預託実効線量:内部被ばく線量を考える

預託実効線量:内部被ばく線量を考える

電力を見直したい

『預託実効線量』って、どういう意味ですか?放射性物質を体内に取り込んだ時の被ばく線量のことみたいですが、いまいちよく分かりません。

電力の研究家

そうだね。『預託実効線量』は、体内に取り込んだ放射性物質から、将来にわたって受けるであろう被ばく線量を、最初にまとめて受けたものとして評価した値なんだ。

電力を見直したい

将来にわたって…ということは、長い期間をかけて放射線を浴び続けるということですか?

電力の研究家

その通り。体内に取り込まれた放射性物質は、長い時間をかけて減っていくんだけど、その間も体への被ばくは続くことになる。その影響を分かりやすくするために、『預託実効線量』として、最初にまとめて被ばくしたものと考えるんだ。分かりやすく言うと、将来受け取るであろう放射線の影響を、前払いでもらったと考えてみるイメージかな。

預託実効線量とは。

「預託実効線量」は、原子力発電に関する用語の一つです。これは、放射性物質を体内に取り込んでしまった場合に、それが体外に出るまでの間に受けるであろうと予想される被ばく線量の総量を、取り込んだ時点でまとめて受けたものとして計算したものです。単位は「シーベルト」を使います。人体全体への被ばくの影響を評価する場合に、この「預託実効線量」という値が使われます。 実効線量とは、放射線被ばくによって人体それぞれの臓器や組織がどの程度の影響を受けるかを確率的に示したもので、「E=ΣWT・HT」という式で表されます。ここで、HTは対象となる臓器や組織が受ける線量、WTは臓器や組織によって異なる放射線への sensitivity を表す係数(例えば、生殖腺は0.20、乳房は0.05、甲状腺は0.05)です。体内に放射性物質がある限り、被ばくは続くため、被ばく期間がはっきりしない場合は、放射線作業に従事する人の平均的な就業期間である50年間を基準として、放射性物質を取り込んでから50年間に受けるであろう実効線量を用います。なお、1990年に国際放射線防護委員会(ICRP)から出された勧告が法令化されて以降、「預託実効線量当量」は「預託実効線量」に統一されました。

預託実効線量とは

預託実効線量とは

– 預託実効線量とは放射性物質は、体外にある場合だけでなく、呼吸や飲食によって体内に取り込まれた場合でも、その物質から放出される放射線によって体内被ばくを引き起こします。 体内に取り込まれた放射性物質は、時間の経過とともに体外に排出されていきますが、その間も体内は被ばくし続けることになります。この、体内に取り込まれた放射性物質から受ける線量の評価に用いられるのが「預託実効線量」です。体内に入った放射性物質の種類や量、その人の年齢や代謝によって、将来にわたって受ける線量は異なってきます。預託実効線量は、放射性物質を摂取した時点で、将来、その人が生涯にわたって受けるであろう線量を、まとめて見積もった値のことを指します。例えば、ある放射性物質を摂取した人が、その日から50年間生きて、その間に体内の放射性物質から受ける線量が合計で1ミリシーベルトと計算されたとします。この場合、その人の預託実効線量は1ミリシーベルトとなります。預託実効線量は、放射線業務従事者など、放射性物質を取り扱う可能性のある人々の健康管理に用いられます。また、原子力施設から環境中に放出される放射性物質の影響を評価する場合にも、重要な指標となります。

項目 説明
預託実効線量とは 体内に取り込まれた放射性物質から受ける線量の評価に用いられる指標。放射性物質を摂取した時点で、将来、その人が生涯にわたって受けるであろう線量を、まとめて見積もった値。
算出の考え方 体内に入った放射性物質の種類や量、その人の年齢や代謝によって、将来にわたって受ける線量は異なってきます。
ある放射性物質を摂取した人が、その日から50年間生きて、その間に体内の放射性物質から受ける線量が合計で1ミリシーベルトと計算された場合、預託実効線量は1ミリシーベルト。
用途
  • 放射線業務従事者など、放射性物質を取り扱う可能性のある人々の健康管理
  • 原子力施設から環境中に放出される放射性物質の影響を評価

