「M」

原子力施設

日英共同研究:MOZART計画

高速増殖炉は、資源の乏しい我が国にとって、エネルギー問題解決の切り札として期待されています。その実現のためには、炉心内部で起こる核分裂反応を精密に制御し、安全性を確保することが何よりも重要です。この核分裂反応の特性を「炉心の核特性」と呼びますが、これを正確に把握することは、高速増殖炉の開発・運転において避けて通れない課題です。 MOZART計画は、日英両国が協力して実施した高速増殖炉の炉心の核特性に関する先駆的な研究計画でした。この計画では、実験とシミュレーションを組み合わせた革新的な手法を用いることで、炉心内の複雑な現象の解明に挑みました。具体的には、実験用の高速炉を用いて実際に核分裂反応を起こし、その際に得られる膨大なデータを詳細に分析しました。同時に、コンピュータを用いた高度なシミュレーションを実施することで、実験では観測が困難な現象までをも詳細に再現しようと試みました。 MOZART計画で得られた成果は、その後の高速増殖炉の設計や安全性の評価に大きく貢献しました。日英両国の研究者の協力によって生まれたこの計画は、高速増殖炉開発における国際協力の成功例としても高く評価されています。
原子力の安全

原子力プラントの守護神:MEDUSA

原子力発電所は、私たちの生活に欠かせない電力を安定して供給する重要な施設です。しかし、その巨大なエネルギーを扱うがゆえに、安全確保には万全を期さなければなりません。原子力発電所では、常にプラントの状態を監視し、万が一、異常が発生した場合でも、迅速に対応できる体制を整えています。この重要な役割を担うのがプラント監視システムです。 プラント監視システムは、原子炉内やその周辺に設置された多数のセンサーを通じて、プラントの状態を把握します。原子炉の出力をはじめ、温度、圧力、水位、放射線量といった様々なパラメータを24時間体制で監視し、常に変化を記録しています。もし、これらのパラメータが、あらかじめ設定された正常な範囲から逸脱した場合、プラント監視システムは、即座に警報を発して運転員に知らせます。運転員は、この警報に基づき、状況を素早く判断し、手順書に従って適切な措置を講じることで、事故の発生を未然に防ぐことができます。このようにプラント監視システムは、原子力発電所の安全運転に欠かせない重要な役割を担っているのです。
核燃料

革新的原子力技術:MEGAPIEプロジェクト

- MEGAPIEプロジェクトとはMEGAPIEプロジェクトは、「メガワット級パイロット標的実験」を意味する「Megawatt Pilot Target Experiment」の略称で、原子力発電の将来を担う重要な国際共同研究プロジェクトです。1999年に開始されたこのプロジェクトは、原子力発電所から排出される使用済み核燃料に含まれるマイナーアクチノイドの処理方法として期待されています。マイナーアクチノイドは、使用済み核燃料の中でも特に放射能の寿命が長く、環境への影響が懸念されています。そこで、MEGAPIEプロジェクトでは、液体鉛ビスマスを標的にした強力な中性子ビームを用いることで、このマイナーアクチノイドを消滅処理しようとしています。具体的には、加速器で生成した陽子ビームを液体鉛ビスマスに照射することで中性子を発生させ、その中性子をマイナーアクチノイドに当てて核分裂を起こさせます。この核分裂によって、マイナーアクチノイドはより短寿命の核種に変換され、放射能の寿命が短縮されます。MEGAPIEプロジェクトは、核廃棄物の量と危険性を大幅に低減し、より安全な核廃棄物管理を実現するための重要な一歩となることが期待されています。
原子力施設

