共通排出量取引制度:地球温暖化対策の切り札となるか
電力を見直したい
『共通排出量取引制度』って、一体どんなものなんですか?名前だけ聞くと、何か難しそうです…
電力の研究家
なるほど。『共通排出量取引制度』は、簡単に言うと、工場などが排出する温室効果ガスの量を、みんなで決めたルールに従って取引する仕組みのことなんだ。例えば、A工場は排出量削減の目標を達成できそうで、B工場は目標達成が難しそうだという場合に、A工場が削減できた分をB工場に売ったりすることができるんだ。
電力を見直したい
なるほど!排出量を売ったり買ったりできるんですね。でも、なんでわざわざそんな仕組みがあるんですか?
電力の研究家
それは、排出量取引をすることで、全体として効率的に温室効果ガスを減らせるからなんだ。排出量を減らすのが得意な工場は、その分を他の工場に売ることで利益を得られるし、逆に減らすのが苦手な工場は、買うことで目標を達成しやすくなる。そうすることで、無理なく全体で排出量を減らしていこうという狙いがあるんだよ。
共通排出量取引制度とは。
「共通排出量取引制度」は、簡単に言うと、工場や発電所など、たくさんの温室効果ガスを出す事業者に対して、排出できる量の上限を決める制度のことです。この制度は、2005年1月にヨーロッパ連合(EU)で始まりました。元々は、デンマークやイギリスがそれぞれの国で似たような制度を持っていましたが、EU全体で協力して温室効果ガスの排出量を減らすために、1つの制度にまとめられました。この制度では、それぞれの国が、自国の事情に合わせて、どの事業者にどれだけの排出量の上限を割り当てるかを決めます。ただし、EU全体の目標を達成し、EU内の企業が不利にならないように、決められたルールに従う必要があります。また、海外での排出削減活動などによって得られるクレジットを活用することも認められています。これは、それぞれの国がまず率先して国内の取り組みを進めるべきだという考え方に基づいて、ある程度の制限を設けた上で認められています。この制度によって、事業者にとっては、排出量を減らすための技術開発や設備投資などの取り組みが、経済的なメリットにもつながることになります。さらに、2004年にEUに新しく加入した東ヨーロッパの国々も、この制度に参加しています。そのため、EU内の国々は、これらの国々が発行する比較的安価な排出枠を、容易に取得できるようになっています。
排出量取引制度とは
– 排出量取引制度とは排出量取引制度は、企業が排出できる温室効果ガスの量をあらかじめ決められた枠内に収めることを目的とした制度です。この制度では、企業ごとに排出枠が割り当てられます。もし、企業が事業活動を通して排出枠を超える温室効果ガスを排出してしまう場合には、罰金が科せられます。しかし、逆に、企業の努力によって排出量が割り当てられた枠よりも少なかった場合には、その余った排出枠を他の企業に売却することができます。 この仕組みにより、企業は経済的な観点から、自主的に温室効果ガスの排出削減に取り組むよう促されます。例えば、工場の設備を最新のものに切り替えることで、大幅な排出削減を達成できた企業があるとします。この企業は、削減努力の結果、余った排出枠を保有することになります。そして、この余った排出枠を、排出削減が遅れている他の企業に売却することで利益を得ることができます。一方、排出削減が容易ではなく、現状では排出枠を超えてしまいそうな企業は、排出枠を買い取ることで、罰金を回避することができます。排出枠を取引する市場では、需要と供給の関係によって価格が変動します。排出削減が進むにつれて排出枠の価格は下がるため、企業は排出削減設備への投資を促進され、より経済的な方法で排出削減目標を達成することが期待されます。
項目 | 内容 |
---|---|
制度の目的 | 企業が排出できる温室効果ガスの量をあらかじめ決められた枠内に収めること |
排出枠 | 企業ごとに割り当てられる排出量の上限 |
排出枠超過時のペナルティ | 罰金 |
排出枠が余った場合 | 他の企業に売却可能 |
排出枠取引のメリット | – 企業は経済的な観点から自主的に排出削減に取り組むようになる – 排出削減が進むにつれて排出枠の価格が下がるため、企業は排出削減設備への投資を促進される |
ヨーロッパにおける共通排出量取引制度
– ヨーロッパにおける共通排出量取引制度ヨーロッパ連合(EU)では、地球温暖化対策として温室効果ガスの排出量削減に取り組んでいます。その取り組みの一つとして、2005年からEU域内において共通排出量取引制度(EU ETS)が導入されました。これは、それ以前はデンマークやイギリスなど一部の国で個別に実施されていた排出量取引制度を、EU全体で統合し、より広域的な枠組みで温室効果ガスの削減を目指したものです。
EU ETSの大きな特徴は、発電設備を含む一定規模以上の温室効果ガス排出設備が対象となっている点です。これは、発電部門がEU全体の温室効果ガス排出量に占める割合が大きいためです。対象となる事業者は、工場や発電所などから排出される二酸化炭素などの温室効果ガスの量に応じて、EUが発行する排出枠の保有が義務付けられています。もし、事業者の排出量が保有する排出枠を超えた場合は、不足分の排出枠を市場で購入しなければなりません。逆に、排出削減努力などにより排出量が割り当てられた排出枠を下回った場合は、余剰分の排出枠を市場で売却することができます。
このように、EU ETSは経済的な仕組みを活用することで、企業の排出削減努力を促進し、EU全体での温室効果ガス排出削減を効率的に実現することを目指しています。実際、EU ETS導入後、対象となっている産業からの温室効果ガス排出量は減少傾向にあり、その効果は着実に表れています。
