「か」

原子力施設

原子炉の心臓部、カランドリア管の役割

- カランドリア管とは原子力発電において、特に新型転換炉(CANDU炉)のような重水を減速材として使用する原子炉において、カランドリア管は炉心の心臓部と言える重要な部品です。原子炉の炉心には、カランドリアタンクと呼ばれる巨大なタンクが設置されています。このタンクの中には、多数のカランドリア管が垂直に林立するように配置されており、原子炉の安全かつ効率的な運転に欠かせない複数の役割を担っています。まず、カランドリア管は、核分裂反応を維持するための燃料棒を収納する容器としての役割を果たします。燃料棒は、ウラン燃料を封入した棒状のもので、カランドリア管の中に挿入されます。そして、カランドリア管の外側を流れる減速材である重水によって、燃料棒内のウランは核分裂反応を起こします。同時に、カランドリア管は、燃料棒と減速材である重水を隔てる役割も担います。燃料棒は高温高圧な状態になるため、減速材と直接接触すると腐食などが発生する可能性があります。カランドリア管は、耐食性に優れたジルコニウム合金などで作られており、燃料棒を保護するとともに、減速材である重水の純度を保つ役割を果たします。このように、カランドリア管は、燃料棒の収納、核分裂反応の制御、そして燃料棒と減速材の隔離という、原子炉の安全かつ効率的な運転に不可欠な複数の重要な役割を担っているのです。
原子力施設

ガラス固化:未来への安全な橋渡し

原子力発電は、地球温暖化対策の切り札として期待される一方、高レベル放射性廃棄物という、管理と処分が極めて難しい問題も抱えています。この問題は、原子力発電の利用を進めていく上で、安全かつ確実に解決しなければならない課題です。 高レベル放射性廃棄物は、主に原子力発電所で使い終わった核燃料を再処理する過程で発生します。ウランやプルトニウムを取り出した後も、強い放射能を持つ物質が残ります。これは、人体や環境に深刻な影響を与える可能性があるため、厳重に管理する必要があります。 現在、日本では高レベル放射性廃棄物をガラスと混ぜ合わせて固化するガラス固化体の形で、冷却しながら保管しています。しかし、これはあくまでも一時的な措置であり、最終的には地下深くに埋設処分することが検討されています。 高レベル放射性廃棄物の処分には、長期にわたる安全性の確保が求められます。そのため、地下深くの地層に安定した状態で埋設し、人間社会への影響を遮断する計画が進められています。しかし、処分地の選定や処分技術の開発など、解決すべき課題は少なくありません。 高レベル放射性廃棄物の問題は、将来世代に負の遺産を残さないためにも、私たちが責任を持って解決しなければなりません。そのためには、国民的な理解と協力が不可欠です。
原子力の安全

高レベル放射性廃棄物の処理:ガラス固化技術

- ガラス固化とは原子力発電所からは、ウラン燃料が核分裂反応を起こした後に、非常に強い放射能を持つ高レベル放射性廃液が発生します。この廃液には、燃料として使い終えたウランやプルトニウムから生じる核分裂生成物と呼ばれる物質が含まれており、人体や環境に深刻な影響を与える可能性があります。そのため、高レベル放射性廃液は、人が住む環境から長期的に隔離して管理する必要があります。ガラス固化は、この高レベル放射性廃液を安全に閉じ込めて保管するために開発された技術です。まず、廃液を高温で処理して水分を蒸発させます。その後、残った物質をガラス原料と混合し、さらに高温で溶かしてガラスにします。こうして生成されたガラスは、内部に高レベル放射性廃液を閉じ込めた状態となり、放射性物質を漏洩させにくい安定した状態になります。ガラス固化された高レベル放射性廃棄物は、冷却期間を経て最終的には地下深くに埋められることになります。ガラス固化は、高レベル放射性廃棄物の長期的な保管方法として、世界中で研究開発が進められています。
その他

