再処理

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「返還廃棄物」:原子力発電の課題

- 返還廃棄物とは原子力発電所で使われた燃料(使用済み燃料)は、再処理という工程を経て、まだ使える資源と放射線を出す廃棄物に分けることができます。日本で出る使用済み燃料は、再処理をイギリスとフランスに頼んでいますが、その際にどうしても放射線を出す廃棄物が出てしまいます。このうちの一部は、日本が責任を持って引き取ることになっており、これを「返還廃棄物」と呼びます。返還廃棄物は、ガラスと混ぜて固めるなど、厳重な処理を施した上で、人が住んでいない地下深くに保管する計画が進められています。これは、放射線が十分に弱まるまでの長い期間、安全を確保するためです。返還廃棄物の保管は、原子力発電の恩恵を受けた私たちが、将来世代に対して責任を果たすために、避けて通れない重要な課題といえます。
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返還固化体:日本の原子力と未来

原子力発電は、エネルギー資源が少ない我が国にとって貴重な発電方法の一つです。特に、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しないという点で、環境への負荷軽減に大きく貢献しています。 しかし、原子力発電を行うと、使用済み燃料が発生します。これは、発電に使用した燃料であり、放射性物質を含んでいるため、適切に管理し、処理していく必要があります。 現在、日本では、使用済み燃料を再処理する方法が採用されています。再処理とは、使用済み燃料から、まだ燃料として使用できるウランとプルトニウムを抽出する技術です。抽出されたウランとプルトニウムは、再び燃料として利用することができます。このように、資源の有効利用を図りながら、放射性廃棄物の発生量を抑制できる点が、再処理の大きな利点です。 使用済み燃料の処理は、原子力発電を安全に進めていく上で、大変重要な課題です。今後も、より安全で効率的な処理方法の研究開発が進められていくことが期待されています。
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原子力発電の「ヘッドエンド」工程:燃料再処理の重要な一歩

原子力発電所では、ウラン燃料が核分裂反応を起こすことで、私たちが日々使用する膨大な量の電気を生み出しています。この核分裂反応によって燃料は徐々に変化し、最終的には発電に使用することができなくなります。これが使用済み燃料と呼ばれるものです。 使用済み燃料には、まだ多くのウランや、核分裂の過程で新たに生成されたプルトニウムといった、エネルギーを生み出す能力を持った物質が含まれています。そこで、これらの貴重な物質を無駄にせず、再び燃料として利用するために開発された技術が燃料再処理です。 燃料再処理では、複雑な化学的な工程を経て、使用済み燃料からウランやプルトニウムを抽出します。そして、これらの物質を再び原子炉で使える燃料へと加工します。このように、燃料を再処理して繰り返し使うことで、限りある資源を有効に活用することが可能になります。 さらに、燃料再処理は、放射性廃棄物の量を減らすという点でも重要な役割を担っています。使用済み燃料から有用な物質を取り除くことで、最終的に処分しなければならない放射性廃棄物の量を減らし、環境への負荷を低減することにつながります。
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混合転換:核燃料サイクルの要

原子力発電所では、ウランなどの核燃料を使って莫大なエネルギーを生み出しています。この時、核燃料は全て使い切るわけではなく、発電に使用された後でもウランやプルトニウムといった貴重な資源が約95%も残っているのです。この使用後も資源を含む燃料のことを「使用済み核燃料」と呼びます。 使用済み核燃料には資源が多く残されているため、再び燃料として利用することが期待されています。この使用済み核燃料からウランやプルトニウムを取り出す技術を「再処理」と言います。再処理では、まず使用済み核燃料を化学処理して、ウランとプルトニウムを他の物質から分離します。そして、分離したウランとプルトニウムを精製して、再び原子炉の燃料として利用できる形にします。 このように、使用済み核燃料を再処理し資源を有効活用することは、資源の乏しい我が国にとって非常に重要です。さらに、再処理を行うことによって、使用済み核燃料の量を減らし、最終的に処分する物の放射能レベルを下げ、保管期間を短縮できるという利点もあります。
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使用済燃料を再処理する技術