次世代原子力システム:MYRRHAの可能性

- MYRRHAとはMYRRHA(ミーラ)は、ベルギーの研究機関SCK・CENが中心となって開発を進めている、次世代の原子力システムです。正式名称は「多目的加速器駆動核変換システム」といい、英語の頭文字を取ってADSとも呼ばれます。 従来の原子炉は、ウランなどの核分裂しやすい物質を核燃料として利用し、その核分裂反応によって生じる熱エネルギーを用いて発電します。一方、MYRRHAは、加速器という装置を用いて陽子を光速近くまで加速し、重金属の標的に衝突させることで中性子を発生させます。この中性子を用いて核分裂反応を持続させるのが、加速器駆動システムと呼ばれる所以です。 MYRRHAは、この加速器駆動システムを用いることで、従来の原子炉では利用が難しかったトリウムや劣化ウランなども燃料として使用することが可能となります。また、運転中に発生する高レベル放射性廃棄物の量を大幅に減らし、さらにその毒性を短期間化することも期待されています。 MYRRHAは、世界に先駆けて設計が進められている実験炉レベルのADSで、その出力は40MWにも達します。将来的には、この技術を応用した商用炉の建設も期待されており、エネルギー問題や環境問題の解決に貢献することが期待されています。
核燃料

原子力発電の未来: MUSE計画

- MUSE計画の概要MUSE計画は、フランスが主導的な役割を担い、世界各国と協力して進めている、未来の原子力発電の在り方を大きく変える可能性を秘めた重要な研究計画です。この計画の大きな目標は、加速器駆動システム(ADS)と呼ばれる、従来の原子炉とは根本的に異なる仕組みを用いた、革新的な原子炉の開発です。従来の原子炉では、ウランやプルトニウムといった重い原子核に中性子を衝突させて核分裂反応を起こし、その際に発生する熱エネルギーを利用して電力などを生成しています。一方、ADSでは、加速器と呼ばれる装置を用いて光速に近い速度まで加速した陽子を、標的となる重金属に衝突させることで中性子を発生させます。そして、この中性子を用いて核分裂反応を持続させるのです。ADSには、従来の原子炉と比べて、いくつかの優れた点があります。まず、加速器からの陽子ビームを調整することで、核分裂反応を精密に制御することができるため、より安全性の高い原子炉を実現できると考えられています。また、従来の原子炉では利用が難しいとされてきたトリウムや劣化ウランといった資源も燃料として利用できる可能性があり、資源の有効活用にも貢献できます。さらに、ADSでは、高速中性子と呼ばれる高いエネルギーを持った中性子を利用するため、従来の原子炉では処理が困難であった高レベル放射性廃棄物を処理できる可能性も秘めており、原子力発電の課題解決にも大きく貢献することが期待されています。MUSE計画は、このようなADSの持つ可能性を実証するための重要な一歩となる計画であり、その成果は、将来のエネルギー問題の解決に大きく貢献するものと期待されています。
原子力の安全

原子炉の安全を守る指標:MCPRとは

原子力発電所は、私たちの生活に欠かせない電力を供給する重要な施設ですが、その安全性については常に万全を期さなければなりません。中でも、沸騰水型原子炉(BWR)は、水を直接沸騰させて蒸気を発生させるという特徴を持つため、その安全性の確保には特に注意が必要です。 BWRは、炉心と呼ばれる部分で核燃料を核分裂させ、その際に発生する熱を利用して水を沸騰させます。発生した蒸気はタービンと呼ばれる装置を回し、電力を生み出します。この過程で重要なのは、水の沸騰状態を常に適切に制御することです。 水の沸騰状態は、熱の伝わり方に大きな影響を与えます。もし、炉心で発生する熱が多すぎる、あるいは水の循環が不十分なために沸騰が激しくなりすぎると、炉心の温度が過度に上昇し、燃料が損傷する可能性があります。このような事態を防ぐため、BWRには様々な安全装置が備わっており、炉内の圧力や水位、中性子などの状態を常に監視しています。 さらに、万が一、異常が発生した場合でも、制御棒の挿入や冷却水の注入といった緊急措置が自動的に作動するシステムが構築されています。これらの安全対策により、BWRは高い安全性を維持しながら、私たちの生活を支える電力を供給し続けています。
その他