安全は見える?運送会社の評価制度

私たちの生活に必要な商品や荷物は、毎日たくさんのトラックによって届けられています。毎日走り回るこれらのトラックの安全を確保するために、国土交通省は2003年から「貨物自動車運送安全性評価事業」を実施しています。 この事業は、トラック運送会社が、安全な運行のためにどのような取り組みを行っているかを評価するものです。具体的には、運転手の健康状態の管理や、車両の整備状況、そして安全教育の実施状況など、様々な項目に基づいて評価が行われます。評価結果は、「安全性優良事業所」として認定され、インターネットなどで公開されます。つまり、私たち消費者は、どの運送会社が安全に力を入れているかを、誰でも簡単に知ることができるのです。 この事業の目的は、単に安全性を評価することだけではありません。評価結果を公開することで、運送会社同士が安全対策を競い合う環境を作り出し、業界全体で安全性を向上させていくことを目指しています。また、安全性が高いと認められた事業所は、荷主企業から選ばれやすくなるというメリットもあります。 安全は、運送業界にとって最も重要な課題です。この「貨物自動車運送安全性評価事業」を通じて、トラックの安全性がより一層向上していくことが期待されています。
原子力の安全

原子炉の安全を守る: カバーガス法の役割

- カバーガス法とは原子力発電所における安全確保は最も重要な課題であり、そのため多岐にわたる監視システムが稼働しています。中でも、高速増殖炉という種類の原子炉では、「カバーガス法」という特殊な方法で燃料の異常を検知しています。高速増殖炉の心臓部である炉心は、液体ナトリウムによって冷却されています。この液体ナトリウムの表面には、「カバーガス」と呼ばれる空間が存在します。カバーガス法は、このカバーガス内に含まれる気体を分析することで、燃料の破損をいち早く発見する技術です。燃料が破損すると、燃料内部の物質が微量に漏れ出し、カバーガスに混ざり込みます。この中には、放射性物質である「核分裂生成ガス」も含まれます。カバーガス法では、専用の装置を用いて気体を採取し、高感度な分析装置で核分裂生成ガスの種類や量を測定します。分析の結果、特定の種類や量の核分裂生成ガスが検出された場合、燃料の破損が疑われます。この情報は、原子炉の運転状況を判断する上で非常に重要な指標となり、燃料破損の早期発見と、それに伴う放射性物質の漏洩防止に大きく貢献しています。このように、カバーガス法は原子炉の安全を維持する上で欠かせない技術と言えるでしょう。
原子力発電の基礎知識

原子力発電の安全を守るカバーガス

原子力発電所では、原子炉内で発生する熱を安全に取り出すため、ナトリウムなどの液体金属が冷却材として使われています。しかし、これらの液体金属は高温になりやすく、空気中の酸素と反応して燃えてしまう危険性もはらんでいます。そこで、液体金属を空気と触れさせないようにする「カバーガス」が重要な役割を担っています。 カバーガスは、原子炉や燃料貯蔵プールなどの容器の上部に充填される気体で、主にアルゴンやヘリウムなどの反応しにくい気体が使用されます。これらの気体は液体金属の上を覆うことで、空気との接触を遮断する「蓋」のような役割を果たします。 カバーガスは、単に液体金属の酸化を防ぐだけでなく、放射性物質の閉じ込めにも貢献しています。原子炉内では、核分裂によって様々な物質が発生しますが、その中には放射性物質も含まれます。カバーガスは、これらの放射性物質が空気中に漏れるのを防ぐ役割も担っているのです。 このように、カバーガスは原子力発電所の安全性を確保するために、非常に重要な役割を果たしています。一見、目立たない存在ながらも、原子力発電を支える陰の立役者と言えるでしょう。
核燃料

原子炉の制御棒: 可燃性毒物とは

原子力発電所では、原子炉内で発生する核分裂反応を制御することで、一定のエネルギーを安定して作り出しています。この核分裂反応の速度を調整することを「原子炉の出力調整」と言い、様々な方法が用いられますが、その中でも特に重要な役割を担うのが「制御棒」です。制御棒は、中性子を吸収しやすい物質で作られており、原子炉内に挿入したり引き抜いたりすることで、核分裂反応の速度を調整します。 原子炉内では、ウランなどの核燃料が中性子を吸収することで核分裂反応を起こし、熱や中性子を発生します。この時発生した中性子が、さらに他のウランに吸収されることで連鎖的に核分裂反応が起き、莫大なエネルギーが生まれます。制御棒は、この連鎖反応を制御する役割を担っています。 制御棒を原子炉内に深く挿入すると、多くの中性子が吸収されるため、核分裂反応の速度は遅くなり、原子炉の出力は低下します。逆に、制御棒を引き抜くと、中性子の吸収が減り、核分裂反応は活発化し、原子炉の出力は上昇します。このように、制御棒を微妙に調整することで、原子炉内の核分裂反応を安定的に維持し、一定の電力を供給することが可能となります。
原子力の安全

