DNA損傷

放射線について

活性酸素から身を守るSOD酵素

- 活性酸素とは?私たちは日々、呼吸によって酸素を取り込み、体内でエネルギーを作り出して生きています。ところが、このエネルギー生成の過程で、どうしても避けられないものがあります。それが活性酸素です。活性酸素は、呼吸によって取り込まれた酸素の一部が変化したもので、普通の酸素よりもはるかに反応しやすい性質を持っています。活性酸素は、まるで錆のように、私たちの体内の細胞や組織を少しずつ傷つけていきます。このダメージが蓄積していくことが、老化現象の大きな原因の一つと考えられています。また、活性酸素は老化だけでなく、がんや動脈硬化、糖尿病など、様々な病気の発症リスクを高めることも指摘されています。活性酸素は、呼吸によって体内で自然に発生するだけでなく、紫外線や放射線、タバコの煙、大気汚染、激しい運動、ストレス、睡眠不足など、様々な要因によって増加することがわかっています。これらの要因に日常的にさらされている現代人にとって、活性酸素は決して無視できない存在と言えるでしょう。
その他

放射線とDNA: 細胞を守る驚くべきメカニズム

私たち人間を含め、地球上のありとあらゆる生物の体には、「生命の設計図」とも呼ばれる不思議な物質が存在しています。それがDNAです。正式名称はデオキシリボ核酸といい、親から子へと受け継がれる遺伝情報を担っています。 DNAは、リン酸と糖、そして塩基と呼ばれる物質が結合した構造単位が、鎖のように長く連なってできています。塩基にはアデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の四種類があり、この塩基の並び順こそが遺伝情報を決定づける重要な要素です。 さらに興味深いことに、DNAは二本の鎖が互いに結びつき、らせん状にねじれた構造をしています。これを二重らせん構造と呼びます。二本の鎖は、アデニン(A)とチミン(T)、グアニン(G)とシトシン(C)という決まった組み合わせで結合しており、この規則正しい結合の性質が、遺伝情報を正確に複製する上で重要な役割を果たしています。 細胞分裂の際には、この二重らせん構造がほどけて、それぞれの鎖を鋳型として新しいDNAが合成されます。こうして全く同じ遺伝情報を持った二つの細胞が誕生するのです。このように、DNAの二重らせん構造は、生命の連続性を維持する上で欠かせない、精巧な仕組みと言えるでしょう。
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放射線の影響を理解する:直線-二次曲線モデル

- 直線-二次曲線モデルとは放射線が生体に及ぼす影響を評価する上で、被曝線量と生物学的影響の関係を明らかにすることは非常に重要です。その関係を表すモデルの一つに、-直線-二次曲線モデル-があります。別名LQモデルとも呼ばれ、放射線生物学の分野において広く用いられています。このモデルは、グラフ上に表現すると、低線量域では直線、高線量域では二次曲線となる特徴的な形状を示します。これは、放射線が細胞内のDNAに損傷を与えるメカニズムに基づいています。低線量域では、放射線によって引き起こされるDNA損傷は、細胞が自ら修復できる範囲であるため、生物学的影響は被曝線量に比例して直線的に増加します。一方、高線量域では、DNA損傷が細胞の修復能力を超えて蓄積し、細胞死やがん化などの重大な影響が生じやすくなります。そのため、被曝線量に対して生物学的影響は加速的に増加し、曲線的な関係を示すのです。直線-二次曲線モデルは、放射線防護の基準値設定や、医療分野における放射線治療計画など、幅広い分野で応用されています。ただし、これはあくまでもモデルであり、実際の生物学的影響は、放射線の種類や被曝時間、個体差など、様々な要因によって複雑に変化することを理解しておく必要があります。
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放射線とDNA修復:細胞の回復力

