ドイツ

原子力施設

幻の原子炉:THTR-300

- 夢の原子炉 「夢の原子炉」。それは、従来の原子炉が抱える問題を克服し、より安全で効率的なエネルギーを生み出す、人類の希望を託された存在でした。その夢を現実のものとするべく、ドイツで開発されたのが高温ガス炉「THTR-300」です。 高温ガス炉は、その名の通り高温のガスを用いて熱エネルギーを生み出す原子炉です。従来の原子炉と比べて、以下のような特徴から「夢の原子炉」と期待されていました。 まず、安全性です。高温ガス炉は、燃料をセラミックで覆い、さらに耐熱性の高い黒鉛でできた炉心に封じ込めています。この構造により、炉心溶融のリスクが大幅に低減されます。 次に、燃料効率です。高温ガス炉は、従来の原子炉よりも高い温度で運転することができます。そのため、より効率的に熱エネルギーを生み出し、発電効率の向上に繋がります。 THTR-300は、これらの利点を活かし、未来のエネルギー供給を担う存在として期待されていました。しかし、その道のりは平坦ではありませんでした。技術的な課題や建設コストの増大など、様々な困難に直面することになります。
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未来のエネルギー:高温ガス炉HTR-500

- 次世代の原子炉 「高温ガス炉」。聞き慣れない言葉かもしれませんが、これは、ドイツで開発が進められている、未来のエネルギーを担うかもしれない革新的な原子炉の名前です。「HTR-500」という名称で知られるこの原子炉は、「HochtemperaturReactor-500」の略称であり、従来の原子炉とは大きく異なる特徴を持っています。 従来の原子炉では、水を冷却材として使用していますが、高温ガス炉は、その名の通りヘリウムガスを冷却材として使用します。ヘリウムガスは化学的に安定しているため、水のように水素爆発を起こす危険性がありません。また、高温ガス炉は、運転中に燃料を交換できるという利点も持っています。これは、従来の原子炉では停止しなければならなかった作業であり、稼働率の向上に大きく貢献します。 さらに、高温ガス炉は、非常に高い温度で運転することができます。この高温の熱は、発電だけでなく、水素製造などの化学プラントにも利用することができ、エネルギー効率の向上と二酸化炭素排出量の削減に貢献することが期待されています。 高温ガス炉は、安全性、経済性、環境適合性に優れた、まさに次世代の原子炉と言えるでしょう。実用化に向けて、更なる研究開発が進められています。
その他

ドイツにおける原子力発電:CDU/CSUの視点

ドイツキリスト教民主同盟とキリスト教社会同盟は、長年にわたりドイツのエネルギー政策において中心的な役割を果たしてきました。特に1973年の石油危機をきっかけに、エネルギー源を石油に頼りすぎないよう、国内に豊富にある石炭と原子力を積極的に活用する政策を推し進めてきました。両党は、エネルギーの安定供給を確保し、他国からのエネルギー輸入への依存度を下げるためには、石炭と原子力が欠かせないと考えていたのです。 特に原子力発電については、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量が少なく、天候に左右されずに安定した電力を供給できるという点で、重要なエネルギー源と位置付けてきました。また、原子力発電所の建設や運転によって、国内に多くの雇用が生まれることも重視してきました。 しかし、2011年の福島第一原子力発電所の事故後、国民の間で原子力発電に対する不安が高まり、エネルギー政策の見直しを迫られることになりました。その後、ドイツは原子力発電からの段階的な撤退を決定し、再生可能エネルギーの導入を積極的に進める方向へと大きく舵を切ることになります。
その他

ドイツの原子力研究を支えるBMFT

- BMFTとはBMFTは、"Bundesministerium für Forschung und Technologie"の略称で、日本語では「連邦研究技術省」といいます。これは、かつてドイツに存在した、科学技術分野の行政機関です。1972年に設立され、1998年に「連邦教育研究技術省」に改組されるまで、およそ四半世紀にわたり、ドイツの科学技術政策を牽引してきました。 その活動範囲は非常に広く、日本の文部科学省と経済産業省の両方を合わせたような組織といえます。基礎研究に対する助成から、産業界と連携した応用研究の推進、さらには将来を見据えた技術開発の支援など、様々なレベルでの取り組みを行っていました。 BMFTは、大学や研究機関、企業など、様々な主体に対して資金提供や政策支援を行うことで、ドイツの科学技術力の発展に大きく貢献しました。その実績は、自動車、機械、化学など、ドイツを代表する産業の国際競争力にも表れています。BMFTは、もはや存在しませんが、その精神は、現在の連邦教育研究技術省にも引き継がれており、ドイツは引き続き、科学技術立国として世界をリードしています。
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ドイツの原子力技術の礎 AVR

- AVRとはAVRとは、「試験高温ガス炉」を意味する「Arbeitsgemeinschaft Versuchs-Reaktor」の略称です。1960年代、西ドイツが原子力発電の開発に積極的に取り組んでいた時代に、その先駆けとして建設された実験炉です。当時の西ドイツにおいては画期的な規模であり、熱出力は46MW、電気出力は15MWを誇りました。AVRは、単に電力を供給するだけでなく、高温ガス炉という新型炉の技術を実証するという重要な役割を担っていました。高温ガス炉は、従来の原子炉と比べて安全性が高く、より効率的にエネルギーを生み出すことができると期待されていました。AVRは、この高温ガス炉の設計や運転に関する貴重なデータを提供し、その後の高温ガス炉の開発に大きく貢献しました。AVRは、1967年から1988年までの21年間運転され、その間に多くの実験や研究が行われました。その結果、高温ガス炉の高い安全性と効率性が実証され、将来の原子力発電の重要な選択肢となることが示されました。AVRの成功は、西ドイツの原子力技術の進歩を世界に示すものであり、その後の原子力発電の開発に大きな影響を与えました。現在、AVRは運転を終了していますが、その歴史的な意義から、原子力技術の貴重な遺産として保存されています。