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その他

ヨーロッパと原子力:ユーラトムの役割

第二次世界大戦後、荒廃したヨーロッパ大陸は、復興に向けたエネルギー源の確保が急務でした。従来の石炭や石油は、枯渇の危機や価格高騰などの問題を抱えており、新しいエネルギー源として原子力に大きな期待が寄せられていました。しかし、原子力は軍事利用される可能性も孕んでおり、国際社会においては、平和利用と安全保障の両立が重要な課題となっていました。こうした背景から、1957年3月25日、ローマ条約の一環として、ヨーロッパ原子力共同体(ユーラトムEURATOM)設立条約が調印されました。ユーラトムは、加盟国間で原子力技術や資源を共有し、原子力発電の開発・利用を促進することで、経済成長とエネルギー安全保障の強化を目指しました。具体的には、原子力発電所の建設や運転に関する協力、原子力燃料の共同調達、原子力研究開発の推進など、幅広い分野で活動を行いました。ユーラトムの設立は、ヨーロッパ統合の進展、特にエネルギー分野における統合を象徴する出来事であり、その後のヨーロッパにおける原子力開発に大きな影響を与えました。
その他

EDRAM:原子力発電における国際協力

- EDRAMとはEDRAM(The International Association for Environmentally Safe Disposal of Radioactive Materials)は、日本語で「放射性物質の環境上安全な処分のための国際機関」という意味です。原子力発電所からは、運転に伴い放射性廃棄物が発生します。この放射性廃棄物を安全かつ適切に処分することは、原子力発電を利用する上で避けて通れない課題です。 EDRAMは、この課題解決に向けて国際的な連携を強化するために設立された非営利組織です。原子力発電所から発生する放射性廃棄物は、その放射能レベルや性状によって分類され、それぞれに適した方法で処分されます。特に、放射能レベルの高い高レベル放射性廃棄物は、ガラス固化体など安定な形態に加工した後、地下深くに建設した処分施設で長期間にわたり隔離保管されます。 このような処分施設の建設や、処分技術の研究開発には、高度な技術と専門知識、そして多大な費用が必要となります。EDRAMは、世界各国の原子力発電関係機関や研究機関、専門家が集まり、放射性廃棄物の処分に関する情報や経験を共有することで、より安全で効率的な処分方法の確立を目指しています。具体的には、国際会議やワークショップの開催、技術情報の交換、人材育成などの活動を行っています。 EDRAMの活動は、放射性廃棄物処分に関する国際的な協力体制を構築し、地球全体の持続可能な発展に貢献することを目的としています。
その他

アメリカ環境保護庁:EPAとは?

1970年12月2日、アメリカ合衆国に環境保護庁(EPA)が設立されました。これは、当時のアメリカ社会における大きな転換点の一つと言えるでしょう。 それまでアメリカは、経済成長を最優先にしてきた結果、深刻な環境問題に直面していました。工場からは有害な煙が吐き出され、川や海は汚染物質で濁り、人々の健康や生態系への影響が懸念されていました。 このような状況下で、国民の環境問題に対する意識が高まり、政府に対して抜本的な対策を求める声が強くなりました。そして、大統領令に基づき、環境問題を一元的に管理し、解決策を実行する機関として環境保護庁が誕生したのです。 環境保護庁は、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、廃棄物処理など、環境問題全般にわたる幅広い権限を与えられました。具体的には、環境基準の設定、企業に対する排出規制、環境モニタリング、環境に関する研究開発、環境教育など、多岐にわたる業務を担っています。 環境保護庁の設立は、アメリカの環境政策における大きな転換点となり、その後の環境保護活動に多大な影響を与えました。環境保護庁の活動により、アメリカの環境は大きく改善され、人々の健康と安全を守る上で重要な役割を果たしています。
核燃料

原子力発電の将来を支えるウラン資源:EARとは?