製品の安全確保に不可欠なMSDS

- MSDSとはMSDSは、Material Safety Data Sheetの頭文字をとったもので、日本語では「化学物質等安全性データシート」といいます。これは、化学製品を安全に取り扱うために必要な情報を一まとめにした説明書のようなものです。MSDSには、製品名や製造元の情報といった基本的な情報に加えて、様々な情報が記載されています。例えば、その化学物質がどのような性質を持っているのか、具体的な取り扱い方法、火災や爆発などの危険性、人体への有害性、万が一事故が起こった場合の安全対策や緊急時の対応など、化学物質を安全に扱う上で知っておくべき情報が網羅されています。このMSDSは、化学物質を製造または輸入する事業者が作成し、製品に添付することが法律で義務付けられています。そのため、私たちが化学物質を扱う際には、MSDSをよく読み、記載されている内容を理解した上で、安全に取り扱うことが非常に重要です。MSDSの情報は、化学物質を安全に取り扱うための重要な指針となります。もし、内容が理解できない場合は、そのまま作業を進めるのではなく、上司や先輩に相談したり、製造元に問い合わせたりするなどして、疑問点を解消してから作業を開始するようにしましょう。
原子力の安全

原子力発電の安全確保:MUFとその重要性

- MUFとは原子力発電所では、発電の燃料となるウランや、ウランから変化して生まれるプルトニウムといった、核物質と呼ばれる物質を厳重に管理しています。これらの物質は、ほんの僅かな量でも莫大なエネルギーを生み出すことができるため、厳重に管理され、その量も正確に記録されています。 この核物質の量ですが、実際には、帳簿に記録された数値と、実際に存在する物質の量との間に、わずかな差が生じることがあります。この差を-MUF- (Material Unaccounted For) と呼び、日本語では「在庫差」と訳されます。 MUFは、核物質の計量技術の限界や、計量システムのわずかな誤差、あるいは人間の操作ミスなど、様々な要因によって生じます。微量の核物質が付着した機器の移動や、核物質が自然崩壊する過程で発生する放射性物質の量を正確に把握できないことなども、MUFの原因となります。 ほとんどの場合、MUFはごく僅かなものであり、直ちに問題となることはありません。しかし、MUFは、核物質の計量管理の精度や、計量システムの潜在的な問題点、あるいは、ごく稀にではありますが、盗難や紛失の可能性を示唆するものであるため、その値と発生原因を分析することは、核物質防護の観点から非常に重要です。そのため、国際原子力機関(IAEA)は、MUFの発生状況を常に監視し、核物質の防護体制の強化に努めています。
放射線について

遺伝子変異と放射線:マラーの三原則

20世紀初頭、生命の設計図と言われる遺伝子については、その構造や働きなど、多くの謎に包まれていました。この時代に、アメリカの遺伝学者であるハーマン・ジョセフ・マラーは、ショウジョウバエを用いた画期的な実験を行い、遺伝学に大きな進展をもたらしました。 マラーは、ショウジョウバエにエックス線を照射すると、遺伝子に変異が生じることを発見しました。自然発生的な遺伝子変異はごく稀にしか起こらず、当時の技術では観察や解析が困難でした。しかし、マラーは人工的に放射線を用いることで遺伝子変異を誘発できることを証明し、遺伝子の研究を大きく前進させました。この発見は、遺伝子の構造や機能を解明するための新たな道を切り開き、その後の分子生物学の発展に大きく貢献しました。 マラーの功績は遺伝学の分野に革命をもたらしたとして高く評価され、1946年にはノーベル生理学・医学賞が授与されました。彼の研究は、今日においても遺伝子の研究や放射線の影響に関する研究の礎となっています。
その他

原子力発電の安全を守るMBAとは?