原子力発電は、ウランなどの核燃料が持つ巨大なエネルギーを利用して電気を生み出す技術です。発電所では、核燃料が核分裂という反応を起こす際に生じる熱を利用して蒸気を作り、その蒸気でタービンを回すことで発電を行います。火力発電と原理は似ていますが、石炭や石油の代わりにウランなどの核燃料を用いる点が大きく異なります。 原子力発電では、発電の過程で燃料であるウランは徐々に変化し、最終的には「使用済燃料」と呼ばれる状態になります。使用済燃料には、まだエネルギー源として利用できるウランやプルトニウムなどが含まれており、決して単なるゴミではありません。これらの物質を抽出して再処理することで、資源として有効活用することが可能です。日本では、使用済燃料を再処理し、新たな燃料として再び利用する、核燃料サイクルの実現を目指しています。
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核変換処理:未来への技術革新

原子力発電は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しない、環境に優しいエネルギー源として期待されています。しかし、原子力発電所では、発電に伴い、使用済み燃料と呼ばれる放射性の高い廃棄物が発生します。これは、原子力発電の大きな課題の一つとなっています。使用済み燃料には、ウランやプルトニウムなど、強い放射線を出す物質が含まれており、これらの物質は、非常に長い期間にわたって環境や生物に影響を与える可能性があります。そのため、使用済み燃料は、高レベル放射性廃棄物として、厳重に管理する必要があります。 高レベル放射性廃棄物の処理は、世界各国で重要な課題となっており、現在、地下深くに埋設する方法が有力視されています。これは、地下深くの安定した岩盤層に、高レベル放射性廃棄物を閉じ込めておくことで、人間や環境への影響を長期にわたって遮断しようというものです。しかし、地下深くに埋設する方法は、まだ技術的な課題も多く、実際に実施するには、さらなる研究開発や安全性の確認が必要です。 高レベル放射性廃棄物の問題は、原子力発電の利用と切っても切り離せない課題です。原子力発電のメリットを活かしつつ、将来世代に負担を残さないためにも、安全かつ確実な高レベル放射性廃棄物の処理方法の確立が急務となっています。
原子力施設

原子力発電の要:核燃料施設とは

原子力発電は、ウランという物質が持つ莫大なエネルギーを利用して電気を作り出します。しかし、ウランは掘り出したままの状態では発電に使うことができません。発電所で安全かつ効率的にエネルギーを取り出すためには、様々な工程を経て燃料へと加工する必要があります。この重要な役割を担うのが核燃料施設です。 核燃料施設の仕事は、まずウラン鉱石の採掘から始まります。掘り出されたウラン鉱石は、不純物を除去してウランの濃度を高める精錬処理を受けます。その後、原子炉で利用できる形に加工されます。この加工の過程では、ウランを炉心に入れる燃料集合体と呼ばれる形に組み立てていきます。燃料集合体は、熱や放射線に耐えられるよう、精密に設計・製造されます。 さらに、核燃料施設では、原子炉で使用済みとなった燃料の再処理も行います。使用済み燃料には、まだ利用できるウランやプルトニウムが含まれているため、これらを抽出・分離して再び燃料として利用します。このように、核燃料施設は、ウランの採掘から加工、再処理まで、原子力発電の燃料サイクル全体を支える重要な役割を担っています。
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核燃料リサイクル:資源の有効活用と廃棄物低減

- 核燃料リサイクルとは原子力発電所では、ウラン燃料を使って電気を作っています。このウラン燃料は、使い終わっても、まだエネルギーを生み出す力を持った物質を含んでいます。核燃料リサイクルとは、使い終わったウラン燃料を再処理し、まだ使える貴重な資源を取り出して、再び燃料として利用する技術のことです。新たにウランを採掘しなくても燃料を確保できるため、資源の有効利用につながります。さらに、使い終わった燃料に含まれる放射性物質の量を減らすことができるため、環境への負荷を低減する効果もあります。具体的には、まず、原子力発電所で使い終わった燃料を再処理工場に運びます。そして、特殊な化学処理によって、まだ使えるウランやプルトニウムを取り出します。これらの物質は、再び燃料として原子力発電所で利用されます。核燃料リサイクルは、限りある資源を有効活用し、将来にわたってエネルギーを安定供給していくために、そして、環境への負荷を低減していくために、重要な役割を担っていると言えるでしょう。
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核燃料サイクル:原子力エネルギーの旅路