原子力発電の燃料となるウランは、地下に存在する資源量と採掘のしやすさによって、いくつかの段階に分類されます。資源量は、既に確認されているものから、存在する可能性があるものまで、様々な段階に分けられます。それぞれの段階は、調査の進捗度合いと確実性を表しています。 確認資源量は、調査や分析によって、その存在量や品質が明確に把握されているウラン資源を指します。採掘技術や経済状況を考慮した上で、商業的に採掘可能なウラン資源がこれに該当します。一方、EAR(推定追加資源量)は、2003年まで経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)と国際原子力機関(IAEA)の共同調査で使用されていた分類です。EARは、確認資源量ほどは調査が進んでいないものの、地質学的特徴からウランの存在が推定される資源量を指します。つまり、確認資源量と比べると、存在の確実性は低いものの、将来的な資源としての期待が持たれています。 しかし、EARは、その評価方法に不確実性が伴うことから、2003年以降は使用されなくなりました。現在では、資源量の評価には、より精度の高い手法が用いられています。資源量の分類は、世界のエネルギー需給やウラン価格の動向を左右する重要な要素であるため、今後もより正確な評価方法が求められます。
その他

EBRD:旧ソ連諸国の原子力安全を支える

- EBRDとはEBRDは、欧州復興開発銀行(European Bank for Reconstruction and Development)の略称です。1991年、冷戦が終結し、ヨーロッパは歴史的な転換期を迎えました。中央及び東ヨーロッパでは共産主義体制が崩壊し、旧ソビエト諸国は市場経済への移行と民主化という大きな課題に直面しました。 このような状況下、これらの国々の経済社会の復興と発展を支援するため、EBRDは設立されました。 EBRDは、当初は活動の中心を中央ヨーロッパ及び東ヨーロッパとしていましたが、その後、活動範囲を拡大し、現在では中央アジア、モンゴル、地中海東岸地域も含めた、ヨーロッパからアジアに広がる38カ国を対象に事業を行っています。 具体的な活動としては、民間セクターの育成、インフラストラクチャー整備、環境問題への対応、エネルギー効率の向上など、幅広い分野において、投融資、保証、政策助言等を行っています。 EBRDは、単に資金を提供するだけでなく、市場経済の原則や持続可能な発展の考え方を共有し、受入国の制度改革や能力構築を支援することにより、長期的な発展に貢献することを目指しています。
その他

ヨーロッパ統合と原子力: EECの誕生

第二次世界大戦の終結後、ヨーロッパの国々は二度と戦争の惨禍を繰り返さないという強い決意の下、新たな道を歩み始めました。荒廃からの復興と恒久的な平和の実現に向けて、国家間の協調と統合が模索され、その象徴的な出来事として1952年に欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)が誕生しました。 これは、当時のフランスの外務大臣であったロベール・シューマンの提唱に基づき実現したもので、「シューマン宣言」として歴史に名を刻んでいます。 この共同体は、当時、戦争の主要な資源となっていた石炭と鉄鋼という重要な産業を共同で管理下に置くことで、加盟国間の経済的な結びつきを強化し、戦争の可能性を根本から断つことを目指していました。 具体的には、フランス、ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの6カ国が参加し、石炭と鉄鋼の関税を撤廃し、共通市場を形成しました。 ECSCの発足は、ヨーロッパ統合に向けた第一歩として非常に重要な意義を持ちました。それは、単なる経済的な統合にとどまらず、長年にわたる対立と不信を乗り越え、ヨーロッパ諸国が共通の目標に向かって協力していくという新たな時代の幕開けを告げるものでした。
原子力施設

進化する原子力:EPRの概要

- 次世代原子炉EPRとはEPRは、「欧州加圧水型炉」を略した名称で、フランスのニュークリア・パワーインターナショナル社が開発した、次世代を担う原子力発電炉です。このEPRは、従来から広く使われている加圧水型炉(PWR)の基本的な設計を受け継ぎながら、安全性と経済性を大きく向上させている点が特徴です。EPRは、160万キロワットの発電機出力と152万キロワットの正味発電所出力を持ち合わせています。これは従来の加圧水型炉と比べて大型化されており、より多くの電力を供給することが可能です。この大型化によって建設コストは増加しますが、発電量が増えることで発電コストを抑えることが期待できます。また、EPRは安全性にも重点を置いて設計されています。万が一、炉心で異常な事態が発生した場合でも、溶融した核燃料を安全に閉じ込めておくことができる格納容器を備えています。さらに、地震や航空機の衝突といった外部からの脅威にも耐えられるよう、堅牢な構造となっています。EPRは、フィンランドやフランス、中国などで建設が進められており、世界的に注目されている原子力発電炉の一つです。
その他