- MBAとはMBAとは、「物質収支区域」と呼ばれる区域のことで、英語の"Material Balance Area"の頭文字をとったものです。原子力発電所のように、ウランやプルトニウムといった核物質を取り扱う施設では、これらの物質がテロなどに悪用されることを防ぐため、国際的な安全基準に基づき、その量を厳格に管理することが義務付けられています。MBAは、施設内で核物質がどこにどれだけあるのかを正確に把握し、管理するための重要な概念です。MBAは、核物質の量を測定しやすく、かつ不正な移動を容易に発見できるように、施設内の建屋や部屋、またはそれらよりもさらに小さな区画を区切って設定されます。例えば、核燃料物質を貯蔵する部屋、核燃料物質を加工する部屋、使用済み核燃料を保管するプールなどは、それぞれが独立したMBAとして設定されます。それぞれのMBAでは、核物質の「受払」と「棚卸」を定期的に行うことで、常に核物質の量が適切に管理されていることを確認します。「受払」とは、MBA内に核物質がどれくらい搬入され、どれくらい搬出されたかを記録することです。「棚卸」とは、実際にMBA内に存在する核物質の量を測定することです。このように、MBAを設定し、その中で核物質の受払と棚卸を厳格に行うことで、施設内の核物質の量を常に把握し、不正な持ち出しや紛失などを防止することができます。これは、原子力発電所の安全確保にとって非常に重要な取り組みです。
原子力の安全

原子力発電の安全確保:MBRとは?

原子力発電は、発電時に二酸化炭素を排出しないという利点がある一方で、核物質が兵器やテロに利用される可能性も孕んでいます。そのため、国際社会は、原子力発電を行う国に対して、核物質が平和利用の目的にのみ使用されていることを証明することを求めています。この証明において中心的な役割を果たすのが物質収支報告、すなわちMBRです。 MBRとは、国内に存在するすべての核物質について、その種類や量、そして所在地などの情報を正確に記録し、国際原子力機関(IAEA)に報告する仕組みです。この報告には、ウランやプルトニウムといった核物質の採掘から、発電のための燃料の製造、使用済み燃料の保管に至るまで、すべての段階が含まれます。 IAEAは、提出されたMBRを詳細に分析し、核物質の数量に不一致がないか、また、申告されていない動きがないかを厳格に検査します。そして、すべての核物質が平和的な原子力活動の範囲内で適切に管理されているという確証が得られた場合に限り、国際社会は、その国の原子力発電が安全かつ平和的に運営されていると判断します。このように、MBRは、国際的な信頼を維持し、原子力発電を安全に推進していくために不可欠な制度と言えるでしょう。
原子力の安全

原子力発電の安全性とMTBF

原子力発電は、ウランなどの核燃料を用いて発電を行います。核燃料に含まれるウランが核分裂反応を起こす際に膨大な熱エネルギーが発生し、その熱を利用して蒸気を発生させ、タービンを回し発電機を動かすことで電気を作り出します。火力発電と比較して、同じ量の発電を行う場合に必要な燃料が少量で済むため、発電効率が非常に高く、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量が少ないという利点があります。 しかし、原子力発電は同時に、放射性物質を扱うという大きな責任を負うことになります。放射性物質は、目に見えず、匂いもしないため、適切に管理されないと人体や環境に深刻な影響を与える可能性があります。 そのため、原子力発電所は、徹底した安全対策を講じて設計・運用されています。例えば、炉心は頑丈な圧力容器で覆われ、放射性物質の外部への漏洩を防いでいます。さらに、万が一、事故が発生した場合でも、その影響を最小限に抑えるため、緊急炉心冷却装置や格納容器など、多重の安全装置が備えられています。 原子力発電所の運転員は、高度な専門知識と技術を習得しており、原子炉の運転状況を常に監視し、安全な運転に全力を注いでいます。また、原子力発電所は、定期的に厳しい点検や検査を受けており、常に安全性が確認されています。
核燃料

