JCO臨界事故

原子力の安全

原子力災害の切り札:遠隔情報収集ロボットRESQ

電力会社や関連機関にとって、原子力発電所のような重要な施設における安全確保は最優先事項です。しかし、想定外の事故が発生した場合、現場は非常に危険な状況となる可能性があります。高い放射線量や飛散した危険物質は、人が近づくことさえ困難な過酷な環境を作り出します。このような状況下では、事故の詳細な状況把握や迅速な対応が極めて困難になります。 そこで、過酷な環境下での情報収集活動において重要な役割を担うのが、遠隔操作が可能な情報収集ロボットRESQです。RESQは、人間が立ち入ることができない危険な場所にも遠隔操作で侵入し、カメラやセンサーを用いて現場の状況を詳細に把握することができます。 RESQは、高い放射線量の中でも動作可能な耐放射線性を備えています。また、瓦礫や障害物を乗り越えるための高い走破性を持ち、転倒時でも自動的に起き上がることが可能です。これらの機能により、RESQは事故現場の状況把握に必要な情報を、安全かつ確実に収集することができます。 RESQの導入により、事故時の状況把握と迅速な対応が可能となり、二次災害の防止や被害拡大の抑制に大きく貢献することが期待されています。
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原子力災害の切り分け役、レスキューロボット

人が立ち入ることが難しい危険な場所において、人の代わりとなって活動するロボットをレスキューロボットと呼びます。原子力災害においても、人が立ち入るには危険な原子力災害の現場で、私たちの代わりに情報収集活動などを行うレスキューロボットは大変重要な役割を担います。遠隔情報収集ロボット(RESQRemote Surveillance Squad)と呼ばれるこれらのロボットは、原子力災害の最前線に立つ、言わば救助隊の先鋒です。 RESQは、人間のように階段を上り下りしたり、扉を開け閉めしたりすることはもちろん、マニピュレーターと呼ばれるロボットアームを器用することで、バルブの操作やサンプル採取など、非常に細かい作業を行うことも可能です。そして、事故現場の状況を把握するために必要な放射線量や温度、現場の様子を映した映像や音などの情報を収集し、それらの情報をリアルタイムで外部にいる作業員に伝達することで、二次災害を防ぎ、迅速な事故収束を支援します。このように、レスキューロボットは、原子力災害において、人の安全を確保し、被害を最小限に抑えるために欠かせない存在と言えるでしょう。
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運転管理専門官:過去に存在した原子力発電所の安全確保の要

1979年3月28日、アメリカのスリーマイル島原子力発電所で発生した事故は、世界中に衝撃を与え、原子力発電の安全性を根底から揺るがす大惨事となりました。この事故は、原子力発電は決して安全とは言い切れないという厳しい現実を突きつけ、各国に原子力安全に対する意識の抜本的な改革を迫るものでした。 日本も、この事故の教訓を重く受け止め、二度と同様の事故を起こさないという強い決意のもと、原子力発電所の安全確保に向けた取り組みを強化しました。その具体的な施策の一つとして、原子力発電所が立地する地域に、国の運転管理専門官を常駐させるという画期的な制度が導入されることになりました。 運転管理専門官は、原子力発電所の運転状況を24時間体制で監視し、原子炉の出力や温度、圧力などを始めとする様々な運転データをチェックし、安全基準を満たしているかを常に確認していました。そして、万が一、異常な兆候や安全上の問題点が発見された場合には、ただちに発電所の運転員に対して、適切な是正措置を講じるように指示するなど、迅速かつ的確な対応を行う重要な役割を担っていました。
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世界が手を組む核燃料の安全: 世界核燃料安全ネットワークとは

1999年9月30日、茨城県東海村にあるJCOウラン加工工場で、核燃料物質を加工中に、核分裂の連鎖反応が制御不能となる臨界事故が発生しました。この事故は、作業員の方々が被ばくするなど、核燃料サイクル施設における深刻な事故として、国際社会に大きな衝撃を与えました。 この事故を教訓に、世界中の原子力関係者は、二度とこのような事故を起こしてはならないという強い決意を新たにしました。そして、事故の原因を徹底的に究明し、その結果を共有するとともに、事業者間で安全に関する情報交換を積極的に行い、互いに学び合い、安全文化を共有し、高めていくことの重要性を再認識しました。この認識に基づき、世界中の核燃料産業に関わる事業者が、自らの経験や教訓を共有し、安全性の向上に向けて共に努力していくための枠組みとして、世界核燃料安全ネットワークが設立されることになりました。