実効線量と預託実効線量の関係

実効線量と預託実効線量の関係

私たちは日常生活の中で、宇宙や大地など自然界から微量の放射線を常に浴びています。一方、医療現場で使われるレントゲンや、発電などに利用される原子力発電といった人工的な放射線も存在します。
これらの放射線は、私たちの体に様々な影響を及ぼす可能性がありますが、その影響度は体の部位によって異なります。そこで、全身にわたる放射線の影響を総合的に評価するために用いられるのが「実効線量」です。
実効線量は、体の各臓器や組織が受ける放射線の量に、それぞれの臓器・組織が放射線に対してどのくらい弱いかを示す「荷重係数」をかけて計算します。例えば、放射線に弱い臓器は荷重係数が大きいため、実効線量における影響度が高くなります。
「預託実効線量」は、この実効線量を用いて、放射性物質を体内に取り込んだ場合の、将来にわたる影響を評価する値です。体内に取り込まれた放射性物質は、時間が経つにつれて放射能の量が減っていきますが、その間も体内に留まり続けるため、長期間にわたって放射線を出し続けます。預託実効線量は、このように時間とともに変化する放射線の影響を、将来にわたって積算することで評価します。

用語 説明
放射線 自然界や人工的に存在し、人体に影響を与える。影響度は体の部位によって異なる。
実効線量 全身への放射線の影響を総合的に評価する値。臓器・組織ごとの放射線への弱さを考慮する。
荷重係数 臓器・組織が放射線に対してどのくらい弱いかを示す係数。
預託実効線量 放射性物質を体内に取り込んだ場合の、将来にわたる影響を評価する値。時間経過に伴う放射能の減衰を考慮し、影響を積算する。

内部被ばくにおける評価期間

内部被ばくにおける評価期間

放射線による被ばくには、体の外側からの被ばくである外部被ばくと、放射性物質が体の中に入った場合に起こる内部被ばくの二種類があります。外部被ばくの場合、放射線源から離れることで被ばくは終わりますが、内部被ばくは体内に入った放射性物質が体の外に出るまで続きます。体内に取り込まれた放射性物質は、時間の経過とともに放射性崩壊を起こし、その量を減らしていきます。また、体内の代謝機能によっても、汗や尿として体外に排出されていきます。 このように、時間の経過とともに被ばく量は減少していくものの、体内に放射性物質が存在する限り、被ばくは続くということになります。そのため、内部被ばくによる影響を評価するには、どの程度の期間を評価するかが非常に重要になります。 この期間のことを「評価期間」と呼びますが、日本では、放射線業務に従事する人の場合、就業してから50年間と定められています。これは、平均的な就業期間を考慮し、被ばくによる影響を長期的に評価するために設定されています。具体的には、放射性物質を摂取してから50年間の被ばく線量を計算し、その値を「預託実効線量」として用います。 預託実効線量は、内部被ばくによる長期的な影響を評価するための指標となる重要な値です。

被ばくの種類 特徴 期間 指標
外部被ばく 放射線源から離れることで被ばくは終わる
内部被ばく 体内に取り込まれた放射性物質が体の外に出るまで続く
時間経過と代謝機能により排出
評価期間
(放射線業務従事者の場合、就業してから50年間)
預託実効線量

預託実効線量の単位と表記

預託実効線量の単位と表記

– 預託実効線量の単位と表記預託実効線量は、将来にわたって受ける放射線の影響を、現在の時点で評価するために用いられる線量です。その単位は、通常の放射線被ばくによって受ける線量である実効線量と同じく、「シーベルト(Sv)」が用いられます。かつては、「預託実効線量当量」という表記も用いられていました。これは、実効線量が身体の組織や臓器によって異なる放射線の影響度を考慮した線量であるのに対し、預託実効線量は将来にわたって受ける線量を現在の時点で評価するため、その影響度を正確に反映できないことから区別するために用いられていました。しかし、国際放射線防護委員会(ICRP)の1990年勧告以降、預託実効線量も実効線量と同様に、組織や臓器への影響度を考慮した線量として定義されるようになりました。これに伴い、表記も「預託実効線量」に統一され、「預託実効線量当量」という表記は現在では用いられていません。シーベルトは非常に小さな単位であるため、実際には、ミリシーベルト(mSv)やマイクロシーベルト(µSv)といった単位がよく用いられます。1シーベルトは1000ミリシーベルト、1ミリシーベルトは1000マイクロシーベルトに相当します。

項目 内容
預託実効線量の定義 将来にわたって受ける放射線の影響を、現在の時点で評価するために用いられる線量
単位 シーベルト(Sv)
※ミリシーベルト(mSv)、マイクロシーベルト(µSv)もよく使われる
過去の表記 預託実効線量当量
表記が変更された理由 1990年のICRP勧告により、預託実効線量も実効線量と同様に、組織や臓器への影響度を考慮した線量として定義されるようになったため。