エネルギー資源の有効活用:MOX燃料とは

- MOX燃料混合酸化物燃料MOX燃料とは、混合酸化物燃料の略称で、原子力発電所でウラン燃料と並ぶ核燃料として利用されています。MOX燃料は、ウランとプルトニウムを混ぜ合わせて作られます。プルトニウムは、ウラン燃料が原子炉内で核分裂反応を起こす際に生じる物質です。従来のウラン燃料のみを使う原子力発電所では、使用済み燃料の中にプルトニウムが残ってしまいます。しかし、MOX燃料を利用すれば、このプルトニウムを燃料として再利用することができます。そのため、MOX燃料は、資源の有効活用と放射性廃棄物の低減に貢献する燃料と言えるでしょう。MOX燃料は、ウラン燃料と比べてプルトニウムの割合が多いため、より多くの熱エネルギーを生み出すことができます。また、ウラン燃料と比べて燃焼期間が長いため、燃料交換の頻度を減らすことも可能です。しかし、MOX燃料の製造は、ウラン燃料に比べて複雑でコストがかかるという課題もあります。また、プルトニウムは核兵器の材料となる可能性もあるため、厳重な管理体制が必要となります。このように、MOX燃料は資源の有効活用や放射性廃棄物の低減に貢献する一方、コストや管理体制の面で課題も抱えています。原子力発電の将来を考える上で、MOX燃料のメリットとデメリットを理解しておくことが重要です。
原子力の安全

韓国の原子力行政を担うMOST

韓国の科学技術政策の中枢を担う機関、それが科学技術情報通信部、通称MOSTです。韓国語では「과학기술정보통신부」、英語では「Ministry of Science and ICT」と表記され、その名の通り、科学技術と情報通信、二つの分野を横断的に管轄している点が大きな特徴です。 MOSTは、基礎科学分野における研究開発支援から、人工知能やバイオテクノロジーといった先端技術分野の育成、そして、次世代通信網の構築やデジタル化の推進に至るまで、幅広い事業を統括しています。 韓国の未来を支える科学技術の振興、そして、世界をリードする情報通信技術の確立という重要な使命を担い、産学官連携を推進しながら、様々な政策やプロジェクトを推進しています。 その活動は、韓国国内に留まらず、国際的な協力関係の構築にも積極的に取り組み、世界各国と連携し、地球規模の課題解決にも貢献しています。
原子力の安全

地震の揺れを測る: MSK震度階とは

日々生活する中で、私達は地震の揺れの強さを知るために「震度」という言葉を使います。この震度は、ある地点における地震の揺れの強さを表す尺度です。 日本では、気象庁が発表する震度階級が一般的に使われています。この震度階級は、震度0、震度1、震度2、震度3、震度4、震度5弱、震度5強、震度6弱、震度6強、震度7 の10段階で区分されます。それぞれの段階に応じて、体感する揺れの程度や建物への影響などが異なります。 震度階級は世界共通ではなく、国や地域によって独自の基準が定められています。日本の震度階級は、世界的に見ると細かく区分されている点が特徴です。これは、日本が地震の発生頻度が高く、被害を軽減するために詳細な情報提供が必要とされるためです。 震度を知ることで、私たちは地震の規模を把握し、適切な行動をとることができます。例えば、大きな地震が発生した場合、震度情報に基づいて避難の必要性を判断したり、家具の固定などの安全対策を講じたりすることができます。
原子力施設

次世代の原子力発電:モジュラー型高温ガス炉

- モジュラー型高温ガス炉とはモジュラー型高温ガス炉(MHTGR Modular High-Temperature Gas-Cooled Reactor)は、従来の原子力発電の安全性や効率性をさらに向上させた、次世代の原子力発電技術として期待されています。モジュラー型高温ガス炉は、その名前が示すように、複数の小型の原子炉を組み合わせることで発電を行う仕組みです。従来の大型原子炉とは異なり、工場で原子炉をモジュール単位で製造し、現場で組み立てるため、建設期間の短縮やコスト削減が可能となります。また、高温ガス炉という名前は、冷却材に水ではなくヘリウムガスを使用し、従来よりも高い温度で運転できることを示しています。ヘリウムガスは化学的に安定しているため、水のように水素爆発を起こす心配がありません。さらに、高い温度で運転することで、熱効率が向上し、より多くの電力を発電することができます。安全性という点においても、モジュラー型高温ガス炉は優れた特徴を持っています。炉心は、セラミックで被覆された燃料粒子を黒鉛で固めた構造となっており、高い耐熱性を誇ります。万が一事故が発生した場合でも、炉心の溶融や放射性物質の大量放出の可能性は極めて低いとされています。このように、モジュラー型高温ガス炉は、安全性、効率性、経済性のすべてにおいて優れた特徴を持つ、次世代の原子力発電技術として期待されています。将来的には、水素製造や海水淡水化など、発電以外の分野への応用も期待されています。
放射線について

