ウラン235

原子力発電の基礎知識

17億年前の奇跡!自然に生まれた原子炉

原子力発電所と聞くと、巨大な建物や複雑な機械を想像し、最新技術の結晶のように感じますよね。しかし、驚くべきことに、今から約17億年前の太古の地球にも、自然の力だけで稼働する原子炉が存在していたのです。それは西アフリカのガボン共和国にあるオクロ鉱山で発見され、「オクロ炉」と名付けられました。 オクロ炉は、人類が原子力を利用するよりもはるか昔に、地球自身が作り出した天然の原子炉と言えるでしょう。 一体どのようにして、自然界に原子炉が生まれたのでしょうか? オクロ鉱山には、ウランが非常に多く含まれるウラン鉱床が存在します。ウランは、長い時間をかけて自然に壊れていく過程で、中性子と呼ばれる粒子を放出します。通常は、この中性子は周囲の物質に吸収されてしまいます。しかし、オクロ鉱山では、偶然にもウラン鉱床の近くに水が豊富に存在していました。そして、水が中性子の速度を遅くする役割を果たしたことで、ウランの核分裂反応が連鎖的に起きるようになったのです。 この連鎖反応こそが、原子炉の原理そのものです。 オクロ炉は、約50万年もの間、稼働していたと考えられています。もちろん、現代の原子力発電所のように電気を作り出すことはできませんでしたが、微量の熱を発生し続けていました。 この発見は、自然界における原子力の存在を示すとともに、地球の歴史と原子力の関係を深く考えるきっかけを与えてくれました。
核燃料

エネルギー源の精製: ガス拡散法

- ガス拡散法とは原子力発電では、燃料となるウランに含まれる核分裂しやすいウラン-235の割合を高める作業が必要不可欠です。天然ウランには、ウラン-235がわずか0.7%しか含まれておらず、残りのほとんどは核分裂しにくいウラン-238だからです。原子力発電を行うためには、ウラン-235の割合を数%程度まで高める必要があり、この作業をウラン濃縮と呼びます。そして、ガス拡散法は、このウラン濃縮を実現する技術の一つです。ガス拡散法では、まずウランを六フッ化ウランという気体状態に変えます。次に、この六フッ化ウランを多数の小さな穴が開いた分離膜に通過させます。すると、わずかに軽いウラン-235を含む六フッ化ウランの方が、重いウラン-238を含む六フッ化ウランよりも、わずかに速く分離膜を通過します。このわずかな差を利用して、分離膜を通過した後の気体を、通過前よりもウラン-235の割合が高い部分と、低い部分に分けることができます。この工程を何段も繰り返すことで、最終的に原子力発電に必要な濃度のウラン-235を得ることができます。ガス拡散法は、確実性の高い技術として長年利用されてきましたが、多くのエネルギーを必要とするという側面もあります。近年では、より効率的な遠心分離法が主流になりつつあります。
核燃料

核分裂生成物の収率:原子力発電の基礎知識

原子力発電所の中心部には原子炉が存在し、そこで電気エネルギーが生まれます。原子炉では、ウランなどの重い原子核が中性子を吸収することで核分裂という現象を起こします。核分裂とは、一つの重い原子核が二つ以上の軽い原子核に分裂する現象のことを指します。イメージとしては、ビリヤードの球を想像してみてください。白い球を勢いよく黄色い球にぶつけると、黄色い球は二つに分裂しますよね。核分裂もこれと似たような現象で、原子核という非常に小さな世界で起こっているのです。 この核分裂の過程で、莫大なエネルギーが熱として放出されます。この熱を利用して水を沸騰させ、蒸気を作ります。そして、その蒸気の力でタービンを回し、電気を作り出すのが原子力発電の仕組みです。 しかし、核分裂ではエネルギーが生まれるだけでなく、元の原子核にはなかった様々な元素も同時に生成されます。これらの元素は、核分裂によって生まれたことから核分裂生成物と呼ばれます。核分裂生成物は放射能を持つものが多く、適切に処理する必要があります。原子力発電では、この核分裂生成物の処理も重要な課題の一つとなっています。
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原子力発電における増殖:燃料が増えるしくみ

