軽水

原子力発電の基礎知識

原子炉の減速材:減速能とその役割

原子力発電は、ウランなどの核分裂しやすい物質が中性子を吸収して核分裂を起こす際に生じる莫大なエネルギーを利用しています。この核分裂反応を効率的に進めるには、中性子のエネルギーを適切に調整することが重要となります。なぜなら、核分裂によって新たに生み出される中性子は非常に高いエネルギーを持っているのに対し、ウラン235やプルトニウム239といった核分裂しやすい物質は、エネルギーの低い中性子ほど核分裂を起こしやすいという性質を持っているからです。そこで、原子炉の中では中性子のエネルギーを下げるために、減速材と呼ばれる物質が用いられます。減速材としては、水や黒鉛などが使われています。これらの物質は、中性子と衝突することでそのエネルギーを吸収し、中性子の速度を落とす役割を果たします。 水分子は水素原子を含んでおり、水素原子は中性子とほぼ同じ重さを持っています。このため、水分子と中性子が衝突すると、ビリヤードの球がぶつかり合うように、中性子は効果的にエネルギーを失い、速度を落とすことができます。このようにして中性子のエネルギーを適切に調整することで、核分裂反応の効率を高め、安定したエネルギー生産を可能にしているのです。
原子力発電の基礎知識

原子力発電の心臓部!一次冷却材とその役割

原子力発電所の中心には、原子炉と呼ばれる巨大な設備が存在します。ここではウラン燃料の核分裂反応によって想像を絶する熱が生まれます。この熱をいかに安全かつ効率的に取り出すかが、発電の成否を分ける重要な鍵となります。 この重要な役割を担うのが一次冷却材です。一次冷却材は原子炉の中で直接熱を受け取り、外部へと運ぶ役割を担っています。例えるなら、原子炉という巨大な心臓を流れる血液のようなものです。 原子炉の種類によって、水やヘリウムガス、液体ナトリウムなどが一次冷却材として使用されます。水を使う場合、沸騰を防ぐために高い圧力をかけておく必要があります。水は熱を吸収すると蒸気へと変化しますが、この蒸気はタービンを回し、発電機を動かすための動力源となります。水は熱を運ぶだけでなく、発電の要となる蒸気を作り出す役割も担っているのです。 原子力発電は、ウラン燃料のエネルギーを熱に変え、さらに運動エネルギーに変換することで電気を生み出しています。その過程で、原子炉内で発生した熱を安全かつ確実に運び出す一次冷却材は、発電の要とも言うべき重要な役割を担っているのです。