原子力発電の燃料となる核燃料は、元をたどれば地球上に存在する天然のウランやトリウムといった資源です。これらの資源は、石炭のように地中から掘り出すことができる鉱石の形で存在しています。しかし、掘り出したばかりの鉱石には、ウランやトリウム以外にも様々な不純物が含まれているため、そのままでは原子炉の燃料として使用できません。そこで、掘り出した鉱石は、まず精錬と呼ばれる工程を経て、不純物を取り除き、ウランの濃度を高める作業が行われます。精錬工程では、鉱石を砕いたり、薬品を使って溶かしたりといった複雑な処理を行い、ウランだけを取り出すのです。こうして濃縮されたウランは、さらに化学的な処理を加えられ、原子炉で効率よく核分裂を起こせる形へと変換されます。このように、天然に存在する資源は、様々な工程を経て、初めて原子力エネルギーの源となる核燃料へと生まれ変わるのです。
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使用済燃料から資源を再生!フッ化物揮発法

- フッ化物揮発法とは フッ化物揮発法は、原子力発電所で使い終えた燃料の中に、まだ利用できるウランやプルトニウムを取り出すための技術です。使い終えた燃料には、エネルギー源として再び利用できる成分が多く残されていますが、そのままでは再利用ができません。そこで、フッ化物揮発法を用いることで、不要な成分と有用な成分を分離し、資源として回収することが可能となります。 具体的には、使い終えた燃料にフッ素ガスを反応させることで、ウランやプルトニウムを揮発性の高いフッ化物に変換します。 フッ化物は気体になりやすいため、他の物質から分離することが容易になります。その後、冷却することでフッ化物を固体に戻し、再処理工程へと送られます。 フッ化物揮発法は、従来の再処理方法と比べて、工程が簡略化され、廃棄物の発生量も抑制できるという利点があります。そのため、資源の有効利用や環境負荷の低減に貢献できる技術として期待されています。しかしながら、フッ素ガスは非常に反応性の高い物質であるため、安全性の確保が重要な課題となっています。今後、更なる技術開発によって、より安全かつ効率的なフッ化物揮発法の確立が期待されています。
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原子力発電の要:抽出工程とは

原子力発電所で使われなくなった燃料(使用済み燃料)には、まだエネルギーとして活用できるウランやプルトニウムが残っています。そこで、使用済み燃料から再び燃料として利用できるウランとプルトニウムを取り出す「再処理」という工程が必要となります。 この再処理の中で、核分裂反応によって発生した不要な物質(核分裂生成物)と、ウラン・プルトニウムを分離する工程が「抽出工程」です。抽出工程は、使用済み燃料に含まれる様々な物質の中から、まるでふるいにかけて選別するように、ウランとプルトニウムだけを取り出すための重要な工程といえます。 具体的には、使用済み燃料を硝酸に溶かし、有機溶媒と混合させることで、ウランとプルトニウムのみを有機溶媒側に移します。その後、有機溶媒と硝酸溶液を分離することで、ウランとプルトニウムを含む有機溶媒と、核分裂生成物を含む硝酸溶液に分けることができます。このように、抽出工程は、化学的な方法を用いて、まるで物質を選り分ける「ふるい」のような役割を果たし、再処理を進める上で重要な役割を担っています。
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国際核燃料サイクル評価:INFCEとは

1970年代後半、世界は大きな転換期を迎えていました。核兵器の脅威が現実のものとなる一方で、原子力の平和利用によるエネルギー問題解決への期待も高まっていました。こうした中、1974年にインドが平和利用を目的としたと主張する核実験を実施したことは、国際社会に大きな衝撃を与えました。核兵器の拡散を防ぐことと、平和利用を促進することの両立は、人類共通の課題として認識されるようになったのです。 こうした状況を背景に、当時のアメリカ合衆国カーター大統領の提唱により、国際核燃料サイクル評価(INFCE)が開催されることになりました。1977年10月から約2年間にわたり、40を超える国々が参加し、原子力の平和利用と核不拡散の両立という難題に取り組みました。 INFCEは、核燃料サイクルのあらゆる側面を技術的、経済的、政治的な観点から詳細に評価し、国際的な核不拡散体制を強化するための具体的な方策を検討する場となりました。議論は多岐にわたり、参加国の間では意見の対立も見られましたが、最終的には1980年2月に最終報告書が採択されました。 INFCEは、核不拡散と平和利用の両立という課題の困難さを改めて浮き彫りにすると同時に、国際社会が協力して解決策を探っていくことの重要性を示しました。INFCEで得られた教訓は、その後の国際的な核不拡散の取り組みにも大きな影響を与え続けています。
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高レベル放射性廃棄物:未来への重い宿題