カナダの原子力安全: カナダ原子力安全委員会の役割

カナダでは、原子力発電は国の重要なエネルギー源として位置付けられていますが、その安全確保は国民の生活と環境を守る上で不可欠な要素となっています。そのため、原子力利用に関するすべての事項は、憲法に基づき連邦政府の管轄下に置かれています。 通常、電力事業はそれぞれの州政府が管轄していますが、原子力に関しては、その影響の大きさと特殊性から、連邦政府が一括して管理する体制がとられています。これは、原子力発電がひとたび事故を起こした場合、その影響が州境を越えて広範囲に及ぶ可能性があり、国民全体の安全と環境保護を最優先に考える必要があるためです。 具体的には、連邦政府機関であるカナダ原子力安全委員会(CNSC)が、原子力発電所の建設から運転、廃炉に至るまで、その全ライフサイクルにわたって厳格な規制と監督を行っています。CNSCは、国際的な安全基準に基づいた最新の科学的知見や技術を取り入れながら、原子力発電所の安全性を確保するための活動を行っています。また、原子力発電所は、CNSCによる定期的な検査や評価をクリアしなければ操業を続けることができないなど、その安全確保には万全の体制が敷かれています。
核燃料

原子力発電におけるガドリニウムの役割

原子力発電所の中心である原子炉では、ウラン燃料が核分裂を起こして莫大なエネルギーを生み出します。この核分裂の際に、エネルギー以外にも中性子と呼ばれる粒子が放出されます。この中性子は、他のウラン燃料に衝突してさらに核分裂を引き起こす性質を持っています。もし、中性子の数が過剰に増えると、反応が制御不能になり、危険な状態となる可能性があります。そこで、原子炉の安全運転には、中性子の数を適切に調整することが非常に重要になります。 ガドリニウムは、この中性子の数を調整する役割を担う元素です。ガドリニウムは、他の元素と比べて中性子を吸収する能力が非常に高く、原子炉に添加することで、中性子の数を効果的に減らすことができます。このガドリニウムの特性を活かして、原子炉内の反応速度を制御し、安全かつ安定した運転を維持しています。 ガドリニウムは、原子炉の安全性を確保する上で欠かせない元素と言えるでしょう。
核燃料

原子炉の安全性を支えるガドリニア濃度

- ガドリニア濃度とは原子力発電所の中心部には、原子炉と呼ばれる巨大な装置が存在します。この原子炉の中で、ウラン燃料が核分裂反応を起こし、莫大なエネルギーを生み出しています。核分裂反応は、中性子と呼ばれる粒子がウランに衝突することで始まります。この時、中性子の数が多すぎると反応が過熱し、少なすぎると反応が停止してしまうため、原子炉内の中性子の数を適切に保つ必要があります。そこで重要な役割を担うのが、ガドリニアです。ガドリニアは、熱中性子を吸収する性質を持つ元素で、酸化ガドリニウムの形でウラン燃料に混ぜられます。この酸化ガドリニウムの割合を示す値が、ガドリニア濃度です。 ガドリニア濃度は、一般的に重量パーセントで表されます。原子炉の運転が始まったばかりの頃は、核分裂が活発で中性子が大量に発生するため、ガドリニア濃度を高めに設定し、中性子の数を抑制します。そして、運転が進むにつれてウラン燃料が徐々に消費されるとともに、ガドリニアも中性子を吸収して減少していきます。このように、ガドリニア濃度は、原子炉内の反応度を制御し、安全かつ安定的に運転を続けるために重要な要素なのです。
原子力発電の基礎知識

