肺洗浄:放射性物質から体を守る
電力を見直したい
先生、「肺洗浄」ってなんですか? 原子力発電でそんなことをするんですか?
電力の研究家
そうだね。「肺洗浄」は、原子力発電所で事故が起きた時など、放射性物質を吸い込んでしまった人の肺をきれいにする方法なんだよ。
電力を見直したい
へえー。でも、肺を洗うって、なんだか大変そうですね…
電力の研究家
そうなんだ。危険も伴うし、誰でも受けられるわけでもない。だから、肺洗浄が必要な状況にならないように、安全対策をしっかりすることが一番大切なんだよ。
肺洗浄とは。
「肺洗浄」という言葉は、原子力発電に関係する言葉で、放射性物質が体の中に入って起こる健康被害を減らすための方法です。具体的には、肺に溜まってしまった溶けないプルトニウムなどを、肺を洗うことで体の外に出すことを目指します。 この洗浄には、生理食塩水にプルトニウムを取り除く薬を混ぜたものを使います。これを肺に入れて洗ってから、その水を出すのです。 これは、気道や肺胞が詰まった時に医療現場で行われる処置を応用したものです。ただし、この方法には、麻酔によるものと同じくらいの確率で、4000回に1回の割合で亡くなってしまう危険性があります。プルトニウムが肺を汚染することによって主に起こる病気は肺がんで、発症するまでに10年以上、長い場合は数十年かかることもあります。こうしたことから、この治療は、主に若い人にのみ行われています。
肺洗浄とは
– 肺洗浄とは肺洗浄とは、体内に取り込んでしまった放射性物質による健康被害の可能性を低減するための医療行為です。 具体的には、呼吸によって肺の奥深くまで入り込んでしまった放射性物質を、特殊な方法で洗い流し、体外に排出することを目的としています。肺洗浄が特に有効とされているのが、プルトニウムの中でも水に溶けにくい性質を持つ酸化プルトニウム(PuO₂)です。 プルトニウムは原子力発電などに利用される物質ですが、事故や作業中の不注意などによって、微細な粒子が空気中に飛散してしまうことがあります。この微粒子を吸い込んでしまうと、肺の奥にまで入り込み、体内に長期間留まってしまう可能性があります。プルトニウムは体内から排出されにくく、長年月にわたって弱い放射線を出し続けるため、周囲の細胞や組織に影響を与え、将来的にがん等のリスクを高める可能性が懸念されています。 肺洗浄は、このような事態に対応するために、プルトニウムを吸い込んでしまった直後に行われる緊急性の高い医療行為です。 特殊な薬剤を用いて肺の中を洗浄することで、プルトニウムを体外に排出する効果を高め、被ばくによる健康被害を最小限に抑えることを目指します。
項目 | 内容 |
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肺洗浄とは | 体内に取り込んでしまった放射性物質による健康被害の可能性を低減するための医療行為 |
目的 | 呼吸によって肺の奥深くまで入り込んでしまった放射性物質を、特殊な方法で洗い流し、体外に排出すること |
有効な放射性物質 | 酸化プルトニウム(PuO₂) ※プルトニウムの中でも水に溶けにくい性質を持つ |
プルトニウムの体内への影響 | 体内から排出されにくく、長年月にわたって弱い放射線を出し続けるため、周囲の細胞や組織に影響を与え、将来的にがん等のリスクを高める可能性がある |
肺洗浄の実施タイミング | プルトニウムを吸い込んでしまった直後 ※緊急性の高い医療行為 |
効果 | 特殊な薬剤を用いて肺の中を洗浄することで、プルトニウムを体外に排出する効果を高め、被ばくによる健康被害を最小限に抑える |
肺洗浄の具体的な方法
肺洗浄は、体液と似た成分である生理食塩水を使って、肺の中をきれいにする方法です。この生理食塩水に、DTPAという特別な薬を混ぜることで、プルトニウムをより効果的に洗い流します。DTPAはキレート剤と呼ばれる種類の薬で、プルトニウムとくっつきやすく、体の外に出す作用があります。
具体的な洗浄方法としては、まず、鼻や口から管を入れて、肺まで届かせます。そして、DTPA入りの生理食塩水を肺に流し込み、しばらく時間をおいてから、再び管を通して液体を体の外に出します。この、洗浄液を入れて、時間をおいてから出すという操作を何回も繰り返すことで、肺にたまってしまったプルトニウムをできるだけ取り除きます。
項目 | 内容 |
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目的 | 肺の中のプルトニウムを洗い流す |
洗浄剤 | 生理食塩水 + DTPA (キレート剤) |
DTPAの役割 | プルトニウムと結合し、体外への排出を促す |
方法 | 1. 鼻や口から管を肺まで挿入 2. DTPA入り生理食塩水を肺に注入 3. 一定時間後、液体を排出 4. 2-3を繰り返し |
肺洗浄のリスクと対象
肺洗浄は、体内に取り込んでしまった放射性物質を取り除くための有効な方法の一つですが、リスクを伴う処置でもあります。まず、全身麻酔が必要となるため、麻酔によるリスクは避けられません。その死亡率は麻酔によるものと同じく、4000人に1人程度と言われています。また、肺洗浄自体にもリスクがあり、一時的に呼吸が困難になったり、肺の組織を傷つけてしまう可能性もゼロではありません。
さらに、プルトニウムが肺に与える影響は、すぐに現れるのではなく、10年以上、あるいは数十年という長い年月を経て、がんという形で現れるという特徴があります。
一方、肺洗浄は年齢が若いほど効果が高いと考えられています。これらのリスクと、プルトニウムによる発がんリスクが表面化するまでの期間の長さ、そして年齢による効果の違いなどを総合的に判断し、肺洗浄は主に若年層に対して行われるのが一般的です。
項目 | 内容 |
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有効性 | 体内に取り込んでしまった放射性物質の除去 |
リスク | – 全身麻酔によるリスク(死亡率約4000人に1人) – 呼吸困難 – 肺組織損傷の可能性 |
プルトニウムの影響発現 | 10年以上、あるいは数十年後(がん) |
年齢による効果の違い | 若いほど効果が高い |
対象 | 主に若年層 |