ESCO事業:経費削減と環境保全を両立

- ESCO事業とはESCO事業とは、「Energy Service Company(エネルギーサービス会社)」の頭文字を取った言葉で、顧客に代わり省エネルギーに関する幅広いサービスを一括して提供する事業のことです。従来のエネルギーサービスは、機器の販売や設置工事が中心でしたが、ESCO事業では、それらに加えて、より包括的なサービスを提供しています。ESCO事業の流れとしては、まず顧客の建物において、エネルギーの使用状況を調査し、現状におけるエネルギーの無駄を分析する省エネルギー診断を行います。その診断結果に基づき、最適な省エネルギー対策を提案し、必要な設備の設計・導入を行います。さらに、単に設備を導入するだけでなく、その後の運転・維持管理までを一貫して請け負うことで、長期間にわたって安定した省エネルギー効果を保証します。ESCO事業の最大の特徴は、成果報酬型と呼ばれる契約形態を取ることです。これは、保証した省エネルギー効果が達成された場合にのみ、顧客はESCO事業者に対して費用を支払うという仕組みです。もし、保証した効果が得られなかった場合は、ESCO事業者がその責任を負うことになります。このように、顧客は初期投資を抑えつつ、確実に省エネルギー効果を得られるというメリットがあるため、近年注目を集めています。
核燃料

原子力発電とEU:濃縮ウランと欧州連合

原子力発電所を動かすためには、燃料となるウランが必要です。しかし、地球上で採掘されるウランは、そのままでは発電に使うことができません。それは、天然ウランの中に発電に利用できるウラン235がわずか0.7%しか含まれていないためです。残りの大部分はウラン238という種類で、これは発電には適していません。 そこで、ウラン235の割合を人工的に高めることで、より効率的にエネルギーを生み出せるようにしたものが「濃縮ウラン」です。 濃縮ウランを作るには、まず天然ウランから不純物を取り除き、ウラン235とウラン238を分離する必要があります。この工程は、ウラン235とウラン238のわずかな重さの差を利用した遠心分離法という方法が主流です。遠心分離機と呼ばれる装置の中で高速回転させることで、重いウラン238と軽いウラン235を少しずつ分離していくことができます。 この分離と濃縮のプロセスは非常に高度な技術と大規模な設備を必要とするため、世界でも限られた国でしか行われていません。濃縮ウランは原子力発電の燃料として重要なだけでなく、軍事転用される可能性もあるため、その製造や取り扱いには国際的な監視体制が敷かれています。
原子力の安全

原子力防災とEPZ:過去への理解

- EPZとはEPZとは、Emergency Planning Zoneの略称で、日本語では「緊急時防護措置区域」と訳されます。これは、原子力発電所などで万が一、事故が発生した場合に、重点的に防災対策を行うべきと定められた区域を指します。原子力施設を中心に一定の範囲をあらかじめ設定し、事故の規模や種類に応じて、住民の方々の避難、放射性物質の拡散抑制、被ばくの影響を軽減するための対策などを、計画的に、かつ重点的に実施する必要があります。具体的な範囲や対策内容は、各原子力施設の立地や周辺環境、炉の種類や出力などを考慮して、原子力規制委員会によって厳格に定められています。EPZは、原子力発電所の安全性を確保するために重要な概念であり、住民の方々の安全を守るための最後の砦としての役割を担っています。そのため、EPZ内では、定期的な防災訓練の実施や、住民の方々への情報提供など、様々な取り組みが行われています。原子力災害発生時の混乱を最小限に抑え、住民の方々の安全を確保するために、EPZに関する正しい知識と理解を深めておくことが重要です。
その他

