
原子力発電の安全性:流動加速腐食とは
- 流動加速腐食の概要流動加速腐食(FAC)は、原子力発電所をはじめ、様々な産業プラントの配管や機器において、材料が予期せず損傷する可能性のある現象です。この現象は、流体の流れによって生じる機械的作用と化学的作用が組み合わさることで発生します。配管内を流れる水や蒸気などの流体は、その流れによって配管内壁に常に力を加えています。特に、配管の曲がり部や分岐部、縮径部など流れが乱れたり、速度が変化したりする箇所では、この力が局所的に強くなります。このような箇所では、流体の流れによって保護皮膜と呼ばれる、金属表面に形成される腐食を抑える膜が剥ぎ取られてしまうことがあります。保護皮膜が剥ぎ取られた金属表面は、再び腐食しやすい状態となり、さらに流体の流れによって腐食生成物が流されていくことで、腐食が加速的に進行します。これが流動加速腐食と呼ばれる現象です。流動加速腐食は、発生してから短期間で配管や機器に穴を開けてしまう可能性があり、プラントの安全運転に重大な影響を与える可能性があります。そのため、原子力発電所をはじめとする様々な産業プラントにおいて、流動加速腐食の発生メカニズムを理解し、適切な対策を講じることが重要です。