原子力発電は、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を排出しない、環境に優しいエネルギー源として期待されています。しかし、その一方で、高レベル放射性廃棄物という、原子力発電特有の深刻な問題も抱えています。 高レベル放射性廃棄物は、原子力発電所で使われた核燃料から取り出される、プルトニウムやウランといった物質です。これらの物質は、極めて高い放射能レベルを持っており、その影響は数万年にも及びます。人間の体はもちろん、周りの環境に深刻な被害をもたらす可能性があるため、厳重な管理が必要です。 この高レベル放射性廃棄物をどのように安全に保管し、最終的に処分するのかは、原子力発電を利用する上で避けて通れない課題となっています。地下深くに埋設する方法や、宇宙空間に廃棄する方法など、様々なアイデアが検討されていますが、決定的な解決策はまだ見つかっていません。 高レベル放射性廃棄物の問題は、将来世代に負の遺産を残す可能性も孕んでいます。原子力発電の利用を進めていく上で、この問題に対する責任ある対応が求められています。
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高レベル放射性廃棄物:未来への負の遺産

原子力発電所では、ウランという物質が持つエネルギーを利用して電気を作り出しています。使用済みのウラン燃料の中には、まだエネルギーを生み出すことのできるウランやプルトニウムが残っているため、再処理という作業が行われます。 この再処理の過程でどうしても発生してしまうのが、高レベル放射性廃棄物と呼ばれる、放射能レベルが極めて高い廃液です。 この廃液には、ウランの核分裂によって生じる核分裂生成物や、ウランよりも重い元素であるアクチノイド元素などが含まれており、人体や環境に対して非常に有害です。 高レベル放射性廃棄物は、その強い放射能のために、厳重な管理の下で長期にわたって保管する必要があります。 ガラスと混ぜて固化処理を行い、地下深くの安定した地層に埋設処分する方法などが検討されていますが、まだ決定的な解決策は見つかっていません。これは、原子力発電が抱える大きな課題の一つと言えるでしょう。
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原子力発電の課題:高レベル廃液とは

原子力発電所では、電気を作るためにウラン燃料が使われます。ウラン燃料は発電に使われると、核分裂生成物と呼ばれる放射性物質を含む使用済み燃料になります。この使用済み燃料は、再処理工場に運ばれ、再利用可能な物質とそうでない物質に分離する処理が行われます。 この再処理過程で発生するのが、高レベル廃液と呼ばれる、非常に強い放射能を持つ液体です。高レベル廃液には、ウランやプルトニウムから核分裂によって生成されたセシウム137やストロンチウム90といった放射性物質が含まれています。これらの物質は、非常に長い時間、放射線を出し続けるため、環境や人体への影響を最小限にするために、厳密な管理が必要です。 高レベル廃液は、セメントと混ぜて固めるなど、安定した状態に変えられます。そして、最終的には地下深くの安定した地層に処分されるまでの間、厳重に管理されます。このように、高レベル廃液は、その発生から処分に至るまで、安全性が最優先事項とされています。
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効率的な分離技術:向流接触

- 物質を分離する技術-# 物質を分離する技術現代社会において、様々な物質を分離し、精製する技術は、様々な分野で欠かせないものとなっています。例えば、医療の現場で使用される薬には、様々な成分が含まれていますが、その中には、目的の効果を発揮する有効成分と、効果を持たない成分が存在します。有効成分だけを抽出し、不要な成分を取り除くことで、安全で効果の高い薬を作ることができます。また、エネルギー分野においても物質の分離技術は重要な役割を担っています。原子力発電の燃料として使用されるウランは、天然に存在するウラン鉱石から取り出されますが、天然ウランの中には、核分裂を起こしやすいウラン235と、核分裂を起こしにくいウラン238の二種類の同位体が含まれています。原子力発電で利用するためには、ウラン235の濃度を高める必要があり、そのためには、ウラン235とウラン238を分離する技術が不可欠です。このような物質の分離には、様々な技術が用いられますが、その一つに向流接触と呼ばれる技術があります。向流接触とは、分離したい物質を含む液体と気体、または液体と液体を、互いに逆方向に流し、物質を移動させることで分離する方法です。この技術は、溶解度や沸点の違いを利用して物質を分離するため、効率的に物質を分離することができます。このように、物質を分離する技術は、医療、エネルギー、環境など、様々な分野で私たちの生活を支えています。今後も、新しい分離技術が開発され、私たちの生活をより豊かにしてくれることが期待されます。
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高レベル放射性廃棄物:未来への負の遺産

