連鎖反応

原子力発電の基礎知識

原子炉の制御と中性子寿命

原子炉は、ウランなどの核分裂しやすい物質を使って熱エネルギーを作り出す施設です。原子炉では、核分裂という反応で熱が生まれますが、この反応で中性子という粒子が非常に重要な役割を担っています。 中性子は、原子の中心にある原子核を構成する粒子の一つですが、電気的な性質を持たないため、他の原子核と反発することなく容易に入り込むことができます。原子炉の中では、ウランなどの重い原子核に中性子が衝突することで核分裂反応が誘発され、新たな中性子が複数個飛び出してきます。この現象は、ちょうどビリヤード球をぶつけて次々と球をはじき飛ばすビリヤードゲームのように、次々と核分裂反応が起こる連鎖反応を引き起こします。この連鎖反応により、莫大なエネルギーが熱として放出されるのです。 しかし、生まれた中性子のすべてが次の核分裂を引き起こすわけではありません。中性子の一部は、原子炉の構造材や冷却材に吸収されてしまったり、原子炉の外へ逃げてしまうことで失われます。 原子炉を安定して稼働させるためには、中性子の数を適切に制御する必要があります。そのため、中性子を吸収しやすい物質でできた制御棒を炉心に挿入したり、炉心の設計を工夫したりすることで、中性子の数を調整しています。
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原子力発電の要!中性子経済を解説

- 中性子経済原子炉内の巧みなバランス 原子力発電は、ウランなどの核燃料に中性子を衝突させることで原子核を分裂させ、その際に発生する莫大なエネルギーを利用して電力を生み出しています。この核分裂の過程で、燃料に吸収された中性子は新たな中性子を放出し、この新たに生まれた中性子がまた別の原子核に衝突することで連鎖的に核分裂反応が継続されます。 原子炉内では、この中性子がどのように生成され、どのように消費されるかを把握することが非常に重要になります。これが「中性子経済」と呼ばれる概念です。原子炉内には、燃料となるウラン以外にも、核分裂反応を制御するための制御棒や、熱を運ぶ冷却材など、様々な物質が存在します。これらの物質も中性子を吸収するため、核分裂を起こすために必要な中性子の量を維持するには、炉内での中性子の生成と吸収のバランスを適切に保つ必要があります。 中性子経済は、例えるならば家計簿のようなものです。収入にあたるのが核分裂によって新しく生まれる中性子の数で、支出にあたるのが燃料以外の物質に吸収されたり、炉の外へ逃げてしまう中性子の数です。原子炉を安定して稼働させるためには、中性子の収入と支出のバランスを適切に調整し、常に一定量の核分裂反応を維持することが重要となります。このバランスを制御するのが、制御棒の出し入れや燃料の濃縮度調整といった運転操作です。原子力発電において、中性子経済は安全かつ効率的な運転を行う上で欠かせない概念と言えるでしょう。
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原子力発電の基礎:連鎖反応とは?

- 連鎖反応とは何か連鎖反応とは、最初の反応が次の反応を引き起こす起点となり、外部からエネルギーを加え続けなくても自発的に反応が連続して起こる現象です。これは、まるでドミノ倒しのように、最初のドミノが倒れると、その勢いで次のドミノが倒れ、それがまた次のドミノを倒すというように、次々に連鎖的に反応が進んでいく様子に似ています。この現象は、私たちの身の回りでも、例えば、火の燃え広がりなどで見ることができます。マッチで火をつけると、その熱によって周りの物質が燃え始め、さらにその熱でさらに広い範囲に燃え広がっていきます。これは、最初のマッチの火という小さなエネルギーが、周りの物質を燃やすという反応を引き起こし、その反応がさらに次の反応を引き起こすという連鎖的な反応が起こっているからです。原子力発電の世界では、この連鎖反応が重要な役割を果たします。原子力発電では、ウランやプルトニウムといった重い原子核に中性子を衝突させると、原子核が分裂して莫大なエネルギーを放出する「核分裂」という現象を利用しています。この核分裂の際に、分裂した原子核からさらに中性子が放出されます。そして、その中性子が別の原子核に衝突すると、また核分裂が起こり、さらに中性子が放出されるという連鎖反応が起こります。原子力発電所では、この核分裂の連鎖反応を制御することで、安全かつ安定的にエネルギーを取り出しています。もし、連鎖反応が制御不能な状態になると、莫大なエネルギーが一度に放出されてしまい、大変危険です。そのため、原子力発電所では、連鎖反応の速度を調整するために、様々な安全装置が備えられています。
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原子炉の安全: 臨界未満という状態

原子力発電は、ウランなどの原子核が中性子を取り込むことで分裂し、膨大なエネルギーを放出する現象を利用しています。この核分裂は、連鎖的に発生する性質を持っています。つまり、一つの核分裂で放出された中性子が、更に別の原子核に衝突して新たな核分裂を引き起こし、この反応が連鎖していくのです。 この連鎖反応の状態を表す指標として、「臨界」という概念が使われます。臨界とは、核分裂で新たに生じる中性子の数と、吸収されたり外部に失われたりする中性子の数が、ちょうど釣り合っている状態を指します。 一方、「臨界未満」とは、核分裂で生じる中性子の数が、吸収されたり外部に失われたりする中性子の数よりも少ない状態を指します。この状態では、中性子の数は次第に減少し、連鎖反応は持続しません。これは、核分裂反応が制御され、安全に停止している状態とも言えます。原子力発電所では、通常運転時でも臨界未満の状態を維持することで、安全性を確保しています。
原子力の安全

原子力発電の要: 臨界質量とは

原子力発電は、物質の根源的な性質を利用して膨大なエネルギーを生み出す技術です。その中心となるのが核分裂反応と呼ばれる現象です。ウランやプルトニウムといった、原子核が分裂しやすい性質を持つ物質に中性子と呼ばれる粒子が衝突すると、原子核は不安定な状態になり、二つ以上の原子核に分裂します。これが核分裂です。 核分裂の際に特筆すべきは、単に原子核が分裂するだけでなく、新たな中性子が複数放出される点です。この放出された中性子が、周囲の他の原子核に衝突すると、さらに核分裂が引き起こされます。これが繰り返されることで、莫大な数の原子核が連鎖的に分裂し、膨大なエネルギーが放出されるのです。この現象こそが、核分裂連鎖反応です。 臨界質量とは、この核分裂連鎖反応を持続的に起こすために必要な、核分裂性物質の最小量を指します。核分裂性物質の量が臨界質量に達しない場合、放出された中性子は系外に逃げてしまい、連鎖反応は持続しません。しかし、核分裂性物質の量が臨界質量以上になると、放出された中性子は高確率で他の原子核と衝突し、連鎖反応が持続するようになります。原子力発電所では、この臨界質量を厳密に制御することで、安全かつ安定的にエネルギーを生み出しているのです。