がん治療にも期待!重陽子線の力
物質を構成する最小単位である原子にエネルギーを与えると、原子は構成する電子を放出することがあります。このような現象を引き起こす能力を持つエネルギーの高い放射線を電離放射線と呼びます。電離放射線は、放射線自身が電荷を持っているかどうかによって、大きく二つに分類されます。放射線自身が電荷を持っているものを直接電離放射線、電荷を持っていないものを間接電離放射線と呼びます。
直接電離放射線の例としては、アルファ線、ベータ線、重陽子線などが挙げられます。アルファ線はヘリウム原子核の流れ、ベータ線は電子の流れであり、それぞれプラスとマイナスの電荷を持っています。一方、重陽子線は陽子1個と中性子1個からなる重陽子の流れです。重陽子は水素の仲間である重水素の原子核でありプラスの電荷を持っています。
重陽子線を物質に照射すると、物質を構成する原子にエネルギーを与えます。すると、物質の中では電離や励起といった現象が起こります。電離とは、物質にエネルギーを与えることで、物質を構成する原子から電子が飛び出す現象です。励起とは、物質にエネルギーを与えることで、物質を構成する原子の状態が変化する現象です。このように、重陽子線は物質に様々な影響を与えるため、医療分野や工業分野など幅広い分野で応用されています。