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原子力の安全

原子炉の安全運転を支える核計装

原子炉は、ウランなどの核燃料が核分裂反応を起こすことで莫大なエネルギーを生み出す施設です。この反応を安全かつ安定的に持続させるためには、原子炉内の核分裂反応の程度を調整することが不可欠です。この調整を担うのが「原子炉の制御」であり、原子炉の安全運転において最も重要な要素の一つです。 原子炉の制御を行うためには、まず原子炉内で起こっている核分裂反応の状態を正確に把握する必要があります。この状態を示す重要な指標となるのが「中性子」です。中性子は、核分裂反応に伴って放出され、さらに他の原子核に衝突して新たな核分裂反応を引き起こす役割を担っています。つまり、原子炉内での中性子の数は、核分裂反応の程度、ひいては原子炉の出力を左右する重要な要素となるのです。 原子炉内の中性子の状態を計測し、その情報を元に原子炉の運転を監視・制御するのが「核計装」の役割です。核計装は、中性子検出器など様々な機器から構成され、原子炉内の中性子の数やエネルギーレベルなどの情報をリアルタイムで計測します。そして、これらの計測データは制御システムに送られ、原子炉の出力を一定に保つ、あるいは変化させるといった制御が行われます。 このように、核計装は、原子炉の安全運転を支える上で欠かせない技術と言えるでしょう。
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原子力施設の安全を守るエアサンプラ

- エアサンプラ空気中の目に見えない放射性物質を捕らえる装置エアサンプラは、原子力発電所などから空気中に放出される、微量の放射性物質を測定するための装置です。放射性物質は目に見えませんし、臭いもしないため、私達がその存在に気付くことはできません。しかし、健康への影響を考慮すると、たとえ微量であっても、その量を正確に把握することは非常に重要です。エアサンプラは、まさにその役割を担っています。エアサンプラの仕組みは、空気清浄機とよく似ています。空気清浄機が部屋の空気を綺麗にするためにゴミや埃を吸い込むように、エアサンプラも周囲の空気を吸い込みます。しかし、ただ空気を吸い込むだけではありません。エアサンプラの中には、測定対象となる放射性物質の種類に応じて、特別なフィルターが設置されています。例えば、空気中に漂うガス状の放射性物質を捕まえるためには、活性炭繊維ろ紙などが用いられます。活性炭は、小さな穴がたくさん空いた構造をしていて、その穴にガス状の物質を吸着する性質があるためです。一方、粒子状の放射性物質を捕集する場合は、繊維系ろ紙などが使われます。これは、空気中の微粒子を繊維に絡めとることで捕集する仕組みです。このように、エアサンプラは目に見えない放射性物質をフィルターで捕らえ、その種類や量を測定することで、私達の安全を守っています。
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原子力施設の清掃:スミア試験とは?

原子力発電所のような施設では、放射線を出して変化する物質を扱うため、目に見えない微量な物質の管理が安全確保の観点から極めて重要となります。発電所内の機器や配管、床、壁など、あらゆる場所にこれらの物質が付着していないかを定期的に検査する必要があります。これを表面汚染検査と呼びますが、その中でも「スミア試験」と呼ばれる検査方法が広く用いられています。 スミア試験では、まず専用の濾紙を使って検査対象の表面を拭き取ります。この濾紙には、微量の放射性物質が付着している可能性があります。次に、この濾紙を専用の装置にかけることで、付着している放射性物質の種類や量を測定します。 スミア試験は、作業員の安全確保だけでなく、放射性物質による環境汚染を防ぐ上でも重要な役割を担っています。原子力発電所では、スミア試験を含めた様々な方法を用いることで、目に見えない放射性物質を厳重に管理し、安全な運転を継続しています。