原子炉の安全運転のカギとなるカドミウム比

原子力発電所の中心である原子炉を、安全かつ効率的に運転するためには、炉内の状態を常に把握することが非常に重要です。そのための重要な指標の一つが、中性子のエネルギー分布です。これは、原子炉の中にどのようなエネルギーを持った中性子がどれだけ存在しているのかを表すものです。 原子炉内では、ウランやプルトニウムなどの核燃料が核分裂反応を起こし、その際に様々なエネルギーを持った中性子が飛び出してきます。この中性子のうち、特に重要なのが「熱中性子」と「熱外中性子」です。 熱中性子は、他の原子核と何度も衝突を繰り返すうちにエネルギーを失い、速度が遅くなった中性子のことです。熱中性子は、ウランなどの核燃料に吸収されやすく、新たな核分裂反応を引き起こしやすいため、原子炉の出力制御において重要な役割を担っています。一方、熱外中性子は、熱中性子よりもエネルギーが高く、速度の速い中性子のことです。熱外中性子は、ウランなどの核燃料に吸収されにくい性質があります。 原子炉内における熱中性子と熱外中性子の割合は、原子炉の出力や燃料の燃焼効率に大きな影響を与えます。例えば、熱中性子の割合が多くなると、核分裂反応が活発になり、原子炉の出力が上昇します。逆に、熱外中性子の割合が多くなると、核分裂反応が抑制され、原子炉の出力が低下します。そのため、原子炉を安定して運転するためには、中性子のエネルギー分布を常に監視し、適切に制御する必要があります。
原子力発電の基礎知識

原子力発電の稼働率:その重要性とは?

原子力発電所がどれくらい効率的に発電しているかを測る上で、「稼働率」は重要な指標の一つです。この数値は、ある一定期間のうち、実際に発電していた時間の割合を示しています。例えば、一年間は8760時間ありますが、そのうち7000時間発電していたとすると、稼働率は80%になります。(7000時間 ÷ 8760時間 × 100 = 80%) 稼働率は、原子力発電所の安全性や信頼性を評価する上で重要な要素となります。稼働率が高いということは、それだけ安定して電力を供給できることを意味し、反対に低い場合は、トラブルなどによって発電が停止している時間が長いことを示唆しています。 原子力発電所の稼働率は、定期検査や補修、トラブルの発生など様々な要因によって変化します。近年、日本の原子力発電所は、新規制基準への適合や安全対策工事などのため、長期間にわたって運転を停止せざるを得ない状況が続いており、稼働率が低迷しています。しかし、エネルギー安全保障や地球温暖化対策の観点から、原子力発電の重要性は依然として高く、稼働率の向上は重要な課題となっています。
核燃料

原子力発電の安全を守る渦流探傷検査

- 渦を巻く流れで、見えない傷を見つける 渦流探傷検査は、物体に傷がないかを調べる検査方法の一つです。 この検査では、物を壊したり切ったりすることなく、表面や内部の状態を調べることができます。 検査ではまず、物体に「渦電流」と呼ばれる電気を流します。 渦電流は、物が渦を巻くように流れることからその名前が付けられました。 この電流は、物体の表面付近を流れていきますが、もしも材料内部に傷や異物があると、その流れ方が変化します。 渦流探傷検査では、この電流の流れ方の変化をセンサーで捉えることによって、目では見えない傷を見つけ出すのです。 この検査方法は、原子力発電所で使われる配管や、飛行機の翼、自動車の部品、橋など、様々なものに使われています。 これらの場所では、小さな傷も見逃すと大きな事故につながる可能性があります。 渦流探傷検査は、人々の安全を守るために欠かせない技術と言えるでしょう。
放射線について