電力技術の進化を支えるEPRI

アメリカの電力業界を支える頭脳集団として、電力研究所(EPRI Electric Power Research Institute)は欠かせない存在です。カリフォルニア州に拠点を置くEPRIは、アメリカの電力会社を中心に、様々な企業や団体が会員として名を連ねる非営利団体です。その活動は多岐に渡り、電気事業に関わる技術開発から経済分析、環境影響評価まで、幅広い分野を網羅しています。 EPRIの設立は1972年に遡ります。高度経済成長を背景に電力需要が急増する中、より安全で信頼性が高く、そして環境に優しい電力供給体制の構築が求められるようになりました。そこで、電力会社が共通の課題解決と技術革新を目指し、共同で研究開発を行う場としてEPRIが誕生したのです。 以来、EPRIは電力業界の vanguardia として、数々の重要な研究成果を世に送り出してきました。例えば、原子力発電所の安全性向上に関する研究や、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーの導入促進、スマートグリッド技術の開発などが挙げられます。 日本の電力中央研究所に相当する機関として、EPRIは国際的な連携も積極的に推進しています。世界各国の電力会社や研究機関と協力し、地球規模のエネルギー課題解決に貢献しています。
原子力施設

材料試験炉ETRとその役割

- ETRの概要ETRとは、Engineering Test Reactorの略称で、原子炉で使用される材料や燃料が、高温や強い放射線にさらされた時にどのように変化するかを調べるための試験炉です。原子炉は、莫大なエネルギーを生み出すと同時に、内部の材料は非常に過酷な環境に置かれます。そこで、原子炉の安全性を高め、より長く運転できるように、材料の耐久性を事前に調べる必要があり、ETRはそのような試験を行うために作られました。ETRは、アメリカ合衆国のアイダホ国立工学試験所に設置され、1957年から1981年までの24年間、実際に稼働していました。 その出力は175MWと、当時の試験炉としては非常に高い出力を持っていました。これは、当時の一般的な発電炉に匹敵する規模で、より現実に近い環境で材料試験を行うことを可能にしました。ETRは、その高い性能と長年の運用実績から、原子力開発の歴史において重要な役割を果たしたと言えます。現在、ETRは停止していますが、その跡地は歴史的な遺産として保存され、原子力の平和利用の象徴として、人々に語り継がれています。
その他

環境に優しいガソリンとは?ETBEの秘密

- ETBEとはETBEは、「エチルターシャリーブチルエーテル」の略称で、ガソリンに混ぜて使う添加剤の一種です。 主な原料はイソブテンとエタノールで、これらを化学反応させて作り出します。 ETBEには、ガソリンの性能を高めるために役立つ、いくつかの特徴があります。まず、ETBEはオクタン価が高いという特徴があります。オクタン価とは、ガソリンがエンジン内部で異常燃焼を起こしにくさを示す数値で、この数値が大きいほど、スムーズな燃焼につながります。 ETBEをガソリンに混ぜることで、オクタン価が向上し、エンジンの出力向上や燃費の改善効果が期待できます。また、ETBEは水に溶けにくいという性質も持っています。ガソリンに水が混ざると、エンジンの不調や燃費悪化の原因となりますが、ETBEは水と混ざりにくいため、このような問題を防ぐ効果も期待できます。 さらに、ETBEは硫黄や芳香族炭化水素を含んでいません。そのため、ETBEを配合したガソリンは、従来のガソリンに比べて排気ガスがクリーンになるという利点もあります。このように、ETBEはガソリンの性能向上や環境負荷低減に貢献する添加剤として、世界中で広く使われています。
その他

フランス電力会社EDF:原子力と電力自由化の狭間で

フランスでは、1946年に制定された「電気・ガス事業国有化法」により、電力事業が国有化されました。この法律により、発電から送電、そして配電までを一貫して担う巨大な企業、フランス電力公社(EDF)が誕生しました。 EDFは、当初、石油や石炭といった化石燃料を主なエネルギー源としていました。しかし、1970年代に世界を揺るがした石油危機を契機に、エネルギーの自給率向上と安定供給を目的として、原子力発電の導入が積極的に進められることとなりました。 豊富なウラン資源を背景に、フランスは原子力発電所の建設を推進し、現在では国内の電力需要の約7割を原子力発電で賄うまでに至っています。これは世界的に見ても高い水準であり、フランスは原子力発電を積極的に活用する国として知られています。 しかし、近年では原子力発電所の老朽化や安全性に対する懸念、そして再生可能エネルギーの普及など、エネルギーを取り巻く状況は変化しています。フランス政府は、原子力発電への依存度を段階的に減らしつつ、再生可能エネルギーの導入を拡大していく方針を打ち出しています。
原子力の安全

原子炉の安全を守るECCSとは?

