は、石油や石炭などの燃料を燃やして電気を作りますが、近年注目されているのが、天然ガスを利用したコンバインドサイクル発電です。この方法は、従来の火力発電と比べて、エネルギーを無駄なく使うことができるため、環境にも優しい発電方法として期待されています。 コンバインドサイクル発電では、まず天然ガスを燃焼させてガスタービンを回し、電気を作ります。次に、ガスタービンから排出される高温の排ガスを利用して蒸気を作ります。この蒸気で蒸気タービンを回し、さらに発電を行います。このように、コンバインドサイクル発電は、二つの異なる種類のタービンを組み合わせることで、高い効率を実現しています。 コンバインドサイクル発電は、燃料である天然ガスを効率的に利用できるため、二酸化炭素の排出量を抑えることができます。また、発電効率が高いことから、発電コストも抑えることが期待できます。環境問題への意識が高まる中、地球温暖化対策としても有効な手段として、コンバインドサイクル発電は、次世代の発電システムの中心的な役割を担うと期待されています。
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分散型電源:エネルギーの地産地消

私たちの生活に欠かせない電力は、これまで都市部から離れた場所に設置された大規模な発電所で作られ、送電線を通じて届けられてきました。しかし近年、エネルギーの地産地消や環境への負荷軽減といった観点から、電力の作り方にも変化が生まれています。 その代表例が「分散型電源」です。従来のように遠く離れた場所から電気を送るのではなく、太陽光発電や風力発電など比較的小規模な発電設備を、私たちの住む街や建物に近い場所に設置し、そこで作った電気を使う仕組みです。 分散型電源には、送電によるエネルギーロスが少ない、災害時でも地域で電力を供給できる可能性があるなど、多くのメリットがあります。また、地域で必要な電力を地域で賄うことで、エネルギー自給率の向上や地域経済の活性化にも繋がります。 環境問題への意識が高まる中、分散型電源は、これからの持続可能な社会を作る上で、ますます重要な役割を担っていくと考えられています。
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エネルギー源としてのC重油

原油は、私たちの生活に欠かせない燃料や様々な製品の原料となる貴重な資源です。原油からガソリンや灯油、軽油などを精製していくと、最後にドロドロとした黒っぽい液体状の物質が残ります。これがC重油と呼ばれるものです。C重油は、原油を精製する過程で最後に残る、最も沸点の高い成分で、JIS規格では重油の中でも特に粘り気が強い第3種に分類されます。 そのほとんどが蒸留残渣油という、原油から精製しやすい成分を取り除いた後に残る成分で構成されています。 C重油は、主に工場のボイラーや大型船舶の燃料として利用されています。粘り気が強いため、そのままでは燃料として使用することが難しく、温めて粘度を下げてから燃焼させます。 近年では、地球温暖化対策として、二酸化炭素排出量の少ない燃料への転換が求められています。C重油は燃焼時に多くの二酸化炭素を排出するため、環境負荷の面からその利用は見直されつつあります。しかしながら、エネルギー資源としての価値は依然として高く、よりクリーンな燃料として活用するための技術開発も進められています。
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進化する火力発電:LNG複合発電の仕組みと利点

液化天然ガス(LNG)は、天然ガスを冷却し、液体にしたものです。液化すると体積が気体の状態と比べて約600分の1になるため、船舶などによる長距離輸送や貯蔵に適しています。近年、環境負荷が低いエネルギー源として注目を集めており、発電の燃料としても重要な役割を担っています。 LNGは燃焼した際に、石油や石炭などの化石燃料と比べて二酸化炭素の排出量が少なく、大気汚染の原因となる硫黄酸化物や窒素酸化物をほとんど排出しないという特徴があります。そのため、地球温暖化対策としても有効なエネルギー源とされています。 また、LNGは世界各地で産出され、日本にも複数の国から輸入されています。そのため、特定の国へのエネルギー依存度を低減できるという利点もあります。 これらの利点から、LNGは火力発電の燃料としてだけでなく、都市ガスや工業用の燃料としても幅広く利用されています。今後も、環境負荷の低いエネルギー源として、LNGの需要は世界的に拡大していくと予想されています。
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原子力発電所のしくみ:エネルギーを生み出す仕組みを解説

