未来への布石:FaCTプロジェクト
エネルギー源の確保と地球温暖化への対策は、現代社会にとって避けて通れない課題です。これらの課題を解決する手段として期待を集めているのが、高速増殖炉サイクルです。高速増殖炉は、ウラン資源を効率的に利用できるだけでなく、二酸化炭素の排出を大幅に抑えられる可能性を秘めた、まさに夢の原子炉と言えるでしょう。
高速増殖炉サイクルでは、ウラン燃料をより効率的に利用することで、天然ウランからエネルギーを取り出す割合を高めることができます。現在の原子力発電所では、天然ウランのうち燃料として使用できるウラン235はわずか0.7%に過ぎません。しかし、高速増殖炉では、ウラン238を核分裂可能なプルトニウムに変換することで、天然ウランをほぼ全て燃料として利用することが可能となります。これは、限られたウラン資源を有効活用し、エネルギー自給率の向上に大きく貢献できることを意味します。
さらに、高速増殖炉は、運転時に排出する二酸化炭素の量が極めて少ないという利点も持ち合わせています。地球温暖化が深刻化する中、二酸化炭素排出量の大幅な削減は喫緊の課題です。高速増殖炉は、二酸化炭素排出量を抑えながら、エネルギー需要を満たすことのできる、環境に優しい原子力発電技術として期待されています。
高速増殖炉サイクルの実用化には、技術的な課題を克服していく必要があります。日本では、過去に高速増殖炉「もんじゅ」の開発が行われましたが、ナトリウム漏洩事故などにより、実用化には至りませんでした。しかしながら、これらの経験と教訓を活かし、新たな高速増殖炉の開発プロジェクトであるFaCTプロジェクトがスタートしています。FaCTプロジェクトは、日本の高速増殖炉サイクル実用化に向けた挑戦の象徴と言えるでしょう。