エネルギー源: 核分裂炉

エネルギー源: 核分裂炉

電力を見直したい

先生、「核分裂炉」って、どんなものですか?

電力の研究家

「核分裂炉」は、簡単に言うと、ウランなどの原子核が分裂するときに発生する熱を利用して電気を作る装置のことだよ。

電力を見直したい

原子核が分裂する時に熱が出るんですか?

電力の研究家

そうだよ。原子核が分裂する時に莫大なエネルギーが放出されるんだけど、そのエネルギーが熱として現れるんだ。原子力発電は、この熱を利用して水を沸騰させて蒸気をつくり、その蒸気でタービンを回して発電するんだよ。

核分裂炉とは。

「原子力発電で使う『核分裂炉』いう言葉は、原子核が分裂する時に起こる連鎖反応を使って、一定の熱を作り出す施設のことを指します。この言葉は、原子炉の中でも、原子核がくっつく時に起こる熱核融合反応を利用する『核融合炉』と区別する時に使われます。ちなみに、核分裂炉と核融合炉、両方の仕組みを組み合わせた『混成炉』というものが考えられています。

核分裂炉とは

核分裂炉とは

– 核分裂炉とは核分裂炉は、ウランなどの重い原子核に中性子をぶつけることで原子核を分裂させ、その際に発生するエネルギーを取り出す施設です。この原子核の分裂現象を核分裂と呼びます。核分裂では、一つの原子核が分裂すると同時に、新たな中性子がいくつか飛び出してきます。この中性子が、周りのウランなどの原子核にぶつかることで、さらに核分裂が連続して発生します。このように、次々と核分裂が起きることを連鎖反応と呼びます。核分裂炉では、この連鎖反応を人工的に制御することで、安全かつ継続的に膨大な熱エネルギーを生み出しています。発生した熱エネルギーは、水を沸騰させて蒸気を発生させるために利用され、その蒸気でタービンを回して発電を行います。核分裂炉は、火力発電と比べて、二酸化炭素排出量が極めて少ないという特徴があります。しかし、運転に伴って放射性廃棄物が発生するという課題も抱えています。そのため、安全性を最優先に設計・運用され、放射性廃棄物の適切な処理・処分が求められています。

項目 説明
核分裂炉の仕組み ウランなどの重い原子核に中性子をぶつけて核分裂を起こし、そのエネルギーを取り出す施設
核分裂 原子核が分裂し、新たな中性子が飛び出す現象
連鎖反応 飛び出した中性子が周りの原子核にぶつかり、次々と核分裂が起きること
エネルギー利用 核分裂で発生した熱エネルギーで水を沸騰させ、蒸気でタービンを回し発電する
メリット 火力発電と比べ、二酸化炭素排出量が極めて少ない
デメリット・課題 放射性廃棄物が発生するため、安全性最優先の設計・運用と適切な処理・処分が必要

核融合炉との違い

核融合炉との違い

原子力発電所で使われている原子炉は、ウランなどの重い原子核が分裂する時に発生するエネルギーを利用しています。これは核分裂と呼ばれる反応です。一方、核融合炉は、水素などの軽い原子核同士を融合させてエネルギーを取り出すという、全く異なる仕組みで動きます。
太陽が莫大なエネルギーを生み出しているのも、この核融合反応のおかげです。
核融合炉は、核分裂炉と比べていくつかの利点があります。まず、核融合反応では、ウランのような放射性物質を燃料としないため、高レベル放射性廃棄物が発生しません。また、核融合に必要な燃料は海水などから豊富に得られるため、資源の枯渇の心配もありません。
しかし、核融合反応を起こすには、太陽の中心部よりも高い超高温・超高圧状態を作り出す必要があり、技術的に実現するのは非常に難しいです。現在、世界中で研究開発が進められていますが、実用化にはまだ時間がかかると考えられています。

項目 核分裂炉 核融合炉
反応 ウランなどの重い原子核の核分裂 水素などの軽い原子核の核融合
燃料 ウランなど 海水中の水素など
放射性廃棄物 発生する 発生しない
資源 有限 ほぼ無限
技術的課題 超高温・超高圧状態の維持
実用化 実用化済み 研究開発段階

混成炉の可能性

混成炉の可能性

エネルギー問題の解決策として、核分裂と核融合、それぞれの長所を組み合わせた新しい原子炉の開発が進んでいます。それが混成炉と呼ばれるものです。

現在稼働している原子力発電所では、ウランなどの重い原子核が中性子を吸収して分裂する核分裂反応を利用して熱エネルギーを生み出しています。一方、太陽のエネルギー源である核融合反応は、重水素や三重水素などの軽い原子核が融合してより重い原子核になる際に莫大なエネルギーを放出します。