- ECCSの概要ECCSとは、緊急炉心冷却装置を指す言葉で、原子力発電所において炉心の安全を確保するために非常に重要な安全装置です。原子炉は、ウラン燃料が核分裂反応を起こすことで莫大な熱エネルギーを生み出し、その熱を利用して蒸気を発生させ、タービンを回転させることで電力を生み出しています。この核分裂反応を安定的に制御し、安全に熱を取り出すためには、炉心を常に冷却しておく必要があります。 万が一、配管の破損などによって原子炉冷却材喪失事故が発生し、炉心を冷却するための水が失われてしまうと、炉心は冷却機能を失い、非常に危険な状態に陥る可能性があります。このような事態に備えて、ECCSは自動的に作動し、炉心に冷却材を注入することで炉心の過熱を防ぎ、放射性物質の放出を抑制する重要な役割を担います。 ECCSは、複数の系統から構成されており、それぞれ異なる冷却方法を用いることで、多重性と独立性を確保しています。例えば、高圧注入系は、事故発生初期に高圧で冷却材を注入し、炉心の温度上昇を抑えます。一方、低圧注入系は、事故が長期化した場合に備え、大量の冷却材を注入することで、炉心を安定的に冷却し続けることができます。このように、ECCSは、原子力発電所の安全を確保するための最後の砦として、重要な役割を担っています。
その他

核融合発電の鍵! ECRHとは?

人類の長年の夢、それは太陽がエネルギーを生み出す原理を地上で再現し、無尽蔵とも言えるエネルギーを手に入れることです。この夢の実現へ向けた技術が、核融合発電です。 核融合発電を実現するためには、まず燃料となる物質を高温高密度状態のプラズマにする必要があります。そして、このプラズマを一定時間閉じ込めて維持しなければなりません。この極めて高いハードルをクリアするために、様々な研究開発が進められています。 その中でも、近年特に注目を集めているのがECRH(電子サイクロトロン共鳴加熱)と呼ばれるプラズマの加熱方法です。 ECRHは、電子サイクロトロン共鳴という物理現象を利用して、プラズマ中の電子を選択的に加熱することができます。この加熱方法の利点は、高効率でプラズマを加熱できる点にあります。そして、加熱の際にプラズマ中に不純物を混入させることがないため、プラズマの閉じ込め性能を向上させることにも繋がります。 ECRHは、核融合発電の実現に向けた重要な鍵を握る技術として、世界中で研究開発が進められています。
その他

欧州における原子力とECの関係

第二次世界大戦後、ヨーロッパでは経済復興と平和構築のために国々が手を結び、様々な分野で統合が進められました。その流れはエネルギー分野にも及び、1967年、欧州石炭共同体(ECSC)、欧州経済共同体(EEC)、欧州原子力共同体(EAEC)の3つの共同体が統合され、欧州共同体(EC)が誕生しました。 特に、欧州原子力共同体の設立は、当時開発途上にあった原子力エネルギーの平和利用と技術開発を国際協力によって推進することを目的としていました。原子力エネルギーは、戦後の復興と経済成長の鍵となる膨大なエネルギー源として期待されており、その潜在能力に多くの国々が注目していました。しかし、原子力エネルギーは、その開発や利用に伴う安全性の確保や放射性廃棄物の処理など、解決すべき課題も多く、一国だけで取り組むにはあまりにも大きな挑戦でした。そのため、ヨーロッパの国々は、原子力エネルギーの平和利用と技術開発を共同で進めるために、欧州原子力共同体を設立し、国際協力の枠組みを構築したのです。これは、ヨーロッパ諸国が共通の目標に向かって協力し、未来を切り開こうとする意志の表れでした。
その他