原子力発電は、ウランなどの原子核が核分裂を起こす際に生じる膨大なエネルギーを利用して電気を起こす仕組みです。物質を構成する最小単位である原子が、さらに小さな原子核と電子に分かれ、その原子核が分裂する際に莫大なエネルギーを放出します。このエネルギーは、石炭や石油などを燃やす火力発電と比較して、桁違いに大きく、効率的にエネルギーを取り出すことができます。 具体的には、核分裂で発生した熱エネルギーを用いて水を沸騰させ、高温・高圧の蒸気を作り出します。この蒸気の力でタービンを回転させ、その回転エネルギーが発電機に伝わることで電気が作られます。火力発電と同様の発電プロセスを経る点は同じですが、エネルギー源が核分裂である点が大きく異なります。原子力発電は、二酸化炭素排出量の少ないクリーンなエネルギー源として期待されていますが、一方で放射性廃棄物の処理など、安全性確保が重要な課題となっています。
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LNG冷熱発電:エネルギーの有効活用

- はじめに 都市ガスや発電の燃料として私たちの暮らしに欠かせないものとなっているのが、液化天然ガス(LNG)です。LNGは、天然ガスをマイナス160℃という極低温まで冷却し、液体にしたものです。液体にすることで体積が約600分の1まで小さくなるため、効率的に輸送・貯蔵することができます。 LNGは利用する際に気体に戻す必要がありますが、この気化の過程で周囲から大量の熱を奪うという特性があります。 LNG冷熱発電は、この気化の際に発生する冷熱エネルギーを利用した発電方法です。 従来の発電方法では、燃料を燃焼させて発生する熱エネルギーを利用していましたが、LNG冷熱発電は、気化熱という自然の力を利用するため、エネルギー効率が高く、環境負荷の低い発電方法として注目されています。
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眠れる熱を呼び覚ます、バイナリー式地熱発電

私たちが日常生活で何気なく使っている電気の中には、実は地球の奥深くから湧き上がる地熱の力も利用されています。地熱発電は、その地球が持つ熱エネルギーを電気に変換する、環境に配慮した発電方法として知られています。 地熱発電の中でも、従来の方法とは異なる仕組みで発電を行う「バイナリー式地熱発電」が近年注目を集めています。従来の地熱発電は、高温の蒸気や熱水を利用する必要がありました。そのため、発電できる場所は限られていました。しかし、バイナリー式地熱発電は、比較的低い温度の熱水でも発電が可能です。従来の方法では利用できなかった場所でも、地熱発電の可能性が広がっているのです。 バイナリー式地熱発電では、地下から汲み上げた熱水を、別の液体に熱を伝えて気化させます。その蒸気の力でタービンを回し発電を行います。熱水ともう一方の液体が直接触れ合うことはありません。 このような仕組みを持つバイナリー式地熱発電は、従来の方法と比べていくつかの利点があります。まず、低い温度の熱水でも発電できるため、より多くの場所で地熱発電が可能になるという点です。また、温室効果ガスの排出量が少ないことも大きな利点です。さらに、発電時に騒音が発生しにくいという利点もあります。そのため、温泉地など、騒音が問題となる地域でも導入しやすいという特徴があります。 バイナリー式地熱発電は、地球に優しいエネルギーとして、今後ますます期待されています。
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発電における排出係数:クリーンなエネルギーを考える