制度名 | 対象 | 目的 | メカニズム | 効果 |
---|---|---|---|---|
共通排出量取引制度 (EU ETS) |
発電設備を含む一定規模以上の温室効果ガス排出設備 | 企業の排出削減努力促進 EU全体での温室効果ガス排出削減 |
排出量に応じて排出枠を保有
|
対象産業からの温室効果ガス排出量の減少 |
排出枠の割り当て
– 排出枠の割り当て
欧州連合排出量取引制度(EU ETS)では、各国がそれぞれ独自の排出枠の割り当て計画を策定します。この計画は、単に温室効果ガスの排出削減を目指すだけのものではありません。京都議定書で国際的に合意された排出削減目標に整合するものである必要があり、同時に、EU域内での企業間の競争条件を公平に保つためのルールにも適合しなければなりません。
具体的には、計画は、企業の過去の排出実績、生産量、成長見通し、そして採用している技術などを考慮して作成されます。さらに、計画はEU委員会の審査を受け、環境保全と経済競争のバランスが適切かどうかが評価されます。
このように、EU ETSは排出枠の割り当てにおいて厳しい要件を設けることで、環境保全と経済成長の両立という重要な目標の達成を目指しています。これは、地球全体の持続可能な発展に貢献するための、EUの重要な取り組みの一つと言えるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
制度名 | 欧州連合排出量取引制度(EU ETS) |
排出枠割り当て計画策定 | 各国が個別に策定 |
計画策定の目的 |
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計画策定の考慮事項 |
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計画の審査 | EU委員会が環境保全と経済競争のバランスを評価 |
EU ETSの目標 | 環境保全と経済成長の両立 |
クリーン開発メカニズム(CDM)の活用
– クリーン開発メカニズム(CDM)の活用
地球温暖化対策の一環として、先進国が温室効果ガスの排出量を取引できる制度が導入されています。その中で、企業は、自国の排出削減目標達成のために、発展途上国で排出削減効果の高い事業に投資し、その削減分を自国の排出枠に算入することができます。これをクリーン開発メカニズム(CDM)と呼びます。
CDMは、先進国にとっては費用効果の高い排出削減を、途上国にとっては資金や技術の導入による持続可能な開発を、それぞれ実現できるというメリットがあります。
例えば、日本の企業が、風力発電所の建設など、発展途上国において温室効果ガスの排出削減に貢献する事業に出資した場合、その事業によって削減された排出量の一部または全部を、日本の排出削減目標の達成に利用することができます。
しかし、国内での排出削減努力を怠り、安易に途上国での排出削減に頼ることを避けるため、CDMの利用には一定の制限が設けられています。具体的には、CDMで取得できる排出削減量は、国内での排出削減努力と比較して、一定の割合に抑えられています。
CDMは、地球温暖化対策と持続可能な開発の両立を図るための有効な手段の一つと言えるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
概要 | 先進国が発展途上国の排出削減事業に投資し、その削減分を自国の排出枠に算入できる制度 |
メリット | – 先進国:費用効果の高い排出削減 – 途上国:資金・技術導入による持続可能な開発 |
例 | 日本企業が途上国で風力発電所建設に投資 → 削減された排出量を日本の排出削減目標達成に利用 |
制限 | 国内での排出削減努力を怠ることを避けるため、CDMで取得できる排出削減量に制限 |
意義 | 地球温暖化対策と持続可能な開発の両立を図るための有効な手段 |
共通排出量取引制度の課題
– 共通排出量取引制度が抱える課題
ヨーロッパ連合域内排出量取引制度(EU ETS)は、地球温暖化問題への先進的な取り組みとして世界的に注目されています。企業に温室効果ガスの排出枠を割り当て、排出量を取引できるようにすることで、経済的なインセンティブに基づいた排出削減を目指しています。しかし、その先進性ゆえに、いくつかの課題も指摘されています。
まず、排出枠の価格が経済状況やエネルギー価格の影響を受けやすく、変動が大きいことが挙げられます。価格の乱高下は、企業が長期的な視点に立って設備投資を行うことを阻害する要因となりかねません。この価格変動リスクを軽減するために、排出枠の価格安定化メカニズムの導入など、より予測可能性を高める対策が必要とされています。
また、「炭素リーケージ」の問題も深刻です。これは、排出規制の厳しい国から規制の緩い国へ企業が生産拠点を移転してしまう現象を指します。結果として、地球全体の温室効果ガス排出量の増加につながる可能性もあり、EU ETSの制度設計において考慮すべき重要な課題と言えるでしょう。
EU ETSを地球温暖化対策として真に効果的な制度へと発展させていくためには、これらの課題を克服し、より実効性の高い仕組みを構築していく必要があります。
課題 | 内容 | 対策 |
---|---|---|
排出枠価格の変動 | 経済状況やエネルギー価格の影響を受けやすく、価格の乱高下が企業の長期的な設備投資を阻害する可能性がある。 | 排出枠の価格安定化メカニズムの導入など、予測可能性を高める対策が必要。 |
炭素リーケージ | 排出規制の厳しい国から規制の緩い国へ企業が生産拠点を移転してしまう現象。地球全体の温室効果ガス排出量の増加につながる可能性がある。 | EU ETSの制度設計において考慮すべき重要な課題。 |