混成炉は、核分裂反応で発生する中性子を利用して核融合反応を促進させるという仕組みです。具体的には、核分裂炉で発生した中性子を、リチウムなどの核融合燃料に当てます。すると、リチウムが中性子を吸収して核融合反応を起こしやすくなるのです。

混成炉は、核分裂炉単体と比べて、核融合反応によってより多くのエネルギーを取り出すことができます。また、核融合炉単体で稼働させるために必要な超高温・高圧状態を作り出すのが難しいという課題も、核分裂反応を利用することでハードルが下がります。

まだ実用化には時間がかかると予想されていますが、混成炉は将来のエネルギー問題解決への切り札として期待されています。

項目 核分裂 核融合 混成炉
反応 ウランなどの重い原子核が中性子を吸収して分裂 重水素や三重水素などの軽い原子核が融合 核分裂で発生する中性子を利用して核融合を促進
エネルギー 大きい 莫大 核分裂単体より大きい
現状 実用化済み 超高温・高圧状態を作るのが困難 実用化に向けて開発中
メリット ・核融合反応による高エネルギー
・核融合単体より低い条件で稼働可能

エネルギー利用

エネルギー利用

エネルギーとは、私たちが生活していく上で欠かせないものです。電気や熱など、様々な形で利用されていますが、その多くは石油や石炭などの化石燃料を燃やすことで得られています。しかし、化石燃料の燃焼は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出するという大きな問題を抱えています。

このような状況の中、注目されているのが原子力発電です。原子力発電は、ウランなどの核燃料が核分裂する際に生じる熱エネルギーを利用して電気を作ります。火力発電と同じように、蒸気を使ってタービンを回し発電機を動かすという仕組みですが、原子力発電では、化石燃料を燃やす必要がありません。そのため、地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出を大幅に削減することができると期待されています。

原子力発電は、一度に大量の電力を安定して供給できるという点も大きなメリットです。しかし、ひとたび事故が起きると、放射性物質が拡散し、環境や人体に深刻な被害をもたらす危険性も孕んでいます。原子力発電所の安全性確保は、極めて重要な課題です。

項目 内容 メリット デメリット
概要 ウランなどの核燃料の核分裂で発生する熱エネルギーを利用して発電する方法。
CO2排出量 発電時にCO2を排出しない。 地球温暖化対策として有効。
発電量 一度に大量の電力を安定して供給可能。 エネルギー安全保障に貢献。
安全性 事故発生時の放射性物質の拡散リスクがある。 環境や人体への深刻な被害をもたらす可能性。

安全性

安全性

– 安全性原子力発電所の中心である原子炉は、ウラン燃料の核分裂反応を利用して熱エネルギーを生み出します。この核分裂反応に伴い、放射線を出す物質(放射性物質)が発生します。放射性物質は、生物に有害な影響を与える可能性があるため、原子力発電所では、その取り扱いに細心の注意を払い、安全性の確保を最優先に設計・運転が行われています。原子力発電所の安全性を確保するための仕組みは、大きく分けて3つの段階に分けられます。まず第一に、異常発生を未然に防ぐための対策です。これは、高品質な機器・材料の使用や、厳しい検査体制、運転員の徹底した訓練などを通して実現されます。第二に、万が一、異常が発生した場合でも、その影響を最小限に抑えるための対策です。原子炉は、多重の安全装置や、堅牢な格納容器を備えており、これらが機能することで、放射性物質の外部への放出を防ぎます。第三に、事故発生後の影響を抑えるための対策も重要です。原子力発電所は、周辺住民の避難計画や、環境モニタリングシステムを整備することで、事故発生後の影響を最小限に抑えるよう努めています。原子力発電所は、運転を停止した後も、使用済み燃料や原子炉構造物などに放射性物質が残存しています。そのため、運転停止後も、これらの放射性物質を適切に管理し、環境への影響を長期にわたって低減していくことが重要です。具体的には、使用済み燃料を再処理して資源として有効活用したり、最終的には地下深くに埋設処分する方法などが検討されています。このように、原子力発電所の安全性確保は、運転中だけでなく、運転停止後も含めた長期的な視点に基づいて取り組むべき課題といえます。

段階 対策 内容
異常発生の予防 未然防止 高品質な機器・材料の使用、厳しい検査体制、運転員の徹底した訓練
異常発生時の影響最小化 拡大防止 多重の安全装置、堅牢な格納容器による放射性物質の外部への放出防止
事故発生後の影響抑制 事後対策 周辺住民の避難計画、環境モニタリングシステムによる影響の最小化
運転停止後の管理 長期的な影響低減 使用済み燃料の再処理、最終処分による環境への影響の低減