- 高レベル放射性廃棄物とは原子力発電所では、電気を作る過程で、使用済み核燃料と呼ばれる、使い終えた燃料が発生します。この使用済み核燃料には、まだ燃料として使用できるウランやプルトニウムといった物質が含まれています。そこで、使用済み核燃料を化学処理して、これらの有用な物質を取り出す工程を「再処理」と言います。 再処理を行う過程で、どうしても発生してしまうのが、高レベル放射性廃棄物です。高レベル放射性廃棄物は、再処理によってウランやプルトニウムを取り除いた後に残る廃液や、その廃液をガラスと混ぜ合わせて固めたガラス固化体などを指します。 高レベル放射性廃棄物には、ウランの核分裂によって生じる核分裂生成物や、プルトニウムなどのアクチノイド元素が含まれており、非常に強い放射能を持っています。そのため、人の健康や環境への影響を考えると、厳重に管理することが極めて重要です。具体的には、高レベル放射性廃棄物は、冷却処理を施した後、頑丈な容器に封入され、地下深くの安定した地層に最終的に処分されることになります。このように、高レベル放射性廃棄物は、その発生から処分に至るまで、長い時間をかけて厳重に管理されるのです。
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高レベル放射性廃棄物:エネルギー利用と向き合う

原子力発電は、ウラン燃料の核分裂反応を利用して莫大なエネルギーを生み出し、私たちの生活を支える電気という形で供給しています。火力発電と比べて二酸化炭素の排出量が少ないという点で、地球温暖化対策としても期待されています。しかし、原子力発電は、電気を生み出すと同時に、取り扱いに注意が必要な高レベル放射性廃棄物も生み出します。 これは、原子力発電所で使い終わった燃料から、まだ使えるウランやプルトニウムを取り出す再処理の過程で発生します。再処理を行うと、放射能レベルの高い廃液や、それを固形化処理したものが発生し、これらを高レベル放射性廃棄物と呼びます。 高レベル放射性廃棄物は、非常に高い放射能を持つため、人の健康や環境への影響を最小限にするために、適切な方法で管理する必要があります。具体的には、ガラスと混ぜて固化処理を行い、金属製の容器に封入した上で、地下深くに作った施設で長期間にわたって保管します。 このように、原子力発電は、電気を生み出す一方で、高レベル放射性廃棄物という課題も抱えています。原子力発電の利用に関しては、エネルギー源としてのメリットだけでなく、高レベル放射性廃棄物の問題点についても理解を深めることが重要です。
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高レベル廃液(HALW)とは?

原子力発電所では、ウラン燃料が原子炉内で核分裂反応を起こすことで熱エネルギーを生み出しています。この時、燃料の中には核分裂反応によって生じた様々な放射性物質が含まれていきます。 燃料は一定期間使用すると、新しい燃料と交換されます。この使用済みの燃料のことを使用済み核燃料と呼びます。 使用済み核燃料には、まだウランやプルトニウムといった燃料として使用できる物質が約95%も含まれています。そこで、使用済み核燃料を化学処理して、ウランやプルトニウムを取り出し、再利用する技術が開発されています。これを再処理といいます。 再処理を行うと、ウランやプルトニウムは燃料として再利用できますが、同時に高レベル放射性廃液と呼ばれる、非常に放射能レベルの高い廃液が発生します。これが、高レベル廃液の発生源です。 高レベル廃液には、様々な放射性物質が含まれており、長期間にわたって強い放射線を出し続けるため、適切に処理・処分する必要があります。
その他

原子力発電の未来: GNEPからIFNECへ

- GNEPとは何かGNEPは、「地球規模原子力エネルギーパートナーシップ」を意味する英語「Global Nuclear Energy Partnership」の略称です。2006年、アメリカのブッシュ政権(共和党)が提唱した、国際的な原子力協力の枠組みです。GNEPは、世界中で原子力発電所を増やし、発電量を増やすと同時に、原子力発電に伴って発生する放射性廃棄物と、核兵器の製造に転用されるリスクを減らすことを目的としていました。この構想を実現するために、使用済み核燃料を再処理して資源として有効活用する「先進的な再処理技術」と、ウランをより効率的に利用できる「高速炉」の早期開発と導入が想定されていました。しかし、GNEPは、核拡散のリスクや高レベル放射性廃棄物の処理に関する技術的な課題、巨額な費用などが問題視され、計画は難航しました。その後、オバマ政権発足後の2009年には、事実上凍結されることとなりました。GNEPは、原子力発電の平和利用と核不拡散の両立という重要な課題に取り組んだ構想でしたが、その実現には技術的、政治的な課題が多く、国際的な合意形成には至りませんでした。
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高温冶金法:使用済燃料再処理の革新技術