荷電粒子放射化分析法:元素分析の新鋭

- 荷電粒子放射化分析法とは荷電粒子放射化分析法(CPAA)は、物質に含まれる元素を非常に高い感度で測定できる強力な分析技術です。食品の安全性の確認や環境中の微量元素分析など、様々な分野で利用されています。この分析法では、まず分析したい試料に、陽子や重陽子などの高エネルギーを持つ荷電粒子を照射します。荷電粒子が試料の中の原子核に衝突すると、原子核はエネルギーの高い状態、すなわち励起状態になります。この励起状態は不安定なため、原子核は放射性同位体と呼ばれる、放射線を出す性質を持つ原子へと変化します。生成された放射性同位体は時間とともに崩壊し、その過程で特定のエネルギーを持ったガンマ線を放出します。このガンマ線のエネルギーは元素の種類によって異なり、その強度は試料中の元素の量に比例します。そのため、放出されたガンマ線のエネルギーと強度を精密に測定することによって、試料にどの元素がどれだけ含まれているのかを正確に知ることができます。CPAAは、ごく微量の元素でも検出できるため、ppm(100万分の1)やppb(10億分の1)レベルの分析に適しています。また、他の分析方法では測定が難しい軽元素の分析にも有効です。
放射線について

荷電粒子平衡:ミクロな世界のエネルギーバランス

- 荷電粒子平衡とは物質に強力なエネルギーを持つ放射線、つまり荷電粒子を照射すると、物質の中では様々な反応が起こります。荷電粒子平衡とは、物質の内部の極めて小さな領域において、荷電粒子が持つエネルギーの出入りが釣り合っている状態を指します。もう少し具体的に説明すると、物質中の微小な領域に、外から特定のエネルギーを持った荷電粒子が飛び込んできます。同時に、その領域からは、全く同じエネルギーを持った荷電粒子が外へと飛び出して行きます。荷電粒子平衡の状態では、飛び込んでくる荷電粒子の数と飛び出して行く荷電粒子の数は常に等しく、まるで、人の流れが絶え間なく続く駅の改札口で、入ってくる人と出て行く人の数が常に一定に保たれているようなイメージです。荷電粒子平衡は、放射線物理学において重要な概念の一つです。放射線治療において、体内における放射線のエネルギー付与や線量分布を正確に計算するために、この荷電粒子平衡の理解は欠かせません。荷電粒子平衡の状態を把握することで、より効果的で安全な放射線治療の実現に繋がると期待されています。
原子力の安全

原子力発電と活断層:安全確保の重要な視点

活断層とは、地球内部の岩盤にできた割れ目の中で、過去に繰り返し地盤がずれ動いた跡があり、今後も動く可能性のあるものを指します。いわば、地球の表面に刻まれた過去の地震の傷跡とも言えます。この活断層こそ、地震の発生源となる可能性を秘めているため、人々の生活に大きな影響を与える可能性があります。 特に、原子力発電所のように、高い安全性が求められる施設の建設においては、活断層の存在は極めて重要な問題となります。原子力発電所は、ひとたび事故が起きれば、広範囲に深刻な被害をもたらす可能性があります。そのため、建設予定地の地下に活断層が存在するかどうか、存在する場合には活動性はどうなのか、将来どのくらいの規模の地震を引き起こす可能性があるのかを綿密に調査し、評価することが必要不可欠です。活断層の調査は、過去の地震の記録を紐解き、地層のずれや変形を分析すること、さらには、人工的に振動を起こして地下構造を調べるなど、高度な技術と専門的な知識を要する作業となります。
その他

褐炭:豊富な資源、活用の道は?

石炭と一言で言っても、実際には様々な種類が存在します。石炭は、大昔の植物が地中に埋もれ、長い年月を経て変化することで生まれます。この変化の度合いを「炭化度」と呼び、炭化度が低いものから順に、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭といった種類に分けられます。日本では、泥炭と亜炭は石炭には含まれず、褐炭が最も炭化度の低い石炭として扱われています。 褐炭は、他の種類の石炭と比べて水分や酸素を多く含んでいることが特徴です。そのため、黒褐色をしており、光沢があまり見られません。また、炭化度が低いため、発熱量が少なく、燃焼時に煙や灰が多く発生するという側面もあります。しかし、埋蔵量が多く、比較的浅い場所に存在するため、露天掘りによる採掘が可能な点が利点として挙げられます。 日本においては、褐炭は主に北海道や東北地方で産出されます。これらの地域では、褐炭は火力発電所の燃料として利用されてきました。近年では、地球温暖化対策の観点から、褐炭の利用は減少傾向にあります。しかし、褐炭は、他の石炭と比べて、化学原料や土壌改良剤など、燃料以外の用途への利用も期待されています。
原子力の安全

