
原子炉の安全装置:緊急停止系
原子力発電は、ウランなどの核燃料が持つ莫大なエネルギーを、電気エネルギーへと変換する効率的な発電方法として知られています。火力発電のように、大気汚染物質である二酸化炭素を排出しないという利点も持ち合わせています。しかし、原子力発電所では、核分裂反応を安全に制御し、発生する放射性物質を適切に管理することが不可欠です。安全性を確保するために、原子炉には多重防護と呼ばれる考え方に基づいた様々な安全装置が設計・設置されています。
その中でも特に重要な役割を担うのが、緊急停止系です。これは、原子炉の運転状態に異常が検知された場合、自動的に制御棒を炉心に挿入し、核分裂反応を停止させるシステムです。制御棒は中性子を吸収する物質で作られており、炉心に挿入されることで核分裂反応を抑制する効果があります。緊急停止系は、地震や津波などの自然災害時にも、原子炉の安全を確保するために自動的に作動するように設計されています。
さらに、原子炉は、放射性物質が外部に漏洩することを防ぐために、堅牢な格納容器で覆われています。格納容器は、厚さ数メートルにも及ぶ鉄筋コンクリート製の構造物で、内部は負圧に保たれ、万が一、放射性物質が漏洩した場合でも、外部への拡散を最小限に抑えるように設計されています。このように、原子力発電所は、多重防護の考え方のもと、高度な安全対策が講じられています。