原子力発電所では、ウラン燃料内の原子核が核分裂反応を起こすことで莫大なエネルギーを生み出しています。この反応で発生する熱を利用して蒸気を作り、タービンを回すことで発電を行います。燃料を使い続けていくと、次第に核分裂反応を起こしにくくなるため、定期的に新しい燃料と交換する必要があります。このとき取り出される燃料を「使用済み燃料」と呼びます。 使用済み燃料には、まだ核分裂を起こす能力が残っているウランや、核分裂反応によって生成されたプルトニウムといった貴重な物質が含まれています。もし、これらの物質をそのまま廃棄物としてしまうと、資源の有効活用という観点からも、環境負荷の低減という観点からも大きな損失となります。そこで、使用済み燃料からウランやプルトニウムを抽出し、再び原子力発電所の燃料として利用する技術が「再処理」です。 再処理は、高度な技術と厳重な管理体制が必要とされる複雑なプロセスです。まず、使用済み燃料を化学処理によって溶解し、ウランとプルトニウムを分離します。その後、それぞれの物質を精製・加工することで、再び原子炉で使える燃料へと再生します。 再処理を行うことで、天然ウランの使用量を抑制できるだけでなく、プルトニウムをエネルギー資源として有効活用することが可能となります。また、再処理によって使用済み燃料の量を減容化できるため、最終的に処分場に埋設する廃棄物の量も減らすことができます。
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使用済み核燃料の再処理:ピューレックス法

原子力発電所では、ウラン燃料の持つエネルギーを利用して電気を作り出しています。ウラン燃料は発電を続けるうちに徐々に変化し、エネルギーを生み出す力が弱まっていきます。このような燃料は「使用済み核燃料」と呼ばれ、放射線を出す性質を持つため、安全に管理する必要があります。 使用済み核燃料は、そのままでは危険な放射性物質を含む一方で、まだウランやプルトニウムといった燃料として再利用できる成分を含んでいます。そこで、使用済み核燃料からこれらの有用な成分を抽出し、新しい燃料として生まれ変わらせる技術が「再処理」です。 再処理を行うことには、大きく分けて二つの利点があります。一つは、限られた資源であるウランを有効活用できることです。もう一つは、再処理によって放射性廃棄物の量を減らし、さらに放射能の強さを弱めることで、より安全な保管と処分を可能にすることです。 このように、再処理は資源の有効利用と放射性廃棄物の処理という二つの側面から、原子力発電をより持続可能なものにするために重要な技術です。
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エネルギー資源の未来:回収プルトニウム

原子力発電所では、ウラン燃料を使って発電を行っています。燃料であるウランは原子炉の中で核分裂反応を起こし、熱エネルギーを生み出して電気を作ります。この時、ウラン燃料は全て使い尽くされるわけではありません。使い終わった燃料、いわゆる「使用済み燃料」の中には、実はまだエネルギーとして利用できるウランやプルトニウムが残っているのです。 そこで、この使用済み燃料を再処理する技術が開発されました。これは、いわば「燃えかす」から、再びエネルギーを生み出すための技術と言えるでしょう。具体的には、使用済み燃料を特殊な工場で化学処理し、まだ使えるウランとプルトニウムを分離精製して取り出すのです。こうして回収されたプルトニウムのことを「回収プルトニウム」と呼びます。 回収プルトニウムは、新たな燃料として原子炉で再び利用することができます。限りある資源であるウランを有効活用するだけでなく、エネルギーの安定供給にも貢献できる技術として、回収プルトニウムは重要な役割を担っていると言えるでしょう。
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貴重な資源:回収ウランの活用

原子力発電所では、燃料としてウランが使われています。発電に使用された後でも、燃料の中にはまだエネルギーとして利用できるウランが残っています。この使用済みの燃料から再びウランを取り出し、燃料として再利用しようという取り組みが進められています。 使用済みの燃料からウランを取り出すには、再処理と呼ばれる技術が必要です。再処理とは、使用済みの燃料を化学的に処理し、ウランとプルトニウムを分離・抽出する工程のことです。このようにして分離されたウランは、回収ウランと呼ばれます。 回収ウランは、新しい燃料の原料として再利用されます。ウラン資源の有効活用や、使用済み燃料の減容化に貢献できる技術として期待されています。