私たちの体の設計図とも言える重要な情報を持つDNAは、細胞の核の中に存在しています。このDNAは、放射線などの影響を受けることで傷ついてしまうことがあります。DNAは鎖のように繋がって情報を保持していますが、この鎖が切れてしまうことを「DNA鎖切断」と呼び、その程度によって被害が異なります。 鎖の一方だけが切れてしまう「一本鎖切断」は比較的軽い損傷で、細胞は修復できる場合が多いです。しかし、鎖の両方が切れてしまう「二本鎖切断」は深刻な損傷です。二本鎖切断が起こると、細胞は修復することが難しくなり、正常な機能を保てなくなる可能性があります。 このようなDNAの損傷は、細胞の死やがん化に繋がることがあります。そのため、放射線などから体を守る対策や、DNAの損傷を修復する研究が進められています。
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DNAと原子力発電

私たち生物の遺伝情報 blueprint、DNAについて解説しましょう。DNAはデオキシリボ核酸を省略した呼び方で、あらゆる生物に存在し、その生物の設計図の役割を担っています。 人間に例えると、黒髪や金髪、青い目や茶色い目といった外見の特徴や、背が高い、体が弱いといった体質に関わる情報まで、膨大な情報がDNAに記録されています。 では、どのようにして情報を記録しているのでしょうか? DNAはアデニン、グアニン、シトシン、チミンという4種類の塩基と呼ばれる物質が、まるで暗号のように一列に並んだ構造をしています。この4種類の塩基の配列順序が、遺伝情報を決定づけているのです。 さらに、DNAは2本の鎖がらせん状に絡み合った二重らせん構造をとっています。2本の鎖の間では、アデニンとチミン、グアニンとシトシンがそれぞれ対になって結びついています。この結びつきのおかげで、細胞分裂の際にDNAは正確に複製され、新しい細胞に遺伝情報が受け継がれていくのです。
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食品照射と安全性:エームス試験で見る

- エームス試験とは エームス試験は、ある物質が遺伝子の突然変異を引き起こす可能性(変異原性)を評価するための試験です。 私たちの遺伝子の本体であるDNAは、塩基と呼ばれる物質の配列によって遺伝情報を記録しています。しかし、放射線や特定の化学物質はこの塩基配列を傷つける可能性があり、その結果、細胞の正常な働きを阻害する可能性があります。 エームス試験では、ヒスチジンというアミノ酸を自ら作れない変異体を持つネズミチフス菌を用います。この菌は、通常、ヒスチジンを含んだ培地でなければ生育できません。 試験では、この菌を被験物質と混ぜて培養します。もし被験物質に変異原性があれば、菌のDNA配列に変化が起こり、ヒスチジンを再び合成できるようになることがあります。この変化を復帰突然変異と呼びます。復帰突然変異が起こると、菌はヒスチジンを含まない培地でも生育できるようになり、コロニーと呼ばれる集団を作ります。 エームス試験では、このコロニー数を数えることで、被験物質の変異原性を評価します。コロニー数が多ければ多いほど、被験物質の変異原性が高いと判断されます。 エームス試験は、簡便で迅速な試験であることから、医薬品、食品添加物、農薬、化粧品などの安全性評価に広く利用されています。
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遺伝毒性試験:医薬品開発の安全性を守る試験

- 遺伝情報への影響を調べる試験 「遺伝毒性試験」とは、薬や化学物質が、私たちの体の設計図であるDNAに傷をつける性質があるかどうかを調べる試験です。DNAは、細胞の中に存在し、生命活動に欠かせない情報を担っています。このDNAが傷つくと、細胞が正常に働かなくなり、様々な病気を引き起こす可能性があります。 例えば、細胞が制御不能に増殖する「がん」や、親から子へ受け継がれる病気である「遺伝病」などは、DNAの損傷が原因の一つとして考えられています。 私たちの身の回りには、医薬品や日用品、食品添加物など、実に多くの化学物質が存在します。これらの物質が、私たち人間にとって安全であることを確認するためには、遺伝毒性を評価することが非常に重要です。遺伝毒性試験によって、化学物質の安全性を評価することで、健康被害のリスクを減らし、安心して暮らせる社会を実現することに繋がります。 遺伝毒性試験には、細菌を用いた簡易な試験から、培養細胞や実験動物を用いたより詳細な試験まで、様々な種類があります。それぞれの試験には、メリットとデメリットがあり、試験の目的や対象物質の特性などを考慮して、適切な試験方法を選択することが大切です。