生物の世界では、細胞分裂などによって同じ種類の生き物が数を増やすことを増殖と言います。原子力発電の世界でも、これと似た現象が起こることがあります。原子力発電所で使われる燃料には、ウランやプルトニウムといった、核分裂を起こすことができる物質が含まれています。これらの物質は、発電のために核分裂を起こしていくと、だんだんと減っていくように思われます。しかし実際には、運転中にこれらの核分裂性物質が増える場合があるのです。これを、原子力における増殖と呼びます。 増殖は、主にウラン238という物質が、核分裂の際に発生する中性子を吸収することによって起こります。ウラン238は、中性子を吸収すると、いくつかの段階を経てプルトニウム239という物質に変化します。このプルトニウム239も、ウランと同じように核分裂を起こすことができる物質です。つまり、ウラン238が中性子を吸収することによって、核燃料となる物質が増えることになるのです。原子力発電において増殖は、核燃料をより効率的に利用できる可能性を秘めた現象として、現在も研究が進められています。
核燃料

エネルギーの未来を支える遠心分離法

- 遠心分離法とは遠心分離法とは、回転する容器の中で物質にかかる遠心力の違いを利用して、物質を分離する方法です。私たちの身近な例では、洗濯機で脱水するときにこの力が働いています。洗濯槽が高速回転することで、水と衣類にかかる遠心力の大きさに差が生じ、軽い水は外側に、重い衣類は内側に残ることで、水と衣類を分離することができます。この遠心分離法は、原子力発電の分野でも重要な役割を担っています。原子力発電の燃料となるウランには、核分裂を起こしやすいウラン235と、そうでないウラン238の2種類が存在します。天然に存在するウランは、ほとんどがウラン238で、ウラン235はわずかしか含まれていません。そこで、原子力発電で利用するためには、ウラン235の濃度を高める必要があります。この濃縮作業に、遠心分離法が用いられているのです。遠心分離機と呼ばれる装置の中で、ウラン化合物を封入した容器を高速回転させます。すると、質量のわずかに軽いウラン235と、わずかに重いウラン238では、かかる遠心力の大きさに違いが生じます。この差を利用して、ウラン235とウラン238を分離していくのです。遠心分離法は、高い効率でウランを濃縮できるため、現在最も広く利用されているウラン濃縮技術となっています。
核燃料

ウラン濃縮度:原子力発電の要

- ウランエネルギーの源ウランは、原子力発電の燃料となる、熱と光を発生させる力を持つ貴重な元素です。地球の地殻に存在しますが、そのままでは発電に利用できません。自然界に存在するウランには、ウラン238とウラン235という二つの種類があります。このうち、核分裂を起こしてエネルギーを放出するのはウラン235です。しかし、天然ウランにおけるウラン235の割合はわずか0.7%ほどしかありません。そこで、原子力発電を行うためには、天然ウランからウラン235の割合を高める「濃縮」という工程が必要となります。濃縮は、ウランを気体状の化合物に変え、遠心分離機などを用いて繰り返し分離することで、ウラン235の濃度を高めていきます。濃縮されたウランは、燃料として原子炉に供給されます。原子炉の中では、ウラン235が核分裂反応を起こし、膨大な熱エネルギーを発生させます。この熱エネルギーを利用して蒸気を作り、タービンを回し発電機を動かすことで、電気エネルギーを生み出しているのです。このように、ウランは、私たちの生活に欠かせない電気エネルギーを生み出すための重要な役割を担っていると言えます。
原子力の安全

原子力発電の要: 臨界質量とは

原子力発電は、物質の根源的な性質を利用して膨大なエネルギーを生み出す技術です。その中心となるのが核分裂反応と呼ばれる現象です。ウランやプルトニウムといった、原子核が分裂しやすい性質を持つ物質に中性子と呼ばれる粒子が衝突すると、原子核は不安定な状態になり、二つ以上の原子核に分裂します。これが核分裂です。 核分裂の際に特筆すべきは、単に原子核が分裂するだけでなく、新たな中性子が複数放出される点です。この放出された中性子が、周囲の他の原子核に衝突すると、さらに核分裂が引き起こされます。これが繰り返されることで、莫大な数の原子核が連鎖的に分裂し、膨大なエネルギーが放出されるのです。この現象こそが、核分裂連鎖反応です。 臨界質量とは、この核分裂連鎖反応を持続的に起こすために必要な、核分裂性物質の最小量を指します。核分裂性物質の量が臨界質量に達しない場合、放出された中性子は系外に逃げてしまい、連鎖反応は持続しません。しかし、核分裂性物質の量が臨界質量以上になると、放出された中性子は高確率で他の原子核と衝突し、連鎖反応が持続するようになります。原子力発電所では、この臨界質量を厳密に制御することで、安全かつ安定的にエネルギーを生み出しているのです。