電力システムの調整役!揚水発電のしくみ
電力を見直したい
先生、『揚水発電所』って何か教えてください。原子力発電の用語集に載っていたんですけど、よく分からなくて。
電力の研究家
なるほど。『揚水発電所』は、簡単に言うと電気を貯めておくための大きな電池みたいなものなんだ。夜間のように電気があまり使われていない時に、下にある池から上の池へ水をくみ上げておく。そして、昼間のように電気がたくさん必要になった時に、上の池から水を落として、その力で発電機を回して電気を作るんだよ。
電力を見直したい
へえー、水をくみ上げておくことで電気を貯めておくことができるんですね!でも、電気で水をくみ上げて、また電気を作るって、なんか損してないんですか?
電力の研究家
良い質問だね!実は、水をくみ上げるのに使った電気よりも、発電する電気の方が少ないんだ。でも、夜間のように電力があまっている時間帯に電気を使って水をくみ上げておくことで、昼間のように電気がたくさん必要な時間帯に発電できるから、無駄なく電気が使えるようになるんだよ。
揚水発電所とは。
「揚水発電所」は、電気をためておくための発電所です。夜や休みの日など、電気を使う人が少ない時に、余っている電気を使って、低い場所にある貯水池から高い場所にある貯水池にポンプで水を汲み上げます。そして、電気を使う人が多くなった時に、高い場所から低い場所に水を落として水力発電をして、電気を供給します。水を汲み上げるために使う電気と比べて、水を落として発電する電気は約7割なので、実際には電気を消費する施設です。原子力発電所のように、常に一定量の電気を供給する発電所が増えたり、電気の需要の時間変化が大きくなったりしたため、日本では揚水発電所がたくさん作られ、電力の安定供給に役立っています。また、高い場所の貯水池が大きく、川の貯水をできる、普通の水力発電としても使える「混合揚水発電」もあります。
電力の貯蔵庫、揚水発電所
電力需要は時間帯によって大きく変動します。昼間は工場の稼働や家庭での電力消費が増加するため需要が高まりますが、夜間はこれらの活動が減るため需要は低下します。このような電力需要の変動に対応する方法の一つとして、揚水発電があります。
揚水発電所は、標高の異なる二つの貯水池と、水を移動させるための水車、発電機などを備えた発電所です。夜間など電力需要が低い時間帯には、他の発電所で発電された余剰電力を利用して下側の貯水池から上側の貯水池へ水を汲み上げます。そして、電力需要が高まる昼間には、上側の貯水池に貯めた水を下側の貯水池へ落下させ、その水流で水車を回して発電します。
揚水発電は、いわば巨大な蓄電池のような役割を果たすと言えます。夜間の余剰電力を水の位置エネルギーとして貯蔵し、電力需要がピークを迎える昼間に放出することで、電力系統全体の安定供給に貢献しています。また、揚水発電は、太陽光発電や風力発電など、天候に左右されやすい再生可能エネルギーの出力変動を吸収する役割も期待されています。
しかし、揚水発電所の建設には、広大な土地と、環境への影響を最小限に抑えるための careful な計画が必要となります。
時間帯 | 電力需要 | 揚水発電の動作 |
---|---|---|
夜間 | 低い | 余剰電力で水をくみ上げる |
昼間 | 高い | 水を落下させて発電 |
エネルギー効率と役割
エネルギー効率だけを見ると、揚水発電は発電量よりも電力消費量の方が大きくなってしまうという特徴があります。水を高い場所に汲み上げる際にエネルギーを使うため、発電時に得られるエネルギーよりも多くのエネルギーを消費してしまうのです。その効率は約70%程度で、数字だけ見ると一見すると損をしているように思えるかもしれません。
しかし、揚水発電の真価は、電力需給バランスの調整役という点にあります。太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーは、天候に左右されやすく、電力供給が不安定になりがちです。揚水発電は、これらの再生可能エネルギーが発電した電力を余剰時に貯めておき、需要が供給を上回る時間帯に放出することで、電力網全体の安定供給を維持する役割を担っています。つまり、揚水発電は、再生可能エネルギーの普及を支え、エネルギーの安定供給を実現するための重要な役割を担っていると言えるのです。
項目 | 内容 |
---|---|
エネルギー効率 | 約70%と低い。発電量よりも電力消費量の方が多くなる。 |
真価 | 電力需給バランスの調整役。再生可能エネルギーの不安定な電力供給を補完し、電力網全体の安定供給を維持する。 |
役割 | 再生可能エネルギーの普及を支え、エネルギーの安定供給を実現する。 |
原子力発電と揚水発電の関係
電力供給の安定化という大きな役割を担う原子力発電ですが、実は、発電量の調整が難しいという側面も持っています。火力発電のように燃料の量を調整することで発電量を細かく制御することが難しい原子力発電所は、常に一定量の電力を供給し続ける、いわば電力供給の土台となる「ベースロード電源」として活躍しています。
しかし、電力の需要は常に一定ではありません。日中は工場の稼働や家庭での電力消費によって需要が高まり、夜間や早朝は需要が低下します。このような需要の変動に対応するために、出力調整の容易な「調整電源」が必要となります。
そこで登場するのが揚水発電です。揚水発電は、夜間などの電力需要が低い時間帯に、原子力発電所などによって供給される余剰電力を利用して、水を高い場所にある貯水池に汲み上げておきます。そして、電力需要が高まる日中に、貯水池から水を落下させて発電を行うという仕組みです。 いわば電気を水という形で貯めておく、巨大な蓄電池のような役割を果たしていると言えるでしょう。このように、出力調整が難しい原子力発電と、電力貯蔵が可能な揚水発電を組み合わせることで、電力系統全体のバランスを保ち、安定した電力供給を実現しているのです。
発電方式 | 特徴 | 役割 |
---|---|---|
原子力発電 | 発電量の調整が難しい 常に一定量の電力を供給 |
ベースロード電源 |
揚水発電 | 電力需要の低い時間に余剰電力を利用して水を汲み上げ 電力需要の高い時間に水を落下させて発電 |
調整電源 電力貯蔵 (巨大な蓄電池) |
揚水発電の未来
地球温暖化を食い止めるために、太陽光発電や風力発電といった自然の力を利用した発電方法がますます重要になってきています。しかし、これらの発電方法は、天候に左右されやすく、電力供給が不安定になりやすいという課題を抱えています。そこで、電力の安定供給を支える調整役として、揚水発電の役割が改めて見直されています。揚水発電は、電力の余剰がある時に水を高い場所に汲み上げておき、電力が必要になった時に水を落下させて発電する仕組みです。いわば、巨大な蓄電池の役割を果たしており、再生可能エネルギーの不安定な出力を補完する上で欠かせない存在と言えるでしょう。揚水発電は、将来的に、より効率的で環境負荷の低いシステムへと進化していくことが期待されています。例えば、水車や発電機の効率向上、ダム建設による環境負荷を低減するための技術開発などが進められています。また、海水を利用した揚水発電も研究されており、実現すれば、淡水資源の制約を受けずに、より広範囲での導入が可能になります。このように、揚水発電は、再生可能エネルギー時代において、電力システムの安定供給と地球環境の保全の両立に貢献する重要な技術として、その役割と可能性がますます高まっています。
再生可能エネルギーの課題 | 揚水発電の役割 | 揚水発電の将来展望 |
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天候に左右されやすく、電力供給が不安定 | 電力の余剰時に水を汲み上げ、必要時に発電することで、巨大な蓄電池として再生可能エネルギーの不安定な出力を補完 |
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