- 排出係数とは ある製品やサービスを生産する際に、どれだけの温室効果ガスが排出されるのかを示した指標を排出係数と呼びます。 単位は、例えば二酸化炭素であれば「二酸化炭素の重量(kg) ÷ 生産量」といった形で表されます。この指標を用いることで、様々な製品やサービスが環境に与える負荷を比較検討することが可能になります。 例えば、1kWhの電気を火力発電で作る場合と、原子力発電で作る場合では、排出される二酸化炭素の量が大きく異なります。火力発電では石炭や石油などの化石燃料を燃焼させるため、大量の二酸化炭素が発生します。一方、原子力発電ではウラン燃料の核分裂反応を利用して発電するため、発電時に二酸化炭素は発生しません。このように、同じ電気を作る場合でも、発電方法によって排出係数は大きく異なるのです。 排出係数は、環境への負荷を低減するための取り組みを評価する上でも重要な役割を果たします。 新しい技術の導入や、省エネルギー化などの取り組みによって、製品やサービスの排出係数を減らすことができれば、地球温暖化の防止に貢献することができます。 また、消費者にとっても、商品やサービスを選ぶ際に排出係数を参考にすれば、環境に配慮した選択をすることができます。
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発電の環境影響を測る排出係数:その重要性とは?

- 排出係数とは何か排出係数とは、ある行動や生産活動によって、環境を汚染する物質がどれほど排出されるのかを示す数値です。簡単に言うと、私たちが何かを行う際に、環境にどれだけの負荷をかけるのかを測るための指標の一つと言えます。例えば、火力発電所が電気を作り出す際に排出される二酸化炭素の量や、自動車を走らせる際に排出される排気ガス量などを表す際に、この排出係数が使われます。排出係数の単位は、対象となる行動や生産活動と、排出される物質によって異なります。電気を作るために排出される二酸化炭素の量であれば、電気1キロワット時あたり何グラムと表現されますし、自動車の走行距離と排気ガスの量の関係であれば、1キロメートルあたり何グラムと表現されます。排出係数は、環境への影響を評価したり、地球温暖化対策などを考える上で非常に重要な指標となります。例えば、同じ電気を作るにしても、火力発電と原子力発電では、排出される二酸化炭素の量が大きく異なります。火力発電は石炭や石油などを燃やすため、多くの二酸化炭素を排出しますが、原子力発電は核分裂反応を利用するため、発電時に二酸化炭素をほとんど排出しません。このように、排出係数を比較することで、それぞれの行動や生産方法が環境に与える影響の違いを把握することができます。
その他

水力発電:自然の力を利用したクリーンエネルギー

水力発電は、自然の力を巧みに利用した発電方法です。 高い位置にあるダムに貯められた水は、位置エネルギーという大きな力を秘めています。この水を下流へと導くことで、位置エネルギーが運動エネルギーへと変化します。 ダムには水車を回すための水車発電機が設置されており、流れ落ちる水の勢いで水車が力強く回転します。そして、この水車の回転エネルギーが、発電機を通じて電気エネルギーへと変換されるのです。水力発電は、水の流れという自然のエネルギーを利用するため、燃料を必要とせず、二酸化炭素などの温室効果ガスを排出しません。環境への負荷が非常に小さい発電方法として、地球温暖化防止の観点からも注目されています。また、一度建設されたダムは、適切に維持管理することで、半永久的に発電を続けることが可能です。これは、資源の枯渇が懸念される現代において、大きな利点と言えるでしょう。
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未来のエネルギー:燃料電池