エネルギーの単位 MeV とは

- MeVとは MeVはメガ電子ボルトと読み、エネルギーの大きさを表す単位です。 身近な例で例えると、電気ポットでお湯を沸かす際に消費される電気エネルギーは、数百Wh(ワット時)という単位で表されます。 MeVはそれと比較すると非常に小さなエネルギーを表す単位で、主に原子核や素粒子といった極微の世界で使われています。 MeVは、100万電子ボルト、つまり10⁶eVと同じ大きさです。 電子ボルト(eV)は、電気を帯びた粒子が電圧の中を移動する際に得るエネルギーを表す単位です。 たとえば、1ボルトの電圧がかかった空間を電子1個が移動すると、その電子は1eVのエネルギーを得ます。 しかし、1eVは非常に小さなエネルギーであるため、原子力分野では100万倍大きいMeVがよく使われます。 たとえば、ウラン原子が核分裂する際に放出されるエネルギーは約200MeV、太陽の中で水素原子4つが核融合してヘリウム原子1つになる際に放出されるエネルギーは約26MeVに相当します。
原子力の安全

原子力発電の安全性向上に貢献するMERとは?

- その他報告(MER)の概要その他報告(MER)とは、原子力発電所で発生する比較的軽微な事象を報告するための仕組みです。英語では "Miscellaneous Event Report" と言い、その頭文字を取ってMERと呼んでいます。原子力発電所では、たとえ小さなトラブルであっても、それが原因となって大きな事故につながる可能性もあります。そこで、軽微な事象も含めて幅広く情報を収集し、共有することが重要になります。MERは、国際原子力機関(IAEA)や世界原子力発電事業者協会(WANO)といった国際機関が中心となって運用しています。これらの機関は、世界中の原子力発電所からMERを通じて報告された情報を収集し、分析して、他の発電所にも共有しています。これにより、ある発電所で発生したトラブルの教訓を、他の発電所で活かすことができる仕組みになっています。MERの目的は、原子力発電所の安全性を向上させることにあります。軽微な事象であっても、他の発電所で同様の事象が発生する可能性はあります。MERを通じて情報を共有することで、未然に事象を防止し、世界中の原子力発電所の安全性をより高いレベルに保つことを目指しています。MERは、原子力発電所の安全性向上に大きく貢献する重要な枠組みと言えるでしょう。
その他

MRI検査とは?

皆さんは、病院で検査を受ける際に「MRI」という言葉を耳にしたことはありますか? MRI検査は、体の内部を鮮明に映し出すことができる検査です。レントゲン検査のように放射線を使うわけではないので、被曝の心配がなく、安心して受けることができます。 MRI検査では、強力な磁石と電波を用いて、体の様々な組織や器官の違いを、信号の強弱として捉え、画像化します。この検査は、脳や脊髄などの神経系はもちろんのこと、関節や筋肉、内臓など、体の幅広い部位の診断に役立ちます。 例えば、脳梗塞や脳腫瘍などの脳疾患、椎間板ヘルニアなどの脊髄疾患、靭帯損傷や筋肉断裂などの運動器疾患、さらに、肝臓や膵臓などの内臓疾患など、様々な病気の診断に用いられています。 MRI検査は、痛みや苦痛を伴わない検査であるため、体の負担が少なく、安心して受けることができます。検査時間は、検査部位や撮影方法によって異なりますが、30分から1時間程度です。検査中は、大きな音がしますが、検査担当者の指示に従っていれば問題ありません。