原子力発電の安全: 活性炭フィルタの役割

- 活性炭フィルタとは原子力発電所からは、運転に伴い微量の放射性物質が発生することがあります。これらの物質が環境中に放出されるのを防ぐため、発電所には様々な安全装置が設置されています。その中でも、活性炭フィルタは、気体状の放射性物質、特に放射性ヨウ素を効率的に除去する重要な役割を担っています。活性炭フィルタの心臓部となる活性炭は、ヤシ殻や石炭などを高温で処理することで作られる、非常に小さな孔がたくさん空いた構造を持つ物質です。この無数の孔が、まるでスポンジのように放射性物質を吸着し、内部に閉じ込めることで、大気中への放出を防ぎます。特に、活性炭はヨウ素に対して非常に高い吸着能力を示すため、原子力発電所においては欠かせない設備となっています。活性炭フィルタは、その高い吸着性能により、放射性物質の放出抑制に大きく貢献しています。しかし、活性炭フィルタで除去できる放射性物質の種類や量は、活性炭の種類や運転条件によって異なってきます。そのため、それぞれの原子力発電所内の環境や運転状況に合わせて、適切な種類の活性炭が選定され、使用されています。
放射線について

活性種:放射線が生み出すミクロの世界のパワー

- 活性種とは? 物質は、通常、安定した状態で存在しています。これは、湖面に例えると、静かで穏やかな状態であると言えます。しかし、物質に放射線のような強いエネルギーが加わると、その安定した状態は崩れ、不安定な状態になります。この不安定な状態にある原子や分子を活性種と呼びます。 活性種は、フリーラジカルや遊離基とも呼ばれ、他の物質と非常に反応しやすいという特徴があります。これは、活性種が、元の安定した状態に戻るために、周囲の物質から電子を奪ったり、逆に与えたりしようとするためです。 湖面に例えると、活性種は、静かな水面に投げ込まれた小石のようなものです。小石が水面に落ちると、波紋が広がっていきます。活性種も同様に、物質内部で周囲に影響を与え、様々な反応を引き起こします。 活性種は、放射線によって発生するだけでなく、紫外線や化学物質によっても発生します。また、私たちの体の中でも、呼吸によってエネルギーを生み出す過程で、活性種が常に発生しています。活性種は、必ずしも有害なものではなく、体内の免疫システムにおいて、細菌やウイルスを攻撃する役割も担っています。
原子力の安全

原子力発電の未来を担う:合衆国連邦規制基準Part52

アメリカの原子力発電所を新たに建設し、稼働させるには、「合衆国連邦規制基準第10部50項」という法律に基づいた、非常に厳しい許可を得るためのプロセスを経なければなりませんでした。このプロセスは、大きく分けて二つの段階に分かれています。まず初めに、発電所の建設を行うための許可を取得します。そして、建設がすべて完了した後に、発電所を稼働させるための許可を取得します。しかしながら、このプロセスには非常に長い年月と莫大な費用がかかってしまうという問題点がありました。そのため、新規の原子力発電所の建設をためらう大きな要因の一つとなっていました。
その他

家畜廃棄物で発電?注目の気泡型流動床とは

近年、地球温暖化や資源の枯渇といった問題が深刻化する中で、再生可能エネルギーへの期待が高まっています。その中でも、家畜の糞尿や残飼などの廃棄物をエネルギー源として活用する「家畜廃棄物エネルギー」が注目を集めています。 従来、家畜廃棄物は適切に処理しなければ悪臭や水質汚染の原因となるため、その処理に頭を悩ませてきました。しかし、見方を変えれば、家畜廃棄物は貴重なエネルギー資源とも言えます。 家畜廃棄物エネルギーは、主にメタン発酵と燃焼という二つの方法で利用されます。メタン発酵は、家畜の糞尿を微生物の力で分解し、都市ガスの主成分であるメタンガスを発生させる技術です。発生したメタンガスは、発電や暖房に利用することができます。一方、燃焼は、乾燥させた家畜の糞尿や残飼を燃料として燃やし、熱エネルギーを直接的に利用する方法です。 家畜廃棄物エネルギーの活用は、廃棄物処理の問題解決だけでなく、温室効果ガスの削減やエネルギーの地産地消にもつながるため、環境保全と経済活性化の両面から大きな期待が寄せられています。
原子力施設

