原子核のささやき:NMRが拓くミクロの世界
私たちが目にする物質は、すべて原子と呼ばれる小さな粒からできています。原子は中心に原子核を持ち、その周りを電子が雲のように覆っています。原子核はプラスの電荷を持つため、まるで小さな磁石のように振る舞います。 この性質を利用して物質の内部を詳しく調べる方法があります。それが「核磁気共鳴」、英語の頭文字をとってNMRと呼ばれる技術です。
NMRでは、まず強い磁場の中に調べたい物質を置きます。すると、原子核の向きが磁場の方向に揃います。次に、特定の周波数の電磁波を照射します。すると、原子核は電磁波のエネルギーを吸収し、まるでコマのように勢いよく回転を始めます。この回転は、原子核の種類や周りの環境によって微妙に異なります。
その後、原子核は吸収したエネルギーを放出し、元の状態に戻ります。この時、放出される電磁波の周波数を精密に測定することで、原子核の種類や周りの原子がどのように結合しているのか、物質がどのような構造をしているのかを知ることができるのです。
このように、NMRは物質を構成する原子核からの微弱な信号を読み解くことで、物質の性質や構造を原子レベルで明らかにすることができるのです。