- 燃料電池とは燃料電池は、水素などの燃料が持つ化学エネルギーを、直接電気エネルギーに変換する発電装置です。未来のエネルギー源として大きな期待が寄せられています。従来の発電方法では、石油や石炭などの燃料を燃焼させて熱エネルギーを得ていましたが、燃料電池は全く異なる仕組みです。燃料電池では、水素と酸素を化学反応させて電気エネルギーと熱エネルギーを取り出します。この化学反応は、中学校の理科の実験で習った、水の電気分解とちょうど逆の反応にあたります。燃料電池の最大の特徴は、燃料を燃焼させずに発電できることです。そのため、従来の発電方法と比べてエネルギー変換効率が非常に高く、二酸化炭素の排出量も大幅に削減できます。環境問題への意識が高まる現代社会において、まさに理想的な発電方法と言えるでしょう。燃料電池は、まるで小さな発電所のように、様々な場所で活躍が期待されています。家庭用燃料電池は、すでに商品化されており、自宅で電気とお湯を作り出すことができます。また、自動車の動力源としても注目されており、電気自動車と並んで、次世代自動車の主役の座を狙っています。さらに、スマートフォンやパソコンなどの携帯機器の電源としての活用も研究されており、私たちの生活を大きく変える可能性を秘めています。
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発電所の電力:ネット出力とは?

電力会社の発電所がどれだけの電気を作ることができるのかを知るために、発電量という指標が使われます。この発電量には、大きく分けて二つの種類があります。 一つは、発電機が作り出す電力の総量を表す総発電量です。これは、発電所の能力を最大限に引き出した場合に、どれだけの電気を発電できるのかを示す指標であり、グロス電力や発電端電力と呼ばれることもあります。 もう一つは、ネット電気出力と呼ばれるものです。これは、総発電量から発電所自身で使用される電力を差し引いた値です。発電所では、設備を動かすために、発電した電気の一部を自分たちで使っています。このため、実際に電力網に送り出せる電気の量は、総発電量よりも少なくなります。ネット電気出力は、送電端電力とも呼ばれ、電力会社が販売できる電気の量を示す重要な指標となります。
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発電への応用も!熱電素子の仕組み

- 熱電素子とは?熱電素子とは、熱エネルギーを電気に、または電気を熱に直接変換できる、未来のエネルギー技術としても期待される小さな装置です。身近なものでは、腕時計の動力源や、工場などで機械の温度を一定に保つために使われています。この素子は、ゼーベック効果とペルチェ効果という二つの効果を利用しています。ゼーベック効果とは、異なる二種類の金属や半導体を接合して、その両端に温度差をつけると電圧が発生する現象のことです。一方、ペルチェ効果とは、ゼーベック効果とは逆に、二つの金属に電気を流すと、接合点で熱の吸収や放出が起こる現象を指します。熱電素子は、これらの効果を利用することで、廃熱を電気に変換して有効活用することができます。例えば、工場や自動車から排出される熱や、太陽熱などを電気に変換することで、エネルギーの効率化や省エネルギー化に貢献できます。熱電素子の実用化には、変換効率の向上やコスト削減など、まだいくつかの課題が残されています。しかし、近年では材料科学の進歩により、より高性能な熱電材料の開発が進められています。近い将来、私たちの身の回りで、熱電素子が活躍する日が来るかもしれません。
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次世代の発電方式:溶融炭酸塩型燃料電池

近年、世界経済の成長や産業の発展に伴い、エネルギー需要は増加の一途を辿っています。同時に、地球温暖化や気候変動などの環境問題も深刻化しており、持続可能な社会を実現するために、環境負荷の低いクリーンなエネルギーの利用が求められています。 このような背景から、次世代のエネルギー変換技術として燃料電池が期待されています。燃料電池は、水素などの燃料と酸素を化学反応させて電気エネルギーを直接取り出す装置であり、従来の発電方式に比べてエネルギー変換効率が高く、二酸化炭素排出量を抑制できるなどの利点があります。 数ある燃料電池の中でも、溶融炭酸塩型燃料電池は高温で作動するという特徴を持ち、高い発電効率と排熱の有効活用という点で注目されています。溶融炭酸塩型燃料電池は、電解質に溶融した炭酸塩を用いており、600℃以上の高温で作動します。高温で作動するため、発電効率が高く、排熱を蒸気タービンや地域暖房などに有効活用することができます。 これらの利点から、溶融炭酸塩型燃料電池は、大規模発電所や工場、ビルなどの分散型電源として、将来のエネルギー供給システムにおいて重要な役割を担うと期待されています。
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新エネルギー発電:未来へのエネルギーシフト