EMAS規則:企業の環境への取り組みを促進

- EMAS規則とはEMAS規則は、「環境管理及び監査スキームに関する規則」という正式名称を持つ、企業が積極的に環境保全活動に取り組むことを後押しするための規則です。1993年に欧州理事会によって採択され、特に多くの資源を消費する産業分野の企業を主な対象としています。この規則は、企業が環境問題への意識を高め、具体的な行動に移すことを促すことを目的としています。具体的には、企業が環境パフォーマンスを向上させるためのシステムを構築し、運用し、その結果を公表することを求めています。EMAS規則は、環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14001を基礎としています。しかし、EMAS規則はISO14001よりもさらに厳しい要件を課している点が特徴です。例えば、法的要求事項の順守、環境パフォーマンスの継続的な改善、従業員の参加、情報公開などが求められます。EMAS規則に登録するためには、企業は環境レビューを実施し、環境方針を策定し、環境マネジメントシステムを構築し、それを外部の審査機関による審査を受ける必要があります。審査に合格すると、EMAS登録証が発行され、企業はEMASロゴを使用することができます。EMAS規則は、企業が環境に対する責任を果たし、持続可能な社会を実現するための有効なツールの一つと言えるでしょう。
その他

イタリアのエネルギー事情: ENELとその歴史

- ENELとはENELは、イタリア語で「Ente Nazionale per l’Energia Elettrica」の頭文字をとったものであり、日本語では「イタリア電力公社」という意味になります。その名前が示す通り、ENELはイタリアにおける最大の電力会社です。発電から送電、そして私たちが家庭で電気を使うための配電まで、電気に関するあらゆる事業を広く手がけています。ENELの歴史は古く、1962年にまで遡ります。当時のイタリアでは、電気事業はたくさんの小さな会社がそれぞれで行っていました。しかし、より安定的に電気を供給し、効率的にエネルギーを使うためには、国が一体となって電気事業を行う必要性が出てきました。そこで、これらの小さな電力会社を統合し、国が主導して電気事業を行うために設立されたのがENELなのです。設立当初はイタリア国内のみで事業を行っていましたが、今日では世界30カ国以上に進出し、グローバルに事業を展開する巨大企業へと成長しました。特に、再生可能エネルギーの分野に力を入れており、風力発電や太陽光発電などの発電施設を世界中に建設しています。このように、ENELは単なる電力会社ではなく、世界のエネルギー問題の解決に貢献する企業として、日々進化を続けています。
原子力の安全

原子力発電における情報共有: ENRとは

- ENRの概要ENRとは、Event Notification Report(事象速報)の略称で、世界中の原子力発電所の安全運転を支える重要な情報交換システムです。運営は、原子力発電の安全性と信頼性の向上を目的とした国際機関である世界原子力発電事業者協会(WANO)が行っています。原子力発電所は、厳しい安全基準のもとで設計・建設・運転されているため、重大な事故が起こる可能性は極めて低いと言えます。しかし、どんなに確率が低くても、事故の可能性をゼロにすることはできません。また、安全性を高めるためには、小さな出来事や設備の故障であっても、そこから教訓を引き出し、再発を防止することが重要です。そこで、ENRは世界中の原子力発電所におけるこのような事象に関する情報を共有し、互いに学び合うための仕組みとして機能しています。具体的には、各発電所は、あらかじめ定められた基準に基づいて、発電所の運転中に発生した事象をWANOに報告します。報告された情報は、WANOによって分析され、他の発電所にも共有されます。このように、ENRは、世界中の原子力発電所が持つ経験や教訓を共有することで、個々の発電所の安全性を高めるだけでなく、原子力発電全体としての安全文化の向上に貢献しています。
原子力施設