加速器駆動未臨界炉:未来の原子力エネルギー

- 革新的な原子力技術原子力発電は、高効率で安定したエネルギー源として期待されていますが、安全性や放射性廃棄物の処理など、解決すべき課題も抱えています。こうした中、従来の原子炉とは異なる新しい仕組みを持つ「加速器駆動未臨界炉(ADS)」が注目を集めています。ADSは、原子炉内でウランなどの核燃料を臨界状態にせず、常に未臨界状態に保つ点が大きな特徴です。従来の原子炉では、核分裂反応が連鎖的に起きる臨界状態を維持することで熱エネルギーを生み出しています。一方、ADSでは加速器と呼ばれる装置を用いて陽子を高速に加速し、重金属の標的に衝突させます。この衝突によって発生する中性子を核燃料に照射することで核分裂反応を起こし、熱エネルギーを取り出します。ADSでは、外部からの中性子供給を停止すれば、核分裂反応も直ちに停止します。そのため、従来の原子炉と比べて安全性が高いと考えられています。また、ADSは、従来の原子炉では利用が難しかった劣化ウランやプルトニウムを燃料として使用できるため、放射性廃棄物の減容化や資源の有効活用にも貢献すると期待されています。ADSは、まだ開発段階の技術ですが、その革新的な仕組みは、原子力発電の将来を大きく変える可能性を秘めています。実用化に向けて、研究開発が世界中で進められています。
核燃料

加速器核変換処理システム:未来の原子力技術

エネルギー資源の乏しい我が国において、原子力発電は、高い効率で安定したエネルギー供給源として、その役割に期待が寄せられています。しかしながら、原子力発電には、運転に伴い発生する高レベル放射性廃棄物の処理という課題が残されていることも事実です。 この高レベル放射性廃棄物は、極めて強い放射能を持つため、人間の健康や環境への影響を最小限に抑えるべく、厳重な管理の下で長期にわたり保管する必要があります。この課題を解決する技術として、近年注目を集めているのが加速器核変換処理システムです。 この革新的なシステムは、従来の原子炉とは全く異なるメカニズムを用いて核反応を制御します。具体的には、加速器と呼ばれる装置を用いて原子核を光速に近い速度まで加速し、標的となる原子核に衝突させることで核変換反応を誘起します。この核変換反応により、高レベル放射性廃棄物を構成する長寿命の放射性物質を、より短寿命の物質へと変換することが可能となります。 加速器核変換処理システムが実用化されれば、高レベル放射性廃棄物の保管期間を大幅に短縮できる可能性を秘めており、原子力発電の安全性向上に大きく貢献することが期待されています。
核燃料

加速器駆動核変換:未来の原子力発電

原子力発電は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギー源として期待されています。しかし、原子力発電には、放射線を出す物質である放射性廃棄物の処理という大きな課題が残されています。 原子力発電所から発生する放射性廃棄物のなかでも、特に放射能レベルの高いものが高レベル放射性廃棄物です。高レベル放射性廃棄物は、ウラン燃料が原子炉内で核分裂反応を起こした後に出る使用済み燃料を再処理した際に発生します。 高レベル放射性廃棄物は、数万年もの間、強い放射線を出し続けるため、人が近づいたり、環境中に漏れたりしないよう、厳重に管理する必要があります。具体的には、ガラスと混ぜて固化させた後、頑丈な金属製の容器に入れ、地下深くに作った施設で厳重に保管するという方法が検討されています。 しかし、地下深くに作った施設といえども、地震や火山噴火などの自然災害のリスクを完全に無くすことはできません。また、高レベル放射性廃棄物の保管施設をどこに作るかという問題も、国民の理解を得るのが難しい課題です。このように、高レベル放射性廃棄物の処理は、技術的にも社会的にも解決すべき課題が多く、原子力発電の利用拡大における大きな障壁となっています。