- 新エネルギー発電とは私たちは、日々の暮らしの中で電気を使わない日はないと言っても過言ではないほど、電気に依存した生活を送っています。 この電気を生み出す方法の一つに、火力発電や原子力発電といった従来型の発電方法があります。 一方で、近年注目されているのが「新エネルギー発電」です。 新エネルギー発電とは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、自然界に存在するエネルギーを利用して電気を作る発電方法です。 石油や石炭などのように、いずれは枯渇してしまう資源とは異なり、これらのエネルギー源は自然の力で繰り返し生まれるため、半永久的に利用し続けることができます。 このような特徴から、新エネルギーは、持続可能な社会を実現するための鍵として、世界中で期待が高まっています。特に、太陽光発電や風力発電は、近年技術革新が進み、発電コストが大幅に下がったことで、急速に普及が進んでいます。 また、地熱発電は、火山が多い日本では大きな可能性を秘めたエネルギー源であり、温泉地などを中心に導入が進んでいます。 バイオマス発電は、木材や廃棄物などの生物資源を燃料とする発電方法で、資源循環型社会の実現にも貢献すると期待されています。新エネルギー発電は、地球温暖化の防止やエネルギーの安定供給など、私たち人類にとって多くの利点をもたらします。 今後、それぞれの発電方法のメリット・デメリットを理解し、それぞれの地域特性に合ったエネルギーミックスを進めていくことが重要です。
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商業用原子炉:エネルギー生産の主力

第二次世界大戦後、世界は急速な経済発展を遂げ、それに伴いエネルギー需要も急増しました。従来の火力発電は、燃料となる石炭や石油の輸入に頼らざるを得ず、安定供給に課題がありました。そこで、資源の制約が少なく、大量かつ安定的にエネルギーを生み出せる原子力発電に大きな期待が寄せられるようになったのです。 原子力発電の実用化に向けた研究開発は、当初、軍事目的と密接に関係していました。しかし、平和利用への転換が進む中で、発電コストの低減や運転の安全性など、実用化に向けた課題が明確化されていきました。そして、これらの課題を克服すべく、経済性と効率性を追求した原子炉の開発が進められました。こうして、厳しい安全性審査や経済性評価をクリアし、実際に電力供給を行うことができるようになった原子炉が「商業炉」と呼ばれるようになったのです。これは、原子力発電が単なる夢物語ではなく、現実社会のエネルギー問題解決に貢献しうる技術として認められたことを意味する大きな転換点となりました。
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発電の要、商用炉:エネルギー源としての原子力

原子力発電は、ウランなどの核燃料が持つ莫大なエネルギーを、熱エネルギーに変換し、電気エネルギーに変える技術です。この原子力発電において、中心的な役割を担うのが、商用炉と呼ばれる原子炉です。商用炉とは、その名の通り商業目的、具体的には発電を目的として運転される原子炉のことを指します。原子炉の開発の歴史を紐解くと、発電を目的とした原子炉の開発が圧倒的に進んでおり、現在では「商用炉=発電用原子炉」と認識されていると言っても過言ではありません。 発電用の商用炉は、大きく分けて軽水炉と重水炉の2つの種類に分類されます。軽水炉は、私たちが日常的に目にしたり、使用したりする水と同じ、軽水と呼ばれる水を冷却材および減速材として利用する原子炉です。一方、重水炉は、軽水よりも中性子を減速させる効果の高い、重水と呼ばれる水を冷却材および減速材として利用する原子炉です。 世界的に見ると、現在稼働している原子力発電所のほとんどは軽水炉を採用しています。これは、軽水炉が重水炉に比べて、建設費が安く、運転実績が豊富であることなどが理由として挙げられます。しかし、重水炉は、ウラン資源の利用効率が高く、核燃料サイクルの観点から優れているという利点も持ち合わせています。