次世代原子力発電:ESBWRの安全性

- ESBWRとはESBWRは、「Economic Simplified Boiling Water Reactor」の略称で、日本語では「経済型簡易沸騰水型原子炉」と訳されます。アメリカのゼネラル・エレクトリック社が開発した、安全性と経済性を両立させた次世代の原子力発電炉です。従来の沸騰水型原子炉(BWR)を改良し、より簡素化された設計が特徴です。具体的には、炉心冷却に必要なポンプの数を減らし、自然循環による冷却能力を高めています。これは、ポンプなどの機器の故障を減らし、運転の信頼性を向上させるとともに、電力消費を抑え、経済性を高める効果も期待できます。ESBWRの大きな特徴の一つに、その高い安全性が挙げられます。万が一、炉心冷却に問題が生じた場合でも、外部からの電力供給や人の操作を必要とせずに、自然循環と重力のみで約7日間、炉心を冷却し続けることができます。これは、過酷事故発生時の炉心損傷や放射性物質の放出を抑制する上で非常に重要な要素です。ESBWRは、安全性と経済性に優れた次世代の原子力発電炉として、世界各国から注目されています。日本でも、その導入が検討されています。
放射線について

電子スピン共鳴:物質のミクロ構造を探る

- 電子スピン共鳴とは 物質を構成する原子は、中心にある原子核とその周りを回る電子から成り立っています。電子は自転しており、この自転運動によって小さな磁石としての性質を持ちます。これを電子のスピンと呼びます。 通常、物質中の電子は2つずつペアになり、互いのスピンによる磁力が打ち消し合っています。しかし、ラジカルや遷移金属イオンといった物質中では、ペアになっていない電子、すなわち不対電子が存在します。不対電子は打ち消されない磁力を持つため、物質全体が微小な磁石としての性質を持つようになります。 電子スピン共鳴(ESR)は、この不対電子の磁気的な性質を利用して、物質の構造や性質を調べる分析方法です。具体的には、外部から磁場をかけると、不対電子のエネルギー準位が二つに分裂します。この状態にマイクロ波を照射すると、不対電子は特定の周波数のマイクロ波を吸収し、低いエネルギー準位から高いエネルギー準位へと遷移します。この現象を共鳴と呼びます。 マイクロ波の共鳴周波数や吸収される強度は、不対電子を取り巻く環境、つまり物質の構造や電子状態によって微妙に変化します。ESRはこの変化を精密に測定することで、物質の構造や化学結合の状態、反応における中間生成物などを原子レベルで明らかにします。そのため、化学、物理、生物、医学、材料科学など幅広い分野で利用されています。
原子力の安全

原子力発電の安全を守る: EALとは

私たちの生活に欠かせない電気を供給している原子力発電所では、安全確保が何よりも重要です。万が一、事故が起こった場合に備え、異常事態に的確かつ迅速に対応するための基準が設けられています。それがEAL(緊急時活動レベルEmergency Action Level)です。 原子力施設で異常な事象が発生した場合、その深刻度を判断し、適切な緊急対応を段階的に開始するために、このEALという指標が重要な役割を担います。 EALは、事象の深刻度に応じて段階的に設定されており、低いレベルから順に「警戒」「施設敷地緊急」「全面緊急事態」「原子力緊急事態」の4段階に分けられます。それぞれの段階で、原子力事業者や国、地方公共団体は、あらかじめ定められた手順に基づいて、情報収集や通報、住民への避難などの必要な措置を講じることになります。 このように、EALは、原子力施設の安全を確保し、周辺住民の安全と安心を守るために非常に重要な役割を果たしています。日頃から、EALについての理解を深めておくことが大切です。
その他

EIA指令:環境アセスメントの国際基準

- EIA指令とは EIA指令とは、「Environmental Impact Assessment Directive」の頭文字を取ったもので、日本語では「環境影響評価指令」と訳されます。これは、ヨーロッパ連合(EU)の執行機関である欧州委員会が定めた指令で、特定の公共事業や民間事業が環境に与える影響を、事業に着手する前に評価するための手続きを定めたものです。 この指令は、開発と環境保全の両立を目指し、1985年に最初の指令(85/337/EEC)が採択されました。その後、対象となる事業の範囲拡大や手続きの明確化などを目的として、1997年には改正指令(97/11/EC)が採択されています。 EUに加盟する国は、これらの指令に基づいた国内法を整備し、環境影響評価を実施することが義務付けられています。EIA指令は、EU加盟国に環境影響評価の手続きを導入させ、環境保全に関する国際的な協調を促進